129 進化3
光が収まるとそこにはキノコの傘だけが残されていた。
「エ、エリン…?」
そう呼びかけると、ぱちっと黒い円が二つ現れた。
いや、瞳か。ぱちぱちしてるしているし…多分。少し離れたところの火明かりが反射しキラキラとした黒い瞳が二つ現れた。
「なんか背が低くなりました…?」
………!?
驚いた…。瞳と思われるものより小さいものがもう一つ現れた。というか開いた。おそらく口、だと思う。そこから普通の言語…日本語が聞こえた。
「エリン、ここは目か?」
「え、はい」
「そうか」
うん、目であっているらしい。
「少し抱えてもいいか?」
「はい」
エリンを抱える。傘は黒いままだが感触がぷにぷにしている。裏を…地面に接していた部分を見ると茸特有の繊維のようなものはなく傘と同じ模様、色で…一言で言うなら黒と白のお饅頭…になっていた。
キノコ…じゃなくなったのか?いや、種族名は黒菌だから、菌類だけどキノコではなくなった?まあ魔物だし、そんなもんだと思っておけばいいか。
それより喋っていることに驚いた。まあキノコの魔物だし…動物とは違う発声器官が進化によって作られたと思うしかないな。
にしてもぷにぷにだ。肌触りも悪くないし、シリコンみたいで、大きさは俺の頭より一回り大きいくらいで枕に丁度良さそうだ。
「ありがとう。自力で移動できるか?」
「た、多分…」
ずりっずりっ。
這って進む感じか…自力じゃあんまり距離が移動できないんだな…なんて思ったら今度はぴょんぴょん跳ね始め、次は転がって移動し始めた。しかもそれなりの速度が出ている。人間の歩く速度程度だが…。
『なにそれー!』
『えっ!エリンなの!?』
『それなんです!?面白そうです!』
好奇心旺盛な三匹がやってきた。
クー太とラン、アキは目を輝かせながらぽよぽよと跳ねるエリンを見ている。
「というかアキ起きてたのか」
『ちょっとうとうとしてただけで、寝てないです!』
お前のうとうとはほぼ寝てるだろ。
「うぅ…ひどい目にあったの…。エリンも進化したの?」
『エリン??』
クー太達に構い倒され項垂れたラックとクシハが来た。というかその後ろにハクとクレナイ、ハクに抱えられたドライ、クレナイに抱えられた鷹のアルファ、フェリにリーフ、サンク、シスと全員ついて来ている。
「エリンです」
『『『『「喋った(の)!?」』』』』
「なんか喋れるようになったらしいぞ」
珍しくクレナイとハクも目を丸くして驚いている。
クー太達はエリンを囲みわいわいやっているので俺はステータスでも確認しようか。そういやラックのも確認してなかったな。新しく習得した種族スキルもあるだろうし、詳細もまとめて見ようか。
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個体名【エリン】
種族【黒菌】
性別【ー】
状態:【 】
Lv【3】2UP
・基礎スキル:【繁殖胞子lv2】【鎮静胞子lv2】
【睡眠胞子lv1】【硬質化lv2】
【毒胞子Lv1】new
【吸命胞子Lv1】new
【食用菌生成Lv1】new
・種族スキル:【統率】【分裂Lv1】new
・特殊スキル:—
・称号:【変異体】
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個体名【ラック】
種族【狸人(妖精種)】
性別【メス】
状態【 】
Lv【3】2UP
・基礎スキル:【噛み付きLv2】【隠密Lv3】
【鋼糸Lv3】【糸球Lv4】
【火球Lv4】【水球Lv3】
【風球Lv3】【土球Lv4】
【水刃Lv3】【土槍Lv3】
【雷球Lv2】【風刃Lv1】
【身体強化魔法Lv1】new
【魔装Lv1】new
・種族スキル: 【操糸】【浮遊】【存在昇華】new
・特殊スキル:【制限解除】【結界生成】
・称号:【進化・使役魔獣】【守り手】
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【毒胞子】
・あらゆる異常状態を引き起こす毒の胞子。
【吸命胞子】
・胞子を飛ばすことにより胞子が付着したものに茸が生える。
・胞子により茸が生えた場合、その茸により生命力・体力・魔力を吸い取る。
・吸い取った物は本体に還元される。
【食用菌生成】
・自身の胞子・魔力を用いて食用に適した茸を生成する。
・生成速度、生成可能な数、種類はレベルに依存する。
