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145 前夜

 

 拠点へと戻ったのは陽が落ちた頃。

 拠点の前には焚き火が、そしてその周りには多数の人の姿が。


「藤堂達か」


【拠点作成】で拠点を出せばいいのに何してるんだ?


「あっ」


 近づいていくと藤堂がこちらに気づいたようで声をあげる。親父とお袋、メイにミミ、藤堂が護衛と言っていた…名前なんだっけ?まあ昨日会った二人もいる。


「昨日ぶり。なにしてんだ?」


 そう聞くと藤堂がこちらに歩みを進めながら答えた。


「貴方が帰って来るのを待ってたのよ。貴方の好意でここに拠点を作らせてもらうのに、勝手に作ったら申し訳ないし」


「気にしなくていいんだが。じゃあそっち側に拠点作ってくれ。こっちは作物でも育ててもらおうかと思う」


 そう言って左右に分かれるように作った柵内を指す。


「わかったわ。それと、高山君がまたここに来ようとしてるわ。昨日、貴方の魔物達が現れた時逃げ出したでしょう? でも私達が戻ったことから数だけの強くない魔物だと判断したらしくて」


「ん?数だけの強くない魔物?」


「貴方の魔物たちを野生の魔物で、私達と貴方たちが無傷で倒せる魔物だと思ったみたいなのよ。それなら自分たちでもなんとかなると、メイちゃんたちを説得するか追い出せば、弱い魔物しか出ない安全な拠点が手に入ると思ってるみたいね」


 ああ…。藤堂が言うように昨日逃げ出した奴らはハク達のことを野生の魔物だと思ってるのか。


「というか、魔物を殺すのは良くないんじゃないのか?あいつらの言い分的に」


「そこら辺の基準は彼らに聞いて。矛盾してるのは今に始まったことじゃないわ。出会って大して時間が経ってないのに派閥ができるくらいウマが合わないんだもの」


「そらそうか。今後の話もしたいが…とりあえず明日の魔物達をなんとかしてからだな。今は拠点作ってくれ」


「ええ…助かるわ」


 そう言い仲間達の元へ戻る藤堂。彼らは魔物に怯えた様子はないな。よく見るとお袋のウサギ…らーちゃんやら、俺の森狼達が混ざっており撫でられている。

 上手くやっていけるならそれに越したことはないか。


「じゃあお前達は休んでくれ。ラックは少し手伝いを頼む」


 クー太たちに休むように言い、ラックを連れて柵を補強する。

 作っておいた柵に糸を追加してもらい、その糸に【硬化】を使う。これならそこら辺の森狼くらいなら突破できないだろ。飛び越えられるかもしれないが。

 蛇の魔物はすり抜けるし…イノシシとか人間にしか意味は無いかもしれないが、ないよりマシだろ。


 柵を触ってみるがかなりの硬さだ。俺でも本気でやらないと切れないかもしれないくらいの強度になった。


「ラックありがとう」


「はーいなの。他にはなにか手伝うの?」


「いや、大丈夫だ。城に戻っていいぞ。菓子パン渡しとくからクー太たちと食べてくれ」


【亜空庫(小)】から取り出した菓子パンをラックに渡すと、ラックもそれらを【亜空庫(小)】に仕舞う。


「さて、イチロウ達は…っといたいた」


 ハク達は城に戻したが、他の魔物達は各々休んでいたり、遊んでいたり、人間に撫でられていたりとしていたのでリーダー格のメンバーを探すと何匹かは集まっていた。


 イチロウとタヌイチ、イタイチ、ケンタか? 多分合ってるはず。


『『『『ご主人様』』』』


 俺が近くとすぐ反応してくれた。


「おう。これから交代で見張りを頼みたいんだ」


 イチロウたち狼組は二グループに分かれ、ケンタたち犬組と合わせて三交代制で外の警備、イタイチとタヌイチ達のタヌキ、イタチ組には藤堂達が拠点にする場所で蛇など小型の魔物が入ってこないかの警備を頼む。


