140 招かれざる客
大勢での移動、ってのは中々進まない。いや、進んでいるんだが、いつものメンバーといる時と同じように進むと足の遅い魔物が遅れる。エント達は待たせた方が良かったかもしれないと思ったが…仲間はずれは良くない。ということで速度を緩める。
まあ今日は五日目?だから後二日あるし、焦ることもないんだがな。
「にしても魔物がいないな…」
『いるよー?でも近づいたら逃げてるみたいー』
肩にいるクー太にそう言われた。
『そりゃねぇ。こんな何百もの大群…余程の馬鹿じゃなきゃ挑んでこないわよ』
クー太の反対側にいるランがそう言う。
なんか肩に二匹がいるのが久々な気がする。
「確かにそうですね」
そして腕の中にいるエリンが同意する。
まあ…あれだ。
両肩にクー太とラン、腕の中にエリン。エリンの上にレイ。頭部にフェリ、影にドライとビャクヤ。
バックパックにアメリ、クシハ、シスが入っている。
「………一人動物園だな」
『どうしたのー?』
「気にしないでくれ」
『??はーい』
クレナイとハク、ラックは隣を歩いており、サンクはクレナイが抱えている。
「猿の魔物なら突っ込んでくると思ったんだがなあ」
『猿なら逃げてるわよ』
「後は木の上の方に隠れてるみたいですね」
ランとクレナイが言うように逃げているのだろう。全然見ない。匂い自体はするのでさっきまでここら辺に居たんだろうが。
その後も魔物に遭遇することなく移動を続けた。
『ご主人様来るわよ』
『鳥さん来たー』
クー太もランも緊張感がない…。まあ全員緊張感ないか。後ろのメンバーは巨大鳥の存在感というか威圧を感じているのかキョロキョロしているのだが、よく連れ回すメンバーは全員戦闘態勢も取らない。
いや、それが正解なんだけどな。あいつも構えてないやつを問答無用で襲っては来ないだろう。楽観視かもしれないが…まあ一度戦って見逃された仲だしな。
バサッバサッという無数の音と共に木の葉や枝が折れガサガサと周りが騒めく。
俺らの頭上にどんどん鳥が集まってくる。
「あ。あの真っ白なフクロウ欲しい…」
「…ご主人様。そんな物みたいに…」
「言い方が悪かったな。仲間にしたいっ」
「そういう問題じゃない気が…」
ハクが何か言っているが、真っ白なフクロウが目についたんだから仕方ないだろうに。てか見たことない鳥がたくさんいて、前見た時よりも多種多様な気がする。
「全員欲しいな…」
「「ご主人様」」
ハクとクレナイに窘められてしまった。普段そんなこと言わないんだが…やっぱりこの二人も緊張してんのか。
バキバキバキバキッ!
『ほう…。多くの共を連れ我に再戦しに来たのかと思ってこちらも総出で来てやったが…そういうわけではなさそうだな』
「久しぶりだな。再戦はしたいが別に総力戦をしたいわけじゃない」
『そのようだな。お主も側近の者も戦闘の意思は無いのはわかる。だが何故大勢で我らの縄張りにやって来た?』
側近か…。
「仲間全員で出かけたことがなかったんでな。今回全員で出かけようってなっただけだ」
「ピクニックなの!」
ラック…少し静かにしてな?確かにピクニックとも言えるけど…。
『……』
「んな呆れたような反応しなくて良いだろうが。用があって来たんだ」
とりあえず自称神が言っていた事を伝える。その上で敵となるか味方となるか。もしくは傍観するのかを聞く。
『我はその神とやらの声は聞いておらんが…お主のいう通りなら大丈夫である…と思う。動物達を変化させ、森を変え、魔物とやらを生み出した存在ならば絶対に抗える、とは言えぬが』
「まあ超常の類だからな。俺からしたら今でも俺一人じゃ敵わなそうなあんたも充分超常だが」
『そうか…。我は我らの縄張りと仲間を守る。先程の選択肢ならば傍観だな。
ここにいる者達は我の配下である。野生の動物より知能は高い上、しっかりと自我もあり、我の命令もちゃんと聞く。だから大半の者はその神とやらの誘導に従うことはないだろう』
「了解。頼むな。お前相手に大群と戦うとか勘弁だ。そういや、ドラゴンとか鷲獅子はどう動くかわかるか?あと、前に言ってたろ?お前みたいな奴が結構いる、って。そういう奴らはまだ見た事ないが襲ってくるか?」
『わからん。竜と鷲獅子は生まれたばかりの個体なら誘導されるやもしれぬな。天狗や我のように元から自我がちゃんとあり、それなりの力を持っていた者は…この山にいる者なら手は出してこないだろう。どいつもこいつも縄張りから出たがらないからな』
あんたもな。まあそれなら問題ないか?
