128 進化2
食事を終えた後はフェリ達の進化だ。フェリもラックもエリン、サンク、シスも全員が進化先やスキルが選べる場合も俺に任せると言ってゴロゴロしている。
進化する時だけ呼ぶか…。
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○フェリの進化先を選んでください。
・豊穣鼬鼠
・樹精
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ん…?豊穣?精?…精霊?
詳細を見ると豊穣鼬鼠は草木を育成する事に特化した鼬鼠らしい。名前の通り豊穣を司るのだろうか。進化した後に手に入るスキルも表示してくれると助かるんだが…まあいい。
樹精は樹木の小精霊とある。小ということは小が取れた精霊や中や大があるのだろうか?そして樹精は魔素で身体が構築されているらしい。つまりラックの前段階に似たような物、だと思う。
どちらにせよ草木の育成や木に関する魔法が使えそうだ。
これは悩む…。オーガやゴブリン達に農業やらせてみるって話をしたところだし、植物を育てられるスキルが手に入るのは良い事だ。だがオーガ達を大量にテイムして農業をやらせるかはまだ未定だし、途中でめんどくさくなる可能性もある。というか高い。そんなところにフェリを置いていく気はないし、お袋達がいる拠点に留守番してもらって植物を育てさせる気も今はまだない。そのうち旅に飽きたり、フェリが拠点に居たいと言うなら別だが…。
悩む…悩むが…フェリには任せると言われている。だからここは後々の事とか考えず俺の好みで決めようか…。
よし。樹精だ!
なんでかって?そりゃ精霊が見たいからだよ。
「フェリおいで」
『ん。決まった…?』
「ああ。進化させるぞ」
『うん…』
フェリが光に包まれる。そして現れたのは…フェリだ。いや、うん。何も変わってないって事だ。
半透明になったり、人型になるのかと思ったが…変わらないんだな。
ステータスはどうなった?
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個体名【フェリ】
種族【樹精】
性別【メス】
状態【 】
Lv【2】UP
・基礎スキル:【噛み付きLv6】【隠密Lv5】
【加速Lv2】【気配察知Lv3】
【共鳴Lv2】【根治Lv2】
【木球Lv2】【眷属作成Lv1】new
【水生成Lv1】new【土生成Lv1】new
・種族スキル: 【栽培】【操草】【霊体化】new
・特殊スキル:【制限解除】
・称号:【進化・使役魔獣】
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おおー。初スキルばっか。
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【眷属作成】
・無機物有機物問わず意思や自我を持たない物に意思を与え眷属とする。ただし眷属を作ることが出来るのは対象との相性次第である。
・Lv上昇により作成できる数が増加。
【水生成】
・水を生み出す。
・魔法と同様魔力を消費するが魔力消費量は少ない。
・また硬水軟水、冷水温水、淡水海水等あらゆる性質の水生成出来るが指定場所に水を生成するのみである。魔力による形成等は不可能。
【土生成】
・土を生み出す。
・魔法と同様魔力を消費するが魔力消費量は少ない。
・また保水性、排水性、保肥性を持つ物や、鹿沼土、赤玉土などあらゆる性質の土を生成出来るが指定場所に土を生成するのみである。魔力による形成等は不可能。
【霊体化】
・霊体化。
・身体を魔素と同等の物に変質させる。
・変質させていられる時間は魔力に依存。
・霊体化している間は物理攻撃は効かず、相性の良い物質と同化することも可能。
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う、うん?なんか随分と凄いスキルじゃないか?
【眷属作成】は俺の使い魔と似ているが…物に意思を与える、ねぇ。樹精だし、草木に意思を与えてあの動く草や人面樹を作って眷属とするのか?
これは一度やってみてもらわないとな…ただ雑草なんかに【眷属作成】を使って動くだけの草を生み出してもしょうがないし、森に戻ったらやってもらおう。眷属にできる数には限りがあるみたいだしな。
んで次。【水生成】と【土生成】だ。ちょっと予想外のことが書かれている…。魔法と同様?淡水海水?鹿沼土?