 そしてアインス達の居場所を聞くとリーダー格のメンバーはここにいるメンツ以外は城壁内らしい。


「じゃあ頼むな。ただ、お前たちは警備で疲れを溜めるなよ?本番は明日だからな?」


『『『『はい!』』』』


 それぞれの頭を撫でてやってから城へ向かう。


 城門を潜ると、身体の大きなベータとリーフ、シドーたちオーガ組、フィーア達人面樹組が見えた。

 他の面々はベータの陰で見えないのだと思う。ウワバミは身体大きいからなあ。


 案の定、ベータで陰になっている方に行くと、アンとドゥたち蛙組とフンフ、ゼクスの虫組、新しくなった大影蜘蛛のガンマと剣鹿のディアの姿が見えた。

 そしてその近くにはアインスとツヴァイの白鼻芯と貉の姿があった。


 少し離れたところには蛇の塊…うん、あの数が集まっていると気持ち悪いな。野生だったら無意識に【爆炎】を打ち込んでそうだ。


「アカイチ、リョクイチ、コクイチ、シロイチ!こっちに来てくれ」


『『『『はいっ!』』』』


 姿は見えないが、返事は伝わってきた。お前ら…そんな密集して絡まったりしないのだろうか。


 蛇塊に意識を持っていかれつつも、他の魔物も探すが…何処を見てもクシハ、エリン、サンク、シス、レイ、アルファが見当たらない。

 モモンガにキノコ擬き、カメと白い狸、鷹…あいつらしかその種族はいないし、いればわかるんだが。


「クアッ」


 ん? 今鳴いたのはリーフか? そう思いリーフに視線を向ける。


『クシハ達探してるの?』


 俺が誰を探しているのか察したのかそう聞いてくる。


「ああ。知ってるか?」


『クー太たちと一緒にお城に行ったよー』


「あー、そうか」


 帰ってきても飛びついてこないから不思議に思ってたけど、部屋で待ってるのか。


「じゃあ早く部屋に戻らないとな。とりあえず明日、魔物が襲って来る…予定だ。何時に来るかわからないから今日から警戒しておく」


 全員が頷く。というかアカイチ達だけ呼んだつもりが蛇塊ごと移動してきたのか。ウネウネと動く塊が…。


「おい、アカイチ。何処にいるかわからないがそれやめてくれ」


『……申し訳ありません。それとは…』


「蛇達で集まって絡み合うのを、だ。すごく気が散る」


『あ…申し訳ありません。辞めさせます。それと私は混ざっておりませんよ?』


 え?じゃあ何処に…と思ったらすぐ横にいた。アカイチ、リョクイチ、シロイチ、クロイチの四匹は…ってもっといるな。


「…すまん。あの蛇の塊に意識もってかれて気づかなかった」


『大丈夫です。辞めるように言いに…行かなくても大丈夫ですね。話は聞こえていたみたいです』


 足元のアカイチの言うように蛇塊はどんどん小さくなっていき、整列する蛇たち。気持ち悪いとは流石に言えなかったが、不気味だったのは事実だから助かる。


「それと影の中に誰かいるか?」


『ご主人様。私の部下が』


 コクイチがそう答える。ということは黒蛇たちは俺の影にいるのか。いつの間に入ったんだか…。


「了解。じゃあ続きを話すぞ。フィーアたちは城壁の外側にある柵の手前で待機。魔物が柵に寄ってきたら攻撃してくれ。フンフとゼクスたちはフィーアたちと一緒に」


 アンたちとアカイチ、リョクイチたち赤蛇と緑蛇組は畑予定地の方で待機。

 コクイチ達は外にいる人間たちの影に入って護衛。シロイチたちはタヌイチたちと一緒に柵内で警戒。


「シドーたちオーガは夜は休んでくれ。他の魔物より夜目効かないだろうし。リーフは明日は空を飛んでアルファと二匹で飛行するタイプの魔物を警戒してほしいから今日は休んでくれ」


 クァ! と鳴くリーフ。了承ってことでいいんだよな? ちゃんと言語として意味の伝わる鳴き声を出してほしいが…まあいい。


『『ご主人様、私たちは?』』


 アインスとツヴァイにそう聞かれる。大影蜘蛛のガンマ、剣鹿のディアも自分たちは何をすればいいのか指示を待っている。


「んー、お前たちも何もしなくていいかな? 魔物が来たら出てくれ。ガンマとディアはそれなりの強さだが、戦っているとこをそんなに見たことないから…念のためアインスとツヴァイと行動してくれ。後はベータもここで待機でアインスたちとできるだけ一緒に行動してくれ」


