144 テイム拒否
大変お待たせしました!
遅くなって申し訳ありませんm(__)m
それぞれ目標となる敵へ向かう。
俺はまず、先制で【爆炎】を正面にいる青白いのと赤黒い巨人に放つ。
「ぐあああ!! ナ、ナンダア!!」
喋った…。いや、人型だし、オーガも喋るから不思議ではないが…声でかいなおい。ビリビリと響くんだが…。
「でも【爆炎】で死なない敵か。強いのは歓迎だ」
【魔装】と【重力操作】を使う。【魔装】は使う必要をあんま感じないので全然使わないが、速度も上がるので今回のように複数相手には使っておいた方がいいだろう。
腕を振り回す青白い巨人と丸太を振り回す赤黒い巨人の攻撃を避け、青白い巨人をもう一体引きつけるために行動する。
【風刃】や【火球】を連続で打ち込みもう一体の気を惹きつけ、皆の邪魔にならないよう少し離れる。
「膂力と体力はありそうだな。その代わり速度と魔法攻撃は無さそうだが」
「クソクソクソッ! シネ!」
「オイ! ジャマダ!」
「お前達!さっさとそいつを抑えろ!叩き潰してやる!」
ん?なんか流暢に喋るやつが…赤黒いやつか?進化個体だろうか。それとも元人間さんですか?
テイムして話を聞いてみたくなったな。けど…こんな大きいんじゃ面倒見るのも、連れて歩くのも大変だし…。
「おい! お前ら人間の時の記憶はあるか!?」
「オオオオ!」
返答無し…。返答くらいしてくれてもいいと思うんだがな。
【風刃】で首を狙うが傷がつくだけで殺せない。防御に特化したスキルでもあるんだろうか。
【爆炎】を何発か撃つと青白い巨人の一体が膝をついた。そいつを放置し、もう一体の青白い巨人に魔法を放つ。赤黒い奴には牽制としてたまに【爆炎】を撃つ。
「アアアアア!」
「よし」
青白い巨人二体とも膝をついた。その場で腕をこちらに伸ばすだけで突っ込んで来なくなったので赤黒いやつを先に倒す。
「くそっ!なんなんだお前!」
「元人間か?」
「ああ!? 確かに前は人間だったが俺は選ばれし人間だ! 巨人として生まれ変わったんだ!」
選ばれし人間さんだったようだ。選ばれし巨人さん?
随分はっきりと記憶も自我も残ってるし、選ばれし人間ってのはあながち間違いではないだろう。亜種なのか青白いやつの進化個体なのかわからないが特別な個体なのは間違いないしな。
それにしても元人間か…鳥肌がたった。もしかしたら俺もこうなっていたかもしれないんだよな。いや、自我がはっきりしているだけマシか?
さて…どうするか。んーーー。魔物と同じ扱いでいいか。殺すことやテイムすることを考えてみても忌避感などは湧かないし…。
「じゃあ、俺の下につくなら見逃すぞ。そこの二体も」
一応テイムされろと念じてみるが…。
「ふざけんじゃねえ! 俺がお前ら下等種を従えるんだ!」
下等と言われた…。初めての経験だ…。新鮮だな。
まあこんなの仲間にしても面倒だな。こいつを仲間にするなら高山を仲間にした方が…どっちもいらないか。
「けど話は聞きたかったんだがなあ」
「死ねっ!」
当たればかなりダメージがあるだろうが…大したことはないな。というか森と森の中の少し開けた場所じゃこいつの大きさでは充分に動けないだろ。
「身長何センチだ?」
「知るかああ!」
あ、いや、質問したわけじゃないんだが。独り言だからな。
くそっ! とか死ねっ! と言い、避け続ける俺に丸太を振り回す選ばれし巨人さん。選ばれし人間さん?どっちでもいいか。
避け続けるだけで、なぜ倒さないかって?
それは先に倒すとクー太とランが戦いたかった、とか言って拗ねそうだからだ。元人間の魔物を殺すことよりもクー太たちの悲しそうな顔を見る方が胸にくる。
そういうわけで、たまに魔法を撃ったり、蹴ったり殴ったりしてみているわけだが…全然効いてないな?
