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閑話 父

 

 中野 誠司(父)side


 マコトが旅行してくると言って数日が経った。

 あいつは平然と、それどころか嬉々としてこの狂った世界に適応していた。いや、初めはきっと戸惑ったり、色んなことがあったからこそこの世界に適応したのだろう。そして今現在それを楽しめているのは凄い。


 俺はここ何日も力を身につけようと戦いに明け暮れていても未だにレベル14…。全然上がらない。いや、上がっているんだが息子のレベルと比べると、な…。

 だがまあ、戦闘に関しては昔とったなんとやら。拳術と剣術があった上にマコトのおかげで蛇や狼とは戦えるようになった。しかしまだ複数相手だと厳しいため毎回護衛としてマコトの魔物達がついてきてもらっているが…。


 息子に追いつきたい、ルリ達を守りたい。そう思ってほぼ丸一日レベル上げとスキルのレベルを上げる為に素振りやらなんやらしている。だが家事をルリやメイちゃん、ミミちゃんに任せっきりにしてしまっているので、流石に家のことを全くしないのは申し訳なくなり手伝おうと思ったんだが…邪魔と言われてしまった…。だから今日も朝食を食べたら小屋を追い出され、朝から訓練だ。


 比べても仕方のないことだとはわかっているのだが、マコトはもうレベル50になり進化をし、その上レベルが40とかなのだ。どうやって追いつけばいいのだろうか…。

 追いつけるかわからないほど圧倒的に強く、嬉々としてこの世界を楽しんでいる息子だがやはり心配ではある。今現在マコトの庇護下にいる俺が言えたことではないが、あいつはは少し自惚れ…いや油断か?楽観的過ぎる気がして心配だ。

 小さな頃からあまり手は掛からない子だったが、何があっても「まあいいか」「なんとかなるさ」と言って済ますのだ。実際今までなんとかなっているし、口ではそう言っていても内心色んなことを考えているのかもしれないが内心を察してやれない俺はどうしても不安にはなる。


 今回も突然旅行してくると言い出した…。確かに強いのはわかっている。仲間がたくさん居るのも、その仲間が俺とは比べ物にならないくらいに強いのも。ただ…俺がこれだけ一週間はレベル上げに専念していてもレベル15にならないのだ。マコトはきっと気が触れてしまうほど濃密な時間をこの森で過ごしたのではないだろうかと更に不安になる。

 そして、だからこそ余計に心配になる。こんな狂った世界になる前と変わらない態度、性格、表情…マコトは大丈夫なのだろうか…。

 考えがまとまらない。心配と不安、自身の不甲斐なさが頭をぐるぐると回る。


「あなた」


「…ルリか。どうした?」


「そんなに心配?」


「……顔に出てたか?」


「難しい顔をしてたわよ」


「そうか…。心配にもなるだろう。マコトに助けられ守られここまで来て、ここにきてもやっぱり守られながら訓練とレベル上げをして、余計に思うんだ。あいつはあんなに戦いに明け暮れ、あんなにも強くなっても何も変わらない。心が麻痺してしまっているんではないのか?我慢してるんじゃあないのか?油断していつか大怪我するのではないか?あいつを支え、守りたい、とは思うがそれ以前に重荷になっていやしないかと。そんなことばかり考えてしまうのも仕方ないだろう」


「大丈夫よ」


 俺の悩みに対してルリは大丈夫の一言。


「大丈夫って…。マコトの楽観的というかのんびりしたところが心配なんだよ。性格はお前似だな…」


「別に楽観的…楽観視しているわけではないわよ?私はマコトを信じてるし、あの子は適当なところも楽観的なとこもあるけど馬鹿ではないんだから」


「そうかもしれないが…」


「マコトは別に戦いばかりの殺伐とした生活を我慢してるわけでも、心が麻痺しているわけでも、何も考えてないわけでもないわよ?きっとね。

 それに心を許せる仲間がたくさんいるんだからそんな心配は不要よ。確かにテイムって能力がなくて、独りぼっちで戦い続けていたらいくらあの子でも壊れてしまったり、あなたのいう通り麻痺していたかもしれないけどそうじゃないでしょう?だから大丈夫」