魔法ってイメージ次第で海水も作れんの?冷水、温水はわかるよ。ただ単に温度を上げる…分子運動の問題だし、水魔法でそれができてもおかしいとは思わない。けど海水とかは…別の成分入ってきてんじゃん。
つまり魔法って俺が思ってるより万能…?いや、この書かれ方だと出来る物は決められていて、その決められた中の物なら魔法で作れるってことか。つまりあの自称神の采配次第?なんかそれはそれで複雑だが…。暇な時練習してみるか。海水作れるかどうか。後は冷水が作れるなら氷。他には水の色を変えられたりするのだろうか?
別に魔法って球系と刃系があれば割と事足りるからどんなことができるかとかあんまり考えてなかった。
脱線したがこの生成スキルは魔法みたいに形成は不可となっているが、敵の真上に土を落としたり、傾斜で水を大量に流したりしたら攻撃手段になるよな。
まあ実際はただ指定した場所に生成するだけだが充分使える。
んで霊体化ね。これもフェリに色々試してもらわないと詳しくわからないが…充分強いだろ。魔法を使えない相手には無双ってことだろ?時間制限はあるが。
ということでスキルの詳細を一応フェリに説明しておく。
「【霊体化】使ってみてくれるか?」
『…わかった』
そう言うとフェリはぼんやりとした光に包まれ宙に浮いた。
『!?』
珍しくフェリが目を見開き驚いている。という俺も驚いているが…。
「浮けるのか…」
『………そうみたい』
スゥーーっとフェリが宙を移動する。浮くってか飛んでるな。手足を走る時のように動かしている。宙でバタバタさせているようで可愛いな。
「手足動かさないと進まないのか?」
『………あれ?』
手足を動かしている自覚なかったのか…?今度は手足をプラーンとさせたままスススゥーっと移動してる。
『フェリ飛べるようになったのー?いいなあー』
『フェリ凄いわね!』
「フェリちゃんも飛べるようになったの!お揃いなの!」
クー太もランも羨ましそうにみている。ラックは普通に嬉しそうだ。ラック、リーフ、クシハ、新米のアルファ、そしてフェリ。飛べる者が増えたな…。
クレナイとハクは軽く拍手してる。普通に祝福してるのか。
アキは…ウトウトしてて気付いてないな…。
他のメンツは飛んでるフェリ目で追いかけてる。羨ましいのだろうか?リーフとクシハは飛べる仲間が増えて喜びそうだな。空の散歩にフェリが連れて行かれそうだ。
フェリも楽しそうだし放っておくか。当分飛んで遊んでそうだし。次はラックだな。ラックはフェリと一緒になって飛んでるが…まあいい。
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○ラックの進化先を選んでください。
・エルフ
・ドワーフ
・マーフォーク
・リザードマン
・シルフ
・ノーム
・アンダイオン
・サラマンダー
・ドナー
・狸人(妖精種)
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なんかたくさんあるし…。
ざっとみたがエルフは風、ドワーフは土、マーフォークは水、リザードマンは火の属性の人種。これは以前俺の進化先で見た。
シルフは風、ノームは土、アンダイオンは水、サラマンダーは火、ドナーが雷の精霊らしい。
…うん。精霊が流行りなの?それとも上位種族って精霊になるの?