本気でやってるわけではないが、巨大鳥でももっとダメージは通るから防御に関してはこの巨人は今まで見てきた魔物の中で随一だろう。
『お待たせー!』
『ご主人様! こいつ強い!?』
巨大化したクー太とランがやってきた。
「なかなかの硬さだぞ!」
クー太とランは俺の返答を聞くなり、嬉々として赤黒い巨人に突撃していった。
「じゃあ、少し任せたぞー」
『『任せてー!』』
遠目だが視線を他へ向けると七歩蛇に戻ったクレナイはもう巨人を倒してハクと共闘してる。多分ハクのところはパン達に攻撃をさせているから時間がかかってるのだろう。
後生き残ってる巨人は…アメリとグレイが戦ってるやつだけか。アキとクレナイはハクのところで、ラックとフェリは…こっちに向かってきてるな。
「てことは…クロ、ドライ?」
『ん』
『はーい!ただいまー』
影から顔を出す二匹。やっぱり戻ってきてたか。
「アメリとグレイの援護に向かってくれるか?多分平気だとは思うが時間かかってるみたいだからな」
『わかった』
『任せて!』
すーっと影に潜る二匹。
「ラック、フェリおかえり」
「ただいまなの!」
『…ただいま。思ったより強くなかった』
「そうか? じゃあそこで膝をついてる二体も任せていいか?」
「任せてなの!」
『…そこにいるやつ?わかった』
ラックとフェリにまだ生きている青白い巨人二体を任せ、俺はクー太達のところに向かう。
『ご主人さまー。こいつ硬いよー?』
「硬いって言っただろ?」
『でも遅いわ!』
「なんだこいつらはっ!!!」
遅いと言われたのは聞こえていないと思うが、馬鹿にされたのがわかったのか怒って叫ぶ巨人。
『あと喋るよー?』
『うるさいわね!』
「いや、うん。知ってる。無視していいぞ」
クー太もランもあまり球系、刃系の魔法が効かないからかさっきから【放電】、【爆炎】、【竜巻】を交互に打ち込み、たまに噛み付いては削っていく。
「噛み付きは効くんだな。打撃と魔法に高い耐性でもあんのか?」
俺はクー太達の後ろから【爆炎】と見様見真似で【放電】、【竜巻】を放つ。
クー太とラン、後はラックが使えるスキルは比較的簡単に使えんだよな。相性がいいのか?
青白い巨人を倒した面々も合流してパンとディアを除いた全員で攻撃していく。
負けることはないが…防御力が高すぎて巨大鳥より厄介だな…。流石にこんなやつが何体もいたらあの城に篭っていても厳しいだろう
そしてあちこちから血を流し満身創痍となった巨人は前のめりに倒れる。
ズドォォォォン!
バキバキと音を立てて木々を薙ぎ倒しながら崩れ落ちる巨人。
「攻撃中止だっ」
まだ死んでないと思うが…巨人の顔の前に降り立つ。
「よっ。生きてるか?」
「ぐ…み、みのがしてくれ…」
嫌です。とは流石に言わない。聞きたいことがあるがな。
【選ばれし巨人が仲間になりたそうにしています。テイムしますか?】
【Yes or No】
え…Noで!
【選ばれし巨人のテイムを拒否します。この個体は二度とテイム不可能ですがよろしいですか?】
【Yes or No】
お、おお。そういえばテイム拒否って初めてだな。こんな感じなのか…。
まあ…Yesで。
「なっ…!」
選ばれし巨人さんが何故か目を見開いているが…仲間になるのを拒否されたのがわかったのだろうか?
「な、なんでだっ! この俺が仲間になってやるって言ってるのに…!」
「いや、そんな上から目線の配下はいらないし、対等の仲間にもなりたくないからな」
一番の理由は大きすぎて邪魔だからだが。テイムしたいという欲求も沸かないし、選ばれし人間とか自分で言っちゃうやつもパスで。他の子達と仲良くできそうにない。
「話をしてくれるなら殺さないでやる」
「このっ! 人で無し!!」
…うるさ。声でかいわ。それとお前に人で無しとか言われたくないわ。あ、いや…不意打ちで攻撃したのは俺だな…俺が悪いか?