 よし、これでいいだろう。と思ったらガンマから苦情がはいった。


『…ご主人。私は弱くないぞ。ご主人よりは弱いが…』


「わかってるさ。ディアもな。ステータスも見たんだから。念のためと言っただろう? 相性もあるし、森狼や幻狼たちと戦っているところは見たことないからな」


 森狼以外にも多種多様な魔物が襲って来るかもしれない。範囲攻撃や圧倒的なレベル差があるならまだしも、そうではないガンマたちは、小さな魔物の大群やや鷲獅子相手とかだと難しいだろうしな。


『……わかった』


 納得してくれたようだ。その隣ではディアがコクコクと頷いている。…あれ?お前、傷治したんだから喋れるようになったよな?


「というかパンとデルタはクー太たちと部屋に行ったんだよな? ディアはなんでここにいるんだ?」


『身体が大きいから室内に入るのは難しいって…クレナイさんに言われた…」


 しょんぼりするディア。まあ確かに。既に俺の部屋は動物園状態だからな。ディアが入るスペースは…ないか。

 クー太、ランだろ? クレナイにハク、アキ、クロ、フェリ、グレイ、ラックの初日組九匹。

 アメリにドライ、ビャクヤ、クシハ、エリン、シス、サンク、アルファ、レイ。新しく仲間になったレッサーパンダのパンとコウモリのデルタ…合計二十匹か。

 クレナイとアキ、アルファとグレイは自室に行きそうだが、それでも十六…うむ。キャパオーバーだ。


「すまんな」


『ううん。大丈夫だよ』


「じゃあ皆任せた。俺は休むから何かあったら起こしてくれ」


 そう言うと皆が散らばり、俺の影からは黒蛇達がどんどん出てくる。

 …今なら俺、マジシャンになれるかも? 帽子から鳩じゃなく影から蛇か…。怖いな? これだけだと俺何もしていないし、マジシャンというかただの一発芸ぽいけど。


 ふわぁ。と欠伸をしながら城に戻る。戦ってる時は感じなかったが、今は程よく疲労感があるな。もふもふに包まれたらすぐ寝れそうだ。


『ご主人様』


 っ!?!? 心臓止まるかと思った! 油断していた…。


「クロ…どうした。お前も部屋に戻ったんじゃないのか」


『? 私は解散した後ずっとここにいた』


 首を傾げて、何当たり前のことを、と言うクロ。

 そうっすね。お前の寝床はそこだったな。


『私もいるよー!』


『私もいます!』


 そう言って飛び出すドライとビャクヤ。うん、クロがいる時点で居るとは思ってた。というか俺の影広くね? どうなってんの? さっきたくさんの黒蛇が出てきたし。


 あとお前たち頭部だけで出てくるな。夜、足元に蛇とネズミと狼の首があるとか相当ホラーだぞ。


「お前たち、本当に俺の影の中で休めてんのか?」


『もちろん』


『落ち着くよ?』


『はい! 落ち着きます!』


 クロ、ドライ、ビャクヤから同時にそう返答が返ってくる。

 …そうか。ちゃんと休めてんならいいよ。


「それで? クロどうした」


『ご主人様のお父さんに付いてるコクゾウから報告。お父さんたちがこれからの行動についてご主人様の意見を聞きたがってる』


「そうか…」


 どうやってコクゾウから報告を受け取ったのかも気になるが、親父とコクゾウは会話できないから一方的に言伝を頼んだのか? 黒蛇は手紙か。そんな離れてないんだから自分で来ればいいのに。


「わかった。コクゾウにありがとうって伝えておいてくれ」


『それは無理。ご主人様から伝えて』


 クロにコクゾウへの伝言を頼むと断られた。


「無理? コクゾウは今影の中にいないのか?」


『いない。私がお父さんの影まで飛べば伝えられるけど面倒』


「……ならどうやって言伝を預かったんだ」


『?』


 小首を傾げられても…俺もクロと同じように首を傾げる。


『ステータス見てないの?』


「ん? こまめに見るようにはしてるが…コクゾウのステータスをいつ見たかは覚えてないな」


『私以外の黒蛇たちのステータス見て』


 クロ以外の?なんか伝達系のスキルでも覚えたのか?確認しようと思い黒蛇系の魔物を探すが…うん、外にいる藤堂たちの護衛頼んだんだからいないよな。


「後で見てみる。とりあえず親父のところに向かうか」


 門の外に出ると皆拠点を作っていた。まあ一言で作れるしあっという間だよな。ただ気になるのはトラックのコンテナのようなものが焚き火を囲むように乱立している点だ。

 全員コンテナ? というか密集しすぎじゃないか?