「うむ…」


 そうかもしれないが…。


「まったく。そんな辛気臭い顔してないで訓練してきたらどう?いくら言っても心配になるのは変わらないんでしょう?ならマコトの負担が少しでも減るように頑張ればいいじゃない。私もマコトの負担にならないようにレベルは少しでも上げるし、マコトが帰ってきた時のためにここでよ生活が少しでも快適になるように頑張るから」


 そうだな…。心配してても仕方ない、か。なんでこうも女ってのはしっかりしているんだろうな…。


「じゃあレベル上げに行ってくる。そういえばメイちゃんとミミちゃんは?」


「彼女達はもう外に行ったわよ。レベル上げと食べられそうな野草や木の実を探してくる、ってね」


 本当、女はしっかりしてる…俺もしっかりしないとな。


「そうか…。じゃあ行ってくる」


「はいはい。気をつけていってらっしゃい」


 呆れたように追い出されたのでオーガのシュキと狼のラグ、赤蛇のセルパを連れてレベル上げに向かう。


 そういえば…ステータスオープン。


 ————————————————————


 個体名【中野 誠司】

 種族【普人】

 職業【未設定】

 性別【男】

 状態【 】

 Lv【14】

 ・基礎スキル:【拳術lv3】【剣術lv1】

 【精神耐性(大)lv1】【毒耐性(中)lv2】

 【木工lv2】【建築lv2】【指揮lv2】

 【土球lv2】


 ・種族スキル:【無特化】


 ・特殊スキル: 【ステータス鑑定】


 ・称号: 【適応する者】


 ————————————————————


 俺も職業決めないといけないよな。

 武闘家、建築士、指揮官、下級土魔法士ってのがあるんだが…いや、サラリーマンとかもあるんだけどここでの生活で必要のない職についても仕方ないから選択肢から除外だ。

 本当は武闘家を選ぼうと思ったんだが職業を設定せずに過ごしていたら状況がどんどん変わっていってまだ決めかねているのだ。

 マコトの魔物三百匹以上を預かるようになったから指揮官も有用だし、魔法士は正直憧れる。いい歳してそんなこと言ったらルリに揶揄われるから言わんが。

 後は建築士だな。ルリ達がもっと過ごしやすいよう今の小屋をもっと住みやすくしたり、新たに家を建てたりするならこの職業の方がいいのだろう。

 木や鉄などの資材を魔力を込めることで形を変えたりすることができるようになるようだからかなりいい職業だ。だが…やはり戦闘職じゃないとマコトに負担をかけてしまうかもしれんしな…。

 とりあえず夜にルリにも相談してみよう。


 その夜何故か夕食が豪華だった。ここに来てから大抵は節約のためにルリが作ったパンと缶詰だ。今日もそれは変わらなかったが缶詰の量が多かったし、食後にドーナツが出て来たし、「食後にはたまには飲んでいいわよ」ってビールまで出て来た。


 何故…?こんなのあったか…?と思ったらルリが昼間に街まで行ったらしい。

 口をつけていたビールを吹いてしまい怒られたがそれどころではなかった。

 何もなかったのか?怪我は?一人で行ったのか?

 無事に帰って来ているのだから平気に決まっているのに質問攻めにし、更に怒られてしまった。

 しつこいとビールを没収するとまで言われとりあえず無事なのだから、と納得しビールを守った。


 その後布団に入ってから職業について相談するのを忘れていたことを思い出した。


「明日相談するか…」


 それと明日もビールを出してくれるよう頼んでみよう…。





次話は母:ルリの視点予定です。




○魔物特徴


シュキ(朱鬼) オーガ 体高180cm


ラグ 森狼 体高65cm


セルパ 大赤蛇 体長100cm





現在こちらも執筆中です。読んで頂けたら嬉しいです!


迷宮妖精と巡る迷宮探索

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