「まあいいや。クー太達は魔石取ってきてくれ」
『はーい』
「んで選ばれし巨人さん、どうする?」
「ぐっ…。話す…!」
「おお。じゃあ早速。元人間だよな? 人間だった頃の記憶はどれくらいある?」
「……」
「名前は? 家族のことは? 仕事のことは?」
「ちっ。名前は…覚えてねえ。家族はぼんやりと覚えてる。仕事は……」
「仕事は?」
「してなかった…!」
「つまりニートだったってことか? まあ覚えてるってことだな」
「馬鹿にしてんのかぁ!」
「…大声出すなっつの。馬鹿にしてないわ。学校で勉強したこととか雑学とかそう言った知識は覚えているか?」
「…覚えている」
ふむ…それなら元人間のゾンビとかでも覚えてるかもな。農業とかやらせるにも多少知識がある方が助かるし…。
「あの青白い巨人は? 元人間か?」
「あいつらは…その広場の中心にある石から生まれた。毎日一体現れる」
定期的に生まれるタイプか。
「石って、あの巨人が生まれそうな石は見当たらないが?」
「平べったい石があんだよ。中心に行きゃわかる」
「そうか。後は…お前達の種族名は?」
「青白いのはトロール。俺はギガントだ」
あれトロールだったのか。
そしてその後も話を聞くと、こいつは気がついたらトロールになっており、その後アイアントロールという種族になり、ギガントに進化したらしい。現在のレベルは15。
なかなか強い。魔法とか使えなくとも身体の大きさと頑丈さを加味すると同レベル帯では最強だろう。確かに選ばれた巨人だな。
その後も幾つか聞いて、俺らに危害を加えないこと、無闇に人間を襲わないことを約束させる。所詮口約束だが…破ったら俺が殺しに来るといっておいたら怯えた様子だったから俺より強くなったと思えるようになるまでは大丈夫だろ。
つまり見逃すことにした。なんか素直に質問に答えていたしな。後酷いかもしれないが、もっと強くなってほしい。俺が本気で魔法を撃っても即死しない相手なんて貴重だから。今のままではただ頑丈な的だが、もっと強くなってくれれば楽しい戦いが出来そうだし。
…その時は殺すかもしれないがな。
「少し傷を治しておいてやる」
「…ありがとうございます」
素直になった巨人の深い傷だけ治し移動する。
『頑丈だったねー?』
『なかなか楽しかったわ!』
「たくさん魔法を撃てたの! 的としては最高なの!」
クー太とラン、ラックはかなり満足したみたいだ。
クレナイとハクは少し心配そうにしているが。
「クレナイ、ハクどうした?」
「いえ、殺さなくても良かったのかと思いまして」
「ええ。最後の方はご主人様の言うことに素直に返事をしていましたが…今後成長したら厄介になるのではないかと」
「まあ問題ないだろ。でも…あいつの防御を貫けるくらいのスキルは覚えないとな」
『『特訓!』』
クー太とランは本当強くなることに貪欲だよな?楽しそうだからいいが。
それにしても皆が巨人たちから取ってきた魔石はいつも通り飴玉サイズだ。あの体の大きさならもっと大きくてもいいと思うのだが…。
さっき見逃した巨人ならまた違った魔石が出るだろうか?いや…幻狼の魔石も他のとは変わらなかったし同じニ回進化したギガントでも変わらないか。
レベルを確認すると今日でかなり上がっていた。惜しむらくは巨人戦の前に確認していなかったのであいつらの経験値がどれくらいかわからなかった点だ。
なかなか強かったしオオカミなどよりは経験値があったと思いたいが…。
「またバラけて狩りだな。ハクはパンを。クレナイはディアの面倒をみてくれるか?」
「「わかりました」」
「頼んだ。少し移動速度は落とす。それと二体以上の巨人…トロールやアイアントロールが出てきたら一応呼んでくれ。ギガントが出たら必ず合図するように」
『ギガント一体くらいなら大丈夫よ?』
「ラン。クー太もいるし、お前たちなら大丈夫かもしれないが一応な。レベルによっては強いかもしれないし、見た目が同じで上位種族かもしれないから」
『なら大変そうだったら呼ぶー!』
クー太もランもあんま頼りたくないのだろうか?
「まあお前たちはそれでもいいか。他のメンバーは一応呼んでくれ。ハクとクレナイも大丈夫だとは思うが守る対象がいちゃやり難いだろうしな」
全員が納得したところでまた移動を開始する。少し移動するとトロールと思われる巨人がいたが、一体だけなのでサクッと倒し進む。
「巨人の軍勢とか作ったら強そうだよなあ…」
まあ邪魔だけども。それにそんなことしたら魔王っぽくなるよな。そんなことするなら、たぬきをたくさんテイムしてたぬき軍団を作りたいな。オオカミは…名前を考えるのが大変だしもういいかな…。
その後もトロールは現れるが、単体でいる個体のみで群れには出会っていない。レベルは三体倒すと一つ上がったが…これはクー太達、拠点に残してきた魔物達の経験値も流れて来ているからだろうし、俺一人での狩りだとどれくらい経験値が入ってきてるのかイマイチ比較できないな。まあオオカミなんかよりは経験値が多いのは確かだろうが。
元人間のギガントは、ここら辺で同じ種族を見たことないと言っていたし、トロール以外は期待できないかね?
トロールの縄張りはかなり広いのか二時間ほど経ってもトロールだけしか出なかった。
「そろそろか…」
空を見上げると、太陽は見えないが陽が落ちてきたのはわかる。木漏れ日がいつのまにか減り、かなり薄暗くなってきた。
「爆炎」
ドンッ!バキバキッ!ゴォォォオォ。
「あっ。やり過ぎた…!水球!!」
消火作業!