 コンテナを避け焚き火の元に行くとそこには親父とお袋、メイ、ミミ、そして藤堂が座って話していた。


「コクゾウ」


『はい!』


 まずコクゾウを呼ぶと親父の後ろに伸びた影からスッと出てきた。


「言伝ありがとうな」


『はい!』


 頭を軽く撫でながらステータスを見てみると【影話】というスキルが増えていた。詳細は一定範囲内の影へ音を伝えるというスキルらしい。クロの言っていた感じだと、クロ以外が使えんのか?

 …黒蛇たちは誰かの護衛にすることが多かったから離れていても連絡が取れるようなスキルが身についた…環境適応? もはや進化だな。

 クロだけが持ってないのは、用があれば基本転移するし、群れから離れてる距離も時間も多いからだろうな?


「便利だな」


 つい口に出でしまったが、目の前にいるコクゾウは何のことかと首を傾げた。


「離れていても会話ができるようになったんだろう?」


『はい! 初めにこのスキルを使えるようになったのはコクイチです! 初めはコクイチが一方的に、という感じだったんですが、そのうち皆使えるようになりました』


 なんだそのウイルスみたいなスキルは。【影話】の範囲内にいて、会話を受信してればそのうち送信できるようスキルが取得できるのだろうか。それならば、そのうちクロやドライ、ビャクヤも使えるようになりそうだな。


「そうか。またなんかあったら頼むな」


『はい!』


 コクゾウは元気よく返事をすると親父の影に入っていった。そして親父の影から視線を上げると五人がこちらを見ていた。


「ああ…そうだ。親父のこれからの行動だっけか?」


「お前…忘れていただろ」


【影話】みたいな伝達系スキルはほしいなーなんて考えていたし、そっちに意識が持っていかれていたから忘れていたといえば忘れてた?


「…別にこれからの行動について俺に聞く必要ないよ? 俺は好き勝手してるし、親父たちも…無茶しなきゃ好きなことすればいいと思うし」


「「忘れてたことはスルーですか!?」」


 お、おう。

 メイとミミからツッコミがはいった。ミミよ。普段からそれくらいの勢いで話してくれると聞き取りやすいぞ?

 そう思ったが口にはしない。徐々に慣れてきているみたいだしな。


「メイちゃん、ミミちゃん。マコトがすぐ忘れるのはどうでもいいことだと思っているってことよ〜」


 そんなことは…いや、どうでもよかったわ。


「俺に判断仰ぐ必要ないよ。親父たちは親父たちのやりたいことがあるだろうし」


「…なら全てお前に任せて立てこもっていても文句はないのか?」


「ないけど…そんなことするつもりもないでしょ?」


「それはそうだが」


「それに親父たちが参加しなくても…」


 振り返り城を見る。俺の部屋がある最上階を。


「あいつらが張り切ってるし、これだけの数の仲間がいるんだ。ゆっくり茶でも飲んでればいいさ。畑を耕してくれててもいいし。俺たちで対処出来ないくらい切羽詰まった状況になったら、なおさら城に閉じこもっていた方がいいだろうしな」


