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 魚と亀のお守りを霊狸達に任せ、クロ、フェリ、クシハを連れて探索に出る。


 今回も誰も向かっていない方へ進んで行き道中見かける魔物はやはりゴブリンと狼がメインだ。魔狼、森狼は野生の本能かなんかで力の差がわかるのか俺かフェリが狼の匂いを察知した瞬間にはすでに反対方向へ逃げ出している。

 ゴブリンは積極的に襲っては来ないが俺らが接近するまで大抵気が付かないのでクシハの経験値になってもらっている。


 歩く事三十分。

 伸び切った草が不自然に動く場所を見つけたので駆けつけてみると二匹…二体のキノコが戯れあっていた。


「こいつら…俺たちに気がついてないのか?気がついてても逃げるっていう危機管理能力とか危険察知能力とかがないのか…?」


 喋っても戯れあいをやめないキノコを見ているとキノコの柄と傘がお別れした。


「キュッ!」


 やったのはクシハだ。もう少し観察していたかったが、クシハはきっと俺のためを思ってやったのだろうし、キノコはたくさんいるみたいだからいいだろう。


「ありがとうな」


 てことで褒めておく。

 キノコがここら辺にいるって認識してから辺りを見回すと草が不自然に動く場所がいくつもあったので一番近いところに向かうとキノコは円を描くように一体で走り回ってた。とりあえず捕まえてみると手の中で傘を揺らし…暴れてるんだよな?これ。正直傘の部分だけが揺れていて玩具のようだ…。


「言ってることは…わからないよな…」


『ご主人様周りにいるやつ捕まえる?』


『…生捕り?』


「いや、倒していい。んでここに持ってきてくれるか?」


 俺たちがいる所の草を踏み潰し、集めてくるよう頼む。


「クシハは…俺と一緒な」


「キュ?」


 自分は狩りに行かなくていいの?って言っているのか、なに?って言っているのか判別つかないのでもう一度繰り返し言う。


 にしてもこのキノコは自我ってものがほとんど無さそうだよな…。テイムしてみればわかるかもしれないが…テイムしても意思疎通できずフラフラと何処かに行きそうだ。

 蜘蛛の時のラックも意思疎通できなかったがそれは俺に原因があったし、俺がラックの声を聞き取れなかっただけでラックはちゃんと理解して行動していたからな。こいつらとは違うだろう。


 手の中にいるキノコをいろんな角度から見たり突いたりしてみたが反応は変わらず。

 意外と可愛らしいのだが…意思疎通できないなら食用かな…。

 そうこうしている間にもフェリとクロがキノコを持ってきては俺の足元に置いてまた狩りに行く、というのを繰り返している。

 俺も集めようか。


 数十分後。キノコが全然見つからなくなった。


『ここにはもうない』


『うん…』


「なら移動しようか。クー太たちも集めているからこれ以上集めなくて良い気がするが…。まあ見つけたら狩ろうか」


 それから一時間程歩いたがキノコは全然居らず、狼ばかりになった。

 一応縄張りとかあるのだろうか?


『…待って』


「どうした?」


 フェリに止められたがフェリは匂いを嗅いで反応しない。俺も匂いを嗅いでみるが、先程倒した狼の匂いや血の匂い、草木の匂い、くらいしかわからない。


『ん…。やっぱりなんか違う…こっち』


 フェリはそういうなり先に進むのではなく進んできた方。つまりは斜め後ろの方に向かって行く。


「どうしたんだ?」


『…フィーア達に近い匂い。普通の木と違う』


 人面樹の匂い?あいつら独特の匂いでもあるのか?

