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141 交渉


『やり過ぎましたか?』


「ハク…いや、問題ない。お前達が人型の方が面倒だったかもしれんし」


縋る対象がハクに移っても面倒だしな。


眼前が光に包まれ人型に戻ったハクとクレナイ、小さくなったクー太とラン。


「ハク。狼達にここら辺一体の魔物を間引かせてくれ。これで死なれても気分が悪いし」


「わかりました」


「さて…と、藤堂…は何してるんだ」


「なんで今つっかえたのよ。まさか名前忘れたとかないわよね?」


「そんな訳ないだろう」


すまん。名前じゃなく顔を忘れてたんだ…。


「私は彼らの護衛みたいなものよ。ゴブリンとか狼くらいなら倒せるからね。まあ一対一の時だけだけど…あと後ろにいる人たちもね」


藤堂とその後ろには男性が二人いた。

かなりびびってるが…藤堂から俺の話を聞いていたのだろうか?


「というか、仲良くないやつを俺の拠点に入れるつもりはないぞ?」


「私はそんな気は無いわ。ただ私は護衛とメイちゃんとミミちゃんに会いに来ただけよ」


「ふーん?」


まあ話は聞きたいし…立ち話もなんだな。

【亜空間倉庫】を開き机と椅子を運び出す。


「んじゃ少し話でもするか」


「え、ええ…」


「あ、少し待ってくれ。座ってていいぞ。飲み物も出しておくから勝手に飲んでくれ」


とりあえず親父達と…アキだな。


「ただいま。大丈夫だった?」


「ああ。初めは丁寧だったんだがな。断っていたらだんだんあんな感じになったが…まあ何もされてない」


「ならよかった。メイとミミは藤堂と話してていいぞ。親父達も話を聞くなら座って…その前にアキは何処にいる?」


「マコトさん!アキちゃんがいないんです!」


「アキちゃんいじけてたからねぇ…何処かで憂さ晴らしでもしてるんじゃないかしら?」


「アキちゃん気がついたらいませんでした…」


メイ、お袋、ミミがそう言う。

少し置いて行ったくらいで…仕方ないか。


「お前たちアキを探して来てくれ。フィーア!!」


呼ぶと後ろの方からエントであるフィーアがのそのそと出て来た。


『はい!』


「すまんがお前達はあんま速くないし、まだレベル的に不安だからあんま遠くまで行かないでくれ。城壁周りでアキが戻って来たら教えてくれ」


『申し訳ありません…わかりました!』


「すまんな。そのうちレベル上げ手伝ってやるからな。んじゃ全員アキのこと頼むな。ここら辺なら問題ないだろうが…あとさっきいた人間は自分の身が危ない時以外は出来るだけ攻撃するなよ?……いや、攻撃してもいいか」


「「え!?」」


こちらを伺っていた藤堂の連れ二人が驚いている。


「ただ殺すなよ?攻撃されたら攻撃していい」


魔物達が散開して行動を開始する。今日は戦えてないし、丁度いいだろう。


とりあえず全員で椅子に座る。椅子も机もショッピングモールに置いてあった物だ。


「あ、あああの!自分水島と申します!」


「つ、土屋です」


「なか…マコトです」


中野三人いるしややこしいからマコトでいいな。


それぞれ自己紹介をする。この二人、警官らしい。なんで藤堂に付き従っているのかね?藤堂の舎弟AとBと認識しておこう。まあその藤堂を忘れていたのだが。


「それで?あいつらはなんだったんだ?」


「避難所…もう前のところは魔物に襲われて駄目になったから今は魔物の少ない住宅街の一角で身を寄せ合っている状況ね。それでそこからでもこの城が見えたのよ。というかなんで城なのよ」


「俺に聞かれても困る」


「そうね…私の拠点は畳一枚分くらいの箱だったけど、理由はわからないし」


つまり藤堂はメイ達よりレベルは低いのか。


「まあ私達がいるところから見えたのよ。私は貴方だろうとは思ったけど、他の人たちは二つの反応だったわね。魔王が現れたという者と神が救済の拠点を作ってくれたという者。

それで高山君を筆頭とした人たちが様子を見に行くというから護衛としてついて来たのよね」


「やっぱ魔王城ですよね!」


「うんうん…」


メイとミミが同意して頷く。


「高山が来た理由がわかったし、もうそれはどうでもいいや。外の状況を教えてくれるか?」


藤堂のいる避難所には百人程いるらしい。そのうちレベルを上げているのは十人程。他は一日中部屋に篭って鬱状態の者か高山みたいに殺しは良く無いと言うだけ言って何もしない者。後はレベルを上げている人たちが物資を取ってくるのをやり繰りしたり家事をしたりする者らしい。