「それでも…私も戦ってもいいですか?足手まといなのはわかってますが…」


 メイが覚悟をしたかのような瞳でそう言う。


「…無茶はするなよ?」


「はい!」


 親父もお袋もミミも参加するようだ。黒蛇たちをもう何匹か護衛に回した方がいいか…。


 藤堂はどうするのだろうか? 視線を向ける。


「私も戦って少しでも貢献してレベル上げもしたいな、とは思うけど…邪魔になるだけよね」


「まあな」


 流石に拳銃頼りの藤堂が表立って戦っても、フォローが大変になるだけだ。弾が無くなったら狼一匹がやっと、レベルだろうし。


「私達は柵近くで拳銃や投石で援護するだけにするわ」


「わかった」


 柵まで近づかせる気は無いし、そうなってもフィーア達がなんとかするだろうし問題ないが。

 それに関しても伝え、藤堂達は人面樹やエントの影から攻撃するということになった。

 要件は済ませたので藤堂に気になったことを聞く。


「そういえば、なんで拠点がこんなに密集してんだ?」


「これね…明かりがここしか無いからこうなったのよ。レベルが上がって壊せるようになったら、そのうち分散するでしょうけど、今は暗いし、いつ魔物が襲ってくるかわからないから焚き火の周りで固まることにしたのよ」


 そういうことか。確かに夜の森はスキルがないとなんも見えないだろうな。月明かりさえ遮られているし………あれ? 城の電気全てつければここら辺一帯明るくなるよな?

 魔力で動いているんだろうが城の各部屋にはちゃんとライトがあるし、後でつけておくか。魔物が寄ってきそうだが。


 とりあえず、いつ襲撃されるかわからないため休めるうちに休んでおく、ということで親父たちと解散した。


 親父たちには解散する時全部屋の電気をつけたいから手伝って欲しいと言ったら、城の外側にはライトが設置されているらしく、一階にある設備で点灯が出来ると言われたので任した。


 ざっと見て回ったけどそんなところあったかね?あったのかもしれないが、なにかわからなくて、後ででいいかとスルーした可能性はあるな。

 正直あんま覚えていない。他にも色々と確認していなかったり、後回しにして忘れている場所があるかもしれないが…自室が快適ならなんでもいいや…。


 俺は一旦自室まで行くと休日モードみたいな魔物たちが迎えてくれた。

 …迎えてはいないか。既に布団が敷かれ、アキなんて寝てるし、フェリやアメリなんかは、「ご主人様おかえり〜」とか「にゃー」と完全に伸び切った状態で挨拶するだけだ。


 クー太とラン、ハクはそこまで疲れていないのか、俺が部屋に入ると近づいてきてくれたが。


「お疲れ。襲撃があるまでゆっくりしててくれ。クレナイとアルファは自室か?」


「はい。初めは皆でここで待っていたのですが、ご主人様がお父様たちとお話ししてるから少し遅くなると、クロさんから聞いて部屋に行きました」


 ハクが着替えの服を俺に渡しながらそう説明してくれる。

 ……というかハクよ。着替えを手伝わなくていいぞ。


「今日はこのまま寝るからそれは仕舞っておいてくれ」


「いいのですか?」


「いつ魔物が来るかわからないからな。万が一、巨大鳥が襲ってきたらすぐに俺が出ないとだろ。だから念のためな」


「わかりました。それなら私は狼の姿で外で待機していた方がいいですか?」


「いや、周囲を警戒するのは他のやつに任せたし、ハクも多少なりとも疲れているだろう。休んどけ」


「わかりました」


『ご主人さま〜寝よ〜』


「クー太眠いのか?」


『んー? そうでもないー?』


 …なら何故催促する。さっきまでそばにいたクー太は、布団の上でペシペシと前足で布団を叩いてる。ランも一緒になってやっているが、それは早く布団に来いということだろうか。


「まあ俺もすぐ休むつもりでいたから構わないが…グレイは?」


 やはりクレナイとアルファ、グレイの三匹がいない。


『グレイはタヌイチたちのところに行ったよー』


「そうか」


 程よい疲労感、そしてもふもふに包まれ横になる。

 最近はバタバタしていてそれどころではなかったが、たまにはお酒が飲みたいな。

 魔物の襲撃があるからこれが終わってから飲めばいいのだが…飲んでは駄目だと思うほど飲みたくなってくる。……流石に飲まないけどな。


 ハクやクレナイは飲むだろうか? 動物姿のクー太たちには飲ませる気は全くないのだが…人間の姿、それも成人した人間の姿をしている二匹に関しては飲ませてみても大丈夫だろうか?


 まあ、なんにせよ襲撃が落ち着いたら親父たちと祝杯だな。何を飲もうかなー、酒を何処かからもっと調達しなきゃなー、なんて考えているうちに意識は沈んでいった。



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