トロールもギガントほどではないが魔法に対する耐性が高いのでそれなりの威力で魔法を撃っていたのだが…その勢いで合図の【爆炎】を放ったせいで、俺の頭上の木々を破壊し、燃やしながら空を赤く染める【爆炎】。
「あーもう。集合の合図を爆炎にしたのはミスったか」
水球を何度か放ち消化し、煙が立ち上がる森を眺める。歩きにくそうになったな、と。どうでもいいことを考えていたら何か音が聞こえた。
「キー! キーキー!」
そう思ったら脳内に聞き慣れた声が…。
【魔物が仲間になりたそうにしています。テイムしますか?】
【Yes or No】
は?ど、どこ?というかなんでだ…。
突然のアナウンス。更には俺が相手を認識していないせいか、魔物が仲間になりたそうに、って言ったよな?それじゃどんな魔物が仲間になりたがってるのかわからないだろうが!
「キー!」
「きー? 鼠?」
足元を探すが何も見つからない。
「どこだ…? っ!?」
「キッ!?」
バサッ。という音がして黒い塊が目の前に飛び込んできたので咄嗟に掴んでしまった。
「って…コウモリ? 仲間になりたいってのはお前か?」
「キッ。キィキィ」
……なんでだ? 【爆炎】に恐怖して、それを放った俺の配下になりたくなったのだろうか?よくわからんが…コウモリは初だし。
「Yesで」
《コウモリが仲間になりました。テイムした魔物に名前をつけてください》
「名前はデルタな」
『やっと会えました~!』
「ちょっ!?」
名前をつけた途端、顔に引っ付いてくるコウモリ。
「待て待て! 落ち着け」
『探したのです~!……グスッ』
何故泣く!? いや、それより探してたって…。
「前にクシハといたコウモリか?」
『クシハ…さん? という方は知りませんが…以前、モモンガ達と木から落とされたコウモリです!』
木から落とされたコウモリって…。いや…落としたけど、落とす気はなかったというか。
「そのモモンガがクシハだ。それで? あの時は仲間と去っていったよな? 探していたってなんだ?」
『人間さんは魔物をたくさん連れてたので、私もって思ったけど、言葉通じないみたいだったし…仲間たちも呼んでるしで……あれ? 私人間さんとお話しできてます?』
「テイムしたからな」
『わあ! お話しできてます~! 感動です!!』
興奮しているのかバサバサと暴れるコウモリ。結構痛いんだが。
「…落ち着け。なんで俺を探していたんだ? 仲間はどうした?」
『そうでした…。仲間たちが突然おかしくなっちゃったのです。攻撃的になって、手当たり次第攻撃を仕掛けるようになって…』
神が既に誘導を始めてる? それは違うか。予定だと明日襲わせると言っていたし。
いや、あの言葉が嘘の可能性もあるけど…ここら辺でそんな兆候は見られないしな。
人間のテリトリーを襲うのが明日で、試験的に暴走させている可能性もあるし、「よーいどん!」で全ての魔物が暴れ出すわけではなく準備が必要な可能性もあるが…わからないな。
「お前も攻撃されたのか? 原因はわかるか?」
『私は攻撃されていないです。ただ意思疎通が出来なくなって…原因はわからないです~』
「んー、ならなんでお前は無事なんだろうな?」
『多分人間さんのおかげですよ~! あ、ご主人様とお呼びますね〜!』
「名前はマコトだが…まあいいか。俺のおかげってのは?」
『仲間たちがおかしくなった時、私も無性に血肉が欲しくなったんですけど、すぐご主人様のことを思い出したんです。それでご主人様のところに行かないと、って。そのおかげで私は正気なんじゃないかなって』
血肉って…うちの子達は魔石と菓子パン、魚に缶詰しか食べ待てないから忘れていたが、普通は倒した魔物の肉とか食べるんだよな。ハクやクレナイも俺と出会う前に食べたことがあるようなことを言っていたし。
まあ、それはいいか。俺のおかげで正気になった? 一度出会っただけで、テイムしていないのに?
「俺とは一度会っただけだろう。テイムもしてなかったし」
『なんででしょうね~? 感覚的なものですけど、見えない繋がりがあった…ような?』
テイムしてないからパスはないだろう。俺にはそんな感覚…俺の感覚は当てにならないか。クー太たち初日テイムメンバーはそんなことないが、他の魔物たちは結構意識しないと繋がりを感じられないし。
なんだろうな? 【共有】中でテイムできないが、テイムしたいと思ったから仮契約ができていた、とか?
「わからん。じゃあもう一つ。血肉が欲しくなったと言っていたが…人間を襲いたいって欲求じゃなく、食欲が刺激されたのか?」
『おそらくそうかと思います~』
人間を襲いたくならないってことは、あの邪神関係ないのかもしれないか。
まあすでに邪神が何か始めているにしても、レベル上げはもう終わりにして拠点に戻る予定だし、拠点は拠点で多くの仲間たちがいるし問題ないな。
そうこうしているうちにクー太たちが合流し、恒例の挨拶タイム。その後は寄り道せず拠点へと戻った。