「生まれたばかりの竜と俺どっちが強い?」
『マコト。お主だ。そこの狸や人…ではないか人型の者でも問題ない。抱えている……』
「こいつか?元キノコのエリンと俺の魔力から生まれたレイだ」
『其奴らでは勝てんな』
まあそうだわな。勝てたら驚くわ。
『背中の猫だとちと厳しいかもしれぬな』
アメリより少し強いって感じか?まあ全員戦闘形態じゃないしこいつの判断を鵜呑みにするわけにはいかないが…目安にはなるな。
「了解。ありがとうな。出来ればお前も配下の魔物も仲間になって欲しいが…」
『我に圧倒できるようになったら考えてやろう』
…お?拒絶されるかと思ったが、一考はしてくれる感じ?
「なら頑張って強くなってくるさ。また戦おう」
『うむ。殺し合いではない対等の戦いなどお主としかできないだろうしな。我も楽しみにしていよう』
「おう」
『では我は行く…が。その前にその鷹を何処で仲間にした?ここら一帯の鳥は配下にしたのだが』
「アルファか?あっちの方だけど、結構離れたとこだな。お前なら飛んでいけば一日もかからないと思うが…」
『ふむ…。そのうち様子見しにいくとするか…。では我らは行く。ここら辺を通っても良いが鳥系の我と同じ系譜の者には手を出すなよ?』
「了解した」
巨大鳥が飛び立ち、後に続くように他の鳥も飛んで行く。
何匹か勧誘しようと思ったのに先に釘をさされたな…。まあ仕方ないか。
「さて、用事は済んだし…少し遠回りして帰るか」
「どちらへ?」
「前は虫のエリアと蛙…アン達がいたとこを通って、そこからはフィーア達人面樹がいたところを通って帰ったよな?なら反対側から回って帰ろう」
「ピクニックなの!」
「ピクニックってより散歩だな」
『ご主人様』
!?!?
「クロか…おかえり」
気配感じないんだよなあ…。焦るわ。
『ただいま』
「親父達とアキは?」
『お父さんには伝えた。ご主人様と魔物達がいないなら今日はお城で過ごすって』
「そうか。それなら良かった。んで、アキは反省してたか?」
『アキは大泣きしたあと不貞腐れてた』
………。大泣き、か…。
「帰ったらアキちゃんに少し優しくしてあげてくださいね?」
「ハク…。あいつだけ置いていくのは少しやり過ぎたか?」
「まあ良い薬にはなったと思いますが…まあアキちゃんって最近はそんな事ないですけど、寂しがり屋さんですし、ネガティブですからね」
…そういえばそうだった。
「反省してたら優しくすることにする」
「それは良かったです」
「んじゃ日が暮れる前に帰るか」
そして以前行った方とは反対側に移動する。一番後ろのやつに方針を伝えるのに少し時間がかかったが移動を始めた。
「なんかこんなのんびり歩くの久々だな」
『そうー?』
『そんなことないわよ』
「俺よりお前達の方がのんびり歩くなんてしないだろうに…」
『そんなことないよー?』
『そうよ。私達だって一日中狩りしてるわけじゃないもの。休憩がてらのんびりすることくらいあるわよ』
…それもそうか。
その後もやっぱり魔物とは出会えずやっぱり全員で行動は控えようと思った。のんびり歩くのも悪くはないが魔物に襲われることもなく過ごすのは違和感が凄い。というか落ち着かない。
たまに後ろに下がって普段会話しない魔物達とも触れ合いながらのんびり城に戻った。
「ん?」
『人間の匂いー?』
『ルリ達でもメイ達でもないわね?』
「やっぱ人間だよな?んんー…お前達を連れて行って攻撃されても面倒だし…少し待っててくれるか?クレナイとハク、ラックは一応来てくれ。クー太達は魔物達を頼んだ」
人間に見える三匹を連れて匂いの下へ向かう。なんか複数の匂いがすんだよなあ。
城門が見えてくるとそこには二十人…三十人ほどがいた。
何してんだ?城門の中には親父達がおり、何か話しているようだ。
「なんでだよ!こんだけ広いんだ!入れてくれたって良いだろう!?」
「だからですね。この城の作成者が今いないので私達では入れてあげられない上に、自分の家に知らない方を安易に招くことはできませんと行っているではないですか」
「あんたは知らないが後ろのメイちゃん達のことは知っていると言っているだろう。彼女達と話をさせてくれ!神って奴が魔物をけしかけてくるんだ!力のない人たちを助けようとは思わないのか!?」
んー。聞こえてくる感じ保護してほしいのか?
「だが…なんなんだあいつ。随分偉そうだなあ。つかメイ達の知り合いか?」
「ご主人様。以前会った方では…?それとあそこにいるのは藤堂殿では?」
出会った?
こいつらが知ってて出会ったことがある、って…避難所で見かけた人間?この前ショッピングモールの生き残りは…違うだろうし…た…高…高山?
「あ、ほんとなの!」
「ん?どれだ?」
「あのうるさい人の後ろにいるの!」
藤堂、か?