うん。そんなところ嫌だね。


後は木が少ない所程魔物が少ない、魔物の種類はゴブリン、ゾンビ、スケルトン、小型犬や大型犬…おそらく魔犬。森から離れるほど強く無いらしい。


そして藤堂のレベルは8らしい。狼を倒すのも難しいんじゃ無いか?とは思ったが拳銃がいくつかあるからそれを使っているらしい。


「んで?どうすんだ?確か今は魔樹だったか?木の成長が止まってるらしいがそのうち今住んでいるところも侵食されんじゃ無いか?こっちと反対側に行ったって森か海があるだけだろうし」


「そうなのよね…ちなみに貴方のレベルを聞いてもいいかしら?」


「……却下」


「…なんでよ」


「なんとなく?」


つか未だにレベル1がいる上にある程度戦ってる藤堂で8、親父達は…20くらいだったか?

俺のレベルの上がり方がやばいな…。


「まあいいわ。それで…ここに住まわせてくれとは言わないわ。ただこの辺りに住んでもいいかしら?」


「俺に聞くなよ。俺の土地でもないし。ただ可否を問うなら否だな。つまり俺らがここら辺の魔物を狩るから他より安全な場所に住みたいってことだろ?大した理由もなく逃げてるやつの面倒なんて見たくないし」


「そうよねぇ…。なら私達…レベルを上げてる人は…駄目かしら…?貴方の意思関係なくとも恩恵を与るのだから畑を作ったり、採取して食料を得たら渡すわ」


……この城壁内に畑作ろうと思ってたしな。でも人間にやらせなくともいい。まだ確認していないがエント達に木の実がついていたから食べられるかもしれんし、エリンにキノコを栽培してもらって、オーガ、二足歩行になった蛙達、上手くいくかはわからないがゾンビ達にやらせるつもりでもある。あとは下地ができたらフェリに育ててもらう。いや…フェリは連れて行きたいな…。


まあ不要なんだよなあ…。俺、親父、お袋、メイ、ミミだけの食事なら俺の亜空庫に入っているもので当面問題ないし、俺魔石しか食べてないし…。


あ、いや、だが…。


「農業とかの知識がある者がいるのか?」


「いるわ」


「まともな人か?」


「ええ」


「ふむ…」


ならオーガデフト…家とか建てたりしていた器用なオーガ達に農業について教えさせればいいか?オガクなら流暢に喋れていたし問題ないだろ。


「なら農業の仕方を教えてくれ。あとレベル上げもちゃんとしろ。病気だったり理由があるなら別に良いが、怯えて丸くなるしかできない奴は使える知識を持っていようと面倒は見たく無い。あとうちの魔物に攻撃しないよう徹底しておくならこの城壁周りに住んでも良い」


「農業については大丈夫なはずよ。レベル上げはもちろんするわ。病気とかの人もここに連れて来れる人の中にはいないわね。

それと貴方の魔物と野生の魔物の区別が付かないわ。なにか目印が欲しいのだけれど…」


目印、ねぇ…。布でスカーフでもつくるか?だがそんなたくさんの布は持ってないし…。


「まあそれに関して考えておくが、すぐには出来ない」


「わかったわ…ならとりあえず襲ってこない魔物は攻撃しないということにするわね」


「そうしてくれ」


「あと…城壁周りと言っていたけどここにも建物を建てても良いということかしら?」


「まあ構わないが…二、三十メートルは空けておいてもらわないと魔物達の出入りが面倒だな」


「わかったわ。ここら辺の木は切っちゃっても?」


「それくらいは俺がやっておく。ついでに整地もしとく」


「ありがたいわ…」


「それと…なにかしら囲いを作っておくからその中で拠点を作ってくれ。高山みたいなのが勝手に来てうろつかれても嫌だし」


「そこまでしてくれるの?」


「農業の知識…後はまあ一応顔見知りだしな。まあ俺は基本不干渉だから親父達と上手くやってくれ」


「わかったわ……マコトさんありがとうございます」


なんか居住まいを正したと思ったら三人揃って頭を下げてきた。


「いや、畏まられても」


「いえ、私達も行動するとは言っても貴方の庇護下にはいるようなものだもの。ちゃんとするところはするわ」


「ならマコトさんって呼ばないでくれ。せめて君で。鳥肌がたった」


「失礼ね…まあそういうならそうするわ。じゃあ私達は戻って皆を連れてくるわね」


「高山達はいいのか?」


「まあ派閥みたいになっているし、レベル上げをしている面々のことを犯罪者かのような接し方するし、文句は言うのに大半の人は何もしないし…私達も慈善家じゃないから自分達のことで手一杯よ」