【分裂】
・自身と同様の思考をもつ存在を生み出す。
・スキル使用時に使った魔力により身体能力が変わり、魔力・スキルを貸与した分裂体を作成することが可能。
・分裂できる数は分散させた魔力・スキルと保有魔力に依存する。
・本体が解除を望んだ場合・死亡した場合に分裂した分体の存在は消滅する。
【存在昇華】
・魔素で構成された肉体を使役者または肉体を構成している魔素の元となった者に近づけ、その者のスキルを一部模倣・習得が可能。
・自身が保有できる魔力量の倍以上の魔力を使役者に注がれた時、昇華される前の身体に戻る。
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エリン…食用のキノコが作れるようになったのか…。食料に困ることは無くなったな。まあキノコだけの食生活ってのは考えものだが…魔石だけの食生活よりはいいな。
それと【分裂】と【吸命胞子】はかなり使えるだろう。いや、【分裂】の方は微妙か?魔力やスキルを貸与ってことは本体のエリンが弱体化するってことだし。身体能力は使う魔力次第とはあるが…エリンの身体能力はそんな高くないし、あまり期待できない。
強いて魔力を存分に使って【硬質化】を貸与させた分体を盾にするとか、だろうか?それで後ろから胞子をばら撒く、と。
まあ盾として使える大きさでもないし、いくら分体とはいえ俺自身が盾に使うのは躊躇われるが。というか俺の方が頑丈だから盾にするなら俺自身だな…。
【食用菌生成】と元から持っていた【繁殖胞子】は親父達のところに帰ってから試してもらうかな。ここで増やされてもどうしようもないし。
「んで…【存在昇華】か」
使役者もラックを生み出したのも俺だからこれを使うと俺の姿に近くなるってことか。
今でも耳や尻尾が生え、充分似ているが…どうなるのだろうか?俺の姿形と同じになるのだろうか?
「ラック!」
ラックを呼ぶ。やってみて貰えばいいだろう。戻せるみたいだし。
「はいなのー」
「存在昇華を使ってみてくれるか?」
「んんんー?存在昇華…存在昇華…。使えそうなの!」
そしてラックが発光する。
光が大きくなりそして消える。
「!?」
そこには俺と同じく黒髪に焦茶の耳、焦茶の尻尾を生やしたラックがいた。
人間大…というか俺と似たような背丈になり、その可愛いらしさが良くわかる。
服はラックが魔力で作った物だからか、ラックと一緒にサイズが大きくなったので裸になるということはなかった。
「!!!!!ご主人様と同じなの!?」
わあ!すごいのー!と言いながらはしゃぐラック。
「新鮮なの!ご主人様ー!」
そう言って抱きついてくるラック。うむ…柔らかいな…普通に人間の女性だ…じゃなくてっ。
「身体に違和感はないか?それとステータス確認するぞ」
「わかったの!」
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個体名【ラック】
種族【狸人(妖精種)】
性別【メス】
状態【 】
Lv【3】2UP
・基礎スキル:【噛み付きLv2】【隠密Lv3】
【鋼糸Lv3】【糸球Lv4】
【火球Lv4】【水球Lv3】
【風球Lv3】【土球Lv4】
【水刃Lv3】【土槍Lv3】
【雷球Lv2】【風刃Lv1】
【身体強化魔法Lv1】
【魔装Lv1】
【拳術Lv1】new【防御術Lv1】new
【毒耐性(小)Lv1】new
【精神耐性(小)Lv1】new
【回避術Lv1】new【蹴術Lv1】new
【細胞活性Lv1】new【棍術Lv1】new
【跳躍Lv1】new
【亜空間倉庫Lv1】new
【雷装Lv1】new【爆炎Lv1】new
【痛覚軽減Lv1】new
【亜空庫(小)Lv1】new
【地操作Lv1】new【硬化Lv1】new
・種族スキル: 【操糸】【浮遊】【存在昇華】
・特殊スキル:【制限解除】【結界生成】
・称号:【進化・使役魔獣】【守り手】
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俺が持ってるスキルと比べると…結構ないな。元からラックが持っていたスキルはわかるが、【暗視】などはなんでないんだろうか?元からある程度夜目が効くからか?
いや、魔物で夜目持ちっていないから人間専用スキルとか…もしくはラック自身、もしくは種族的に適性のないスキルとかがあるのだろうか?