まあこの選択肢はラックの持つ魔法属性に沿ってるんだろう。持っている魔法属性の半人半精か精霊か。普通に考えたら精霊の方が上位種だな。
そして唯一の妖精種。狸人(妖精種)の詳細を要約すると狸人の特徴を持った妖精だ。つまりラックがこの姿で俺のように狸の耳と尻尾が生えるということだろう….。クー太とランが嫉妬しそうだな…。
おそらくこれはラックが俺の魔力から生まれたからだろう。もしかしたら人妖精自体も俺という人間の魔力から生まれたから進化できたのかもしれない。
ある意味で俺の子供のような者だし、テイムとは違う繋がりがあるのかもしれないな。
流石にこれは俺だけでは決められないのでラックを呼ぶ。
「どうしたの?」
「進化先についてだ」
「ご主人様の好きに決めて良いの」
「いや、数が多くてな…」
ざっと説明した。属性と人種か精霊種かを。
「狸人(妖精種)!」
……即答された。まあ…予想出来たしな。まあいいか。
それに他の選択肢は属性が決まっているから悩ましいし、エルフになったら風は得意だけど他の属性は苦手とかになりそうだしな。特化型が悪いわけではないが選びにくいか。その点、狸人(妖精種)は俺と同じ種族…似た種族だし、特定の属性については書いてないから偏りは少ないだろう。…多分。
まあ聞いておいて今更俺が悩んでも仕方ないか。
「んじゃ妖精種の狸人にするぞ?どんな属性が得意とか書いてないからどうなるかわからんがいいんだな?」
「問題ないの!ご主人様と同じならきっと強くなれるの!」
それで弱い種族だったら申し訳なくなるんだが…まあいい。
「それとクー太とランから嫉妬されるだろうから頑張れよ」
「あっ…。ちょ、ちょっと待つの!一度話を通しておいた方がいいの!事後報告とかランちゃんに文句言われるの!」
「………事前に報告しても同じじゃないか?てか、駄目とか言われないか?」
「い、言われそうなの…」
「なら諦めて事後報告頑張れ?」
「わ、わかったの…」
「んじゃ進化させるぞ」
ポチッと。
進化の光が収まると狸の耳も尻尾を生やしたラックがいた。可愛らしい顔と白い髪は変わらず、白い狸の耳と尻尾が生えたラックがいた。髪色に合わせた耳と尻尾なんだな…。
うん、俺の狸耳と狸尻尾姿より、見た目が女で顔も整ってるラックの方が圧倒的に似合うな。
「…可愛いぞ」
「本当なの?それは嬉しいの!」
耳と尻尾を触りながら顔を綻ばせるラック。うん、可愛いけどクー太とランが後ろで目を見開いてるから頑張れよ?
俺は少し離れたところで座り込んでるエリンのところへそそくさ移動する。避難避難っと。
「きゃーー!なのー!」
クー太とランに飛びかかられたラックの悲鳴が聞こえたが気にしない。どうせ後でクー太とランに自分達も狸人になりたいとか言われそうだし、今はラックに頑張ってもらおう。
「エリン。どうした?皆のとこに行かないのか?」
『星を眺めていました。森にいた時は考えたことも、きっと考えられるほどの自我もなかったと思うんですが、主様に仲間にしてもらってこうやって色んな物を見るのが楽しくて。空や星、月。後は人間の街。人間は全然いないのでいる時の街並みも見てみたいですが、今の街でも僕にとったら凄く新鮮で…皆と話すのも楽しいけど、こうやって景色眺めるのが楽しくて』
「そうか」
エリンの隣に腰を下ろす。
「まあ俺の旅についてくればこれからも見れるさ。それに旅について来なくても拠点に行けばたくさんの仲間もいるし、俺の親も他の人間もいる。それに拠点の近くにも街があるしな。
お前たち魔物の寿命はわからないがすぐ死ぬことはないんだ。これからも色々見て回ったらいい」
『はい。ありがとうございます』
邪魔するのはあれだし…エリンの進化は後にするか?
『えっと…進化、ですよね?お願いします』
「…すまんな。じゃあ進化させるな」
『はい。気にしないでください。進化出来るのは楽しみでしたから』
「ならよかった」
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○エリンの進化先を選んでください。
・化け茸
・黒菌
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次いで詳細を見てみると化け茸は今より大きくなるようだ。直接戦闘が今よりできるようになるのかもしれないが、正直これ以上大きくなられるとリーフの背が定員オーバーだな。
そして黒菌。おそらく変異体の進化先だと思う。黒いし。化け茸は正当進化、黒菌は亜種固有進化だろう。そして説明には小さくなり身体能力は低下するが魔力が上昇するとある。
エリンが魔法が使えるのかは知らないが、胞子を飛ばすのにも魔力を使うようだから胞子系スキルに特化するのだと思う。
まあ小さくなるならそっちの方が助かるんだが…エリンはどうだろうか?
「エリンは身体が大きくなって直接戦闘ができるかもしれないのと、小さくなって魔力に優れるのどっちがいい?」
『僕も主様にお任せします。…とはいえどちらが良いかと言われたら…魔力です。多分身体が大きくなっても直接戦う力は皆には劣ります。なのでスキルを今より有効に使えるならそっちの方がいいです…』
「ならそうしようか」
『ありがとうございます』
役に立ちたいと思って発言してくれているエリンに小さくなってくれるなら助かる、なんて言えないな…。
「んじゃ進化させるな」
そしてエリンが光に包まれていく。