「ふーん?まあ面倒事はあんま持ち込まないでくれな。もうすぐ暗くなるし帰るなら一応護衛つけとくか」


霊狸じゃ…弱すぎるしな。あんま数がいても仕方ないし。


「わざわざ呼び戻さなくてもいいわよ。ここにくる時もほとんど魔物はいなかったし、普段から倒して回ってるのでしょう?大丈夫よ」


「呼び戻さなくてもいるだろうし…念のためな。ドライいるか?」


『はーい!その人たちの護衛すればいいの?』


ミミの影から出てきたドライ。

クロとビャクヤも居るだろうが…人がたくさん居る場所に行くなら身体の小さいドライが適任だろう。


「可愛い……こほん。ドライちゃん?よろしくね」


…小動物好きなのか?クー太達にこんな反応しなかったし…まあいいか。


「有事の時以外は影の中にいるだろうからあんま気にしなくて良い。ドライ、拠点まで送って行ってやってくれ。ついでに様子も軽く見てきてくれ」


「ありがとう」


「「ありがとうございます」」


藤堂と水島、土屋の三人はそれぞれ俺に礼をし、メイ達と一言二言交わすと帰って行った。


「親父、お袋。メイとミミも。次から高山みたいな手合いが来ても顔出す必要ないぞ?どうせ中には入れないんだ」


「そう言ってもな…流石に話も聞かず居留守を使うのは…」


「わかったわ〜。時間が勿体無いものね」


流石お袋。親父はまあ…任せるよ。


「私も居留守使うのは…」


「…私も…なんか悪い気がします…」


「いや、相手しても仕方ないだろ?どうせ俺が許可しないんだから交渉しようが何しようがどうしようもないんだし?」


「「確かに…」」


椅子と机を片し、四人を城へ帰らす。


「アキは…まだ見つからないのか?木の上とか木の洞で寝てるだろうが…とりあえず整地するか」


【風刃】である程度切り倒し、抱えられる大きさに切って【亜空間倉庫】に放り投げていく。時間停止機能がない【亜空間倉庫】に放っておけば乾燥して薪として使えるだろうしな。


【地操作】で根っこの部分を地上に押し出し、穴を埋め、平らにし、硬める。それをひたすら繰り返す。

あと、根っこは一箇所に集め燃やす。虫とかはついていなかったが、土を落として薪として使うのも面倒だし…。


『主様!』


「アルファ。アキを見つけたか?」


『はい!ハクさんが見つけて先に知らせに来ました!』


「そうか。ありがとう。先に城に戻ってて良いぞ」


『いえ、散らばってる仲間に城に戻るよう伝えに行ってきます!』


「あー…いつまでに戻るようにとか言ってなかったな…。じゃあ頼む」


『はい!』


さて…もう暗くなったし今日はここまでにしておくか。壁を作りたかったが…土壁とかの魔法を練習しないとな。


その後、そう時間を置かず魔物達が次々と帰ってきてアキを抱えたハクが戻ってきた。


「おかえり」


「ただいま戻りました。アキちゃん、ほら」


『…………』


ハクが俺に向け差し出した両手の上でアキが丸まっていた。


「アキおかえり」


『…………』


「拗ねてんのか?お前が一人部屋でいつまでも寝ていたからだろう?」


『だっ、だからって全員でお出かけすることないです!起きてクロちゃんしかいなくて…クロちゃんもすぐいなくなっちゃうし…!………わたしいらない子です…?」


「そんなことないから。お前は大切な仲間だと前にも言っただろう。ほら、おいで」


手を出すともぞもぞとハクの手から乗り移ってくるアキ。

いつものメンバーだけで出かけてればここまで拗ねなかっただろうか。


「ちゃんと朝は起きろよ?一日中拠点にいるようなら昼寝はして良いから」


「ぐすっ。頑張るです…」


まあ起きれないだろうが…良い薬になっただろうし、今度から起こしてやるか。


全員戻ってきたことを確認してその日はキッチンを使ってみたり、椅子やテーブルを出したり生活に必要な物を【亜空庫(小)】と【亜空間倉庫】からだしたりして過ごした。



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