まあ…その可能性はありそうだな。【テイム】もないし。
魔物が【テイム】スキルを覚えられるなら魔物を従属させられるハクやクレナイは【テイム】を覚えていてもおかしくはないしな。
それより…【亜空庫(小)】をラックが覚えてくれたのが助かる。これなら別行動しても荷物の心配しなくてもいいし、俺が持ってる荷物をラックに預ければ俺一人で探索しに行っても皆の食事や布団とかの心配はなくなる。
まあたまには一人でぶらぶらしたいな、とは思うけど誰かしらはついて来るし、別にクー太達なら嫌じゃないからいいんだが。テイムした繋がりのある魔物だから面倒だと思わないんだろうな。人間だといくら好きでも四六時中一緒にはいたくないし。
「確認終わったぞ」
そして【存在昇華】によって俺から得られたスキルを教えてやる。
「たくさんなの!ご主人様ありがとうなの!」
「ああ…」
「どうしたの?」
「後ろ」
「…?……ひゃっ!?」
俺に言われ後ろを振り向いたラックが目にしたのは目をギラギラさせたクー太達だ。ついさっきまでエリンと遊んでいたのにラックの姿を見て標的を変えたらしい。
今にも襲いかかりそうだ。…一応俺が話しているから待っていたのだろう。
「………もういいぞ?」
「えっ。な、なにがなの…?」
『わぁーい!』
『ラック!またあんたは!ご主人様とお揃いとか!』
クー太は普通に大きくなったラックと遊びたい、ってだけだな。ランはやきもち、か?まあ怒ってるわけではないから遊びの延長だろう。とりあえず泣いたり拗ねてるわけでもないし放置でいいか。ラックが走って逃げていて違和感凄いが。
「あれ?あいつ飛べないのか?そういえば羽ないし…嫌でも【浮遊】は消えてないから飛べると思うんだが…」
まあいいか。後で聞けばいいし、飛べないなら移動する時は戻してやればいい。
そして俺は自分用の布団を出し胡座をかいてクー太たちを眺める。もう寝てもいいが…俺が寝るとあいつらも寝るんだよな。楽しそうだし水を差すのも、な。
……魔法の練習って気分でもないし。魔力はもう回復しきってるからアレやるか?身体を反転させ、クー太達全員に背を向ける。
「……霊狸召喚」
髪の毛を一本抜き、魔力を込められるだけ込めて見る。どんどん魔力が減り目眩を覚え始めた所でポンッ。と、いつもより小さい掌サイズで浮くのではなくちゃんと四肢を使って布団の上に立っている薄らと透けているように見える霊狸が現れた。
『???』
目をパチパチ。左右前後をキョロキョロ。自分の身体をペタペタと触り…そして俺と視線が交差する。
成功か?魔狸と霊狸を作成できる【使い魔作成】スキルだが、魔狸は珍しくないし、拠点に居る。ということで霊狸を永続的に顕現できないか試してみたのだが…。
『こんにちは?』
「こんにちは?」
女の子かね?声的に。
『なんか私いつもと違う気がするのですが…ご主人様は何かわかりますか?』
いつもと…?まあいつもは顕現させると命令を求めてくるし、俺が聞いてもいないのに自ら声をかけてくることはないからいつもと違うのは確かだが…。それに浮いてないし、色合いも。よく見ると透けてはいない。ただ透けているかのように見える真っ白な小さな狸だ。
とりあえず…。
「いつもってどういうことだ?」
『ご主人様がたまに召喚してくれる時と…。私だけですし…魔力が安定して抜ける感触もないですし…思考出来てます』
ん?
「俺が顕現…召喚した時のこと覚えているのか?」
『もちろん覚えてますよ?』
「思考ができてるってのは?いつも思考出来ないのに覚えてるのか?というか記憶が引き継がれているのか?それとも召喚するたびに同じ個体が召喚されていたのか?」
『えっと…?私達はご主人様に召喚された時全員が繋がっている感じです。同一個体かどうかはわからないです?でも召喚のたびに数もご主人様の使う媒体も違うので多分違うかと?なので記憶が引き継がれてるって言った方がいいのかも…?』
「ふむ…。ステータス見るぞ?」
『どうぞ…?』
なんか凄く戸惑っている感じだ。それともこういう性格なのだろうか?
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個体名【未設定】
種族【霊狸】
性別【メス】
状態:【 】
Lv 【1】
基礎スキル:【念話Lv1】【念動力Lv1】
種族スキル:—
特殊スキル:【一心同体】
称号:【特殊魔物】
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ふむ…………。