「……顔覚えてないわ」
「「「え」」」
「え…って仕方ないだろ。興味ないやつの顔なんぞ覚えてないわ。アキって名前となんか気が強そうな感じと………女ってことくらいだな。うん」
「主様…流石にそれは…」
「ご主人様…」
「流石なの!」
「まあいいや。んで、あの男は高山ってやつか?」
「そうだと思いますが…やはり覚えておられないのですか?」
「覚えてないな。なんか面倒だったような?」
「ご主人様に名前と顔を覚えてもらっていることに感謝した方がいいのでしょうか…」
「いや、お前らと比べるものじゃないだろ。んで、あれが高山…高山だよな?んで、あっちが藤堂ね」
んでもあいつらどうすっかなあ。大して強く無さそうだし…魔物達引き連れて行けば逃げてくれないかね?
でもなー…戻るの面倒だし…
「三人ともクー太達のところに戻って全員連れて来てくれ。クロ、ビャクヤいるか?」
『ん』
『はい!』
「親父達の影に転移しておいてくれ」
『ご主人様!私も転移できるよ!』
あれ?ドライも転移できたか…?いやできるようになったのか?まあいいや。
「ならドライも頼む」
『わかったあ!』
全員俺から離れたところで騒いでるやつの元へ向かう。なんで全員離したかって?なんとなくああいう面倒な人間に関わらせたくなかっただけである。本当になんとなく…面倒な気がした。確か前会った時は魔物を殺すのは良くないとかなんとか言ってて凄く面倒だったし。
影組はいてもよかったが念のため親父達の護衛だな。
歩いて行くと親父達が俺の方を見たので、軽く手を振っておく。
「何騒いでるんだ?」
「こいつらが中に入れてくれないんだ!戦えない奴もいるのに!あんたからも何か………」
喚いていた男がこちらを振り向くとフリーズした。
はろー。
「お、お前…」
「元気そうだな」
敢えて名前は呼ばない。間違えてたら恥ずいからな!
「な、なんでこんなとこにいんだ!?あ、いや、お前もメイちゃん達に頼りに来たのか?ははっ。前はメイちゃん達を助ける立場だったのにな」
…こいつは何言っているんだろうか?というかこんなやつだったか?もっと真面目君って感じだった気がするんだが…まあいいか。
視線をずらすと藤堂…らしき人がこちらを見ていた。顔覚えてなくてすまんな。少し見覚えはあるぞ。うん。
「俺はそんなつもりはないが…【拠点】のスキルは皆使えるんだからここじゃなくても良いだろう?」
「あんな犬小屋みたいな拠点でどうしろってんだ!どうやったのかは知らないがこんな大きな城があるんだ。入れてくれても良いと思わないか!?」
犬小屋…?
「横になるくらいの大きさはあるだろ」
「っ!お前は平然と動物達を殺せるからレベルが高いんだ!俺達は罪のない動物を殺すなんてしない善良な人間だからな。拠点もそんなに大きくないんだよ!他の人たちもだ」
つまり…?
まじでこいつの拠点は犬小屋だと?
「フッ….」
「な、何がおかしい!」
「いや…すまん。気にしないでくれ」
犬小屋の拠点かあ。文字通り犬小屋だとは思わなかった。まあこんなやつを入れる気はないが…。
周りを見渡すと不安そうにしている者、呆れたような顔をする者、高山と同じように苛立ちも隠さずにいる者。
いや…呆れてる奴らよ。お前らもここにいるってことは高山と同じ気持ちなんじゃないの?
「高山さん。彼らの言っていることは正論です。緊急時なので高山さんの言いたいことも否定しませんが…頼み方というものがあるでしょう」
と思ったら藤堂は高山の態度に呆れていたようだ。まあ頼まれても入れてやらんがな。
「拠点を作った奴がいないことにはどうしようもないんだろう?メイ達に当たっても仕方ないだろう」
「だが…っ!」
「自分達がいたところで各々拠点を作って立て籠ればいいんじゃないか?」
まあ犬小屋程度じゃゴブリンにすら壊されるかもしれないが。
「拠点と言ったってシェルターって訳じゃないんだ!壊されたら終わりだろう!だからこの壁の中に住まわせて欲しいって言ってるんだ!」
「だが許可を出す人がいなきゃ無理だろう?」
「そのためにその壁の中にいる人たちと交渉してるんだ!」
堂々巡りとはこういうことを言うのだろうか?
そろそろ全員来るだろうし…もういいか。
「まあそこにいる人たちに交渉したところで意味はないぞ。俺はお前らを保護するつもりも入れるつもりもないからな」
「なっ…!?なんでお前がそんなことを言うんだ!」
「そりゃあここは俺の拠点だしな…っといいタイミングだ」
「ま、魔物!?」
「ひっ!?」
「に、逃げろ!!!」
クレナイとハクは魔物形態。クー太やランも巨大化しておりぞろぞろとその後ろから魔物達が現れる。
阿鼻叫喚。
…っ!お前たちレベル低いんだろ?そんなバラバラに移動したら拙いだろ…。