 フェリの後についていくと視線の先に黒い木が見えた。


「あれか。人面樹か?」


『…多分?』


 魔圧をいつでも放てるように気を配りながら近づいて行くと、黒い木の周りにはキノコが大量に居た。木に登ってたり、周りで駆け回っているキノコが大量に。


「共生してるのか?でもさっきの場所には黒い木はいなかったよ、な!?」


 近づいて行ったら黒い木から葉っぱが矢のように飛んできたので咄嗟に避ける。

 クシハは抱えているので問題ない。フェリとクロも普通に避けていた。


「攻撃か?」


 あの黒い木は亜種ってわけではないよな?他の子達も見たって言ってたし。人面樹の進化系だろうか?また別の種族かもしれないが…。


「倒すか。キノコが逃げるとは思えないが一応警戒しててくれ。黒い木を倒したらあそこにいるキノコを狩ろう」


 人面樹よりも気持ち太い幹なので魔力を多めに使い風刃を放ち切り倒す。


 スパッ。スドンッ。って感じであっさりと終わった。まあこんなものか。フェリとクロは木が倒れた瞬間飛び出しキノコを狩る。クシハも腕の中で暴れるので離してやるとクロ達に混ざりキノコを倒している。


「クロ!こいつの魔石はどこだ?」


『切り口より少し上』


 少し上…と言われたので素手で木の皮を剥がしナイフでほじると魔石がすぐ出てきた。

 一体くらいテイムしておきたいとは思うが…木は移動速度がそんな速くないからな…。転移魔法でもあれば良いんだが…霊狸を召喚して使った魔力が回復したら練習してみるか?


『ご主人様。ここの草。魔物』


 クロが言うには黒い木があった場所。今は切り株になっている周りにある草が全て魔物だと言う。


「そう…なのか?ちょっと変わった草くらいにしか見えないが…」


『でも根っこのとこに魔石がある』


「へぇ…。生まれたてとかかね?別に動かないし」


『そうかも?』


「まあこいつらは放置でいいよ。土をひっくり返してまで魔石を集めることもないさ。経験値なんてほとんどなさそうだし」


『わかった』


「キュッキュッキュッ!!」


「ん?クシハどうした?」


 クシハが何かを加えて駆けてきた。黒い…キノコ?傘が黒く白のの斑点がある。そこらにたくさんいるキノコはほとんど赤く白の斑点なのだが…。


「クシハと模様が似てるな。だから生きたまま持ってきたのか?」


 クシハが首を振り、顔を突き出すようにしてキノコあげる!って仕草をするので手を出すとキノコを咥えたまま手に触れるか触れないくらいのとこで止まる。


「ん?逃げるから捕まえておけってことか…?」


「キュ」


 正解らしい。キノコを掴むとクシハは口を離した。

 黒いキノコは手足も使ってバタバタと暴れる。どうも赤いキノコとは様子が違う。

 クシハは黒白キノコを渡して満足したのかまたキノコ狩りに行ったので魔圧を弱めに使ってみることにする。


「動くな」


 ピタッ。と動くのをやめた黒白キノコ。

 こいつもしかして…。


「俺の言っていること理解してるか?」


 聞いてみるが動かないまま。亜種で知能も高いなら…って思ったがそうでもないのか?


「あー。もう!共有解除!テイム!」


 《黒白キノコが仲間になりたそうにしています。テイムしますか?》

【Yes or No】


 あー。我慢できなかった…。まあ良い。これでクシハとも話せるようになるし…。

 テイムするよ。


 《黒白キノコが仲間になりました。テイムした魔物に名前をつけてください》


 黒白…クシハ…はないな。エリンギっぽいからエリン…で良いか。


「名前はエリンな。お前話せるか?」


『話せるから離してください!』


 おお。ダジャレ…じゃなく普通に離して欲しいんだな。てことで解放してやる。


『た、助かった…』


 なんかキノコが地面に膝…じゃなく石突き部分だな。それと手をついてorzみたいな格好をしている。

 ついでに近くでうろちょろしていた赤白キノコを捕まえテイムを念じる。


 パチッ。


「え…?」


 弾かれた…?警戒していてテイム出来ないとか、心を許してない、屈服してないからテイム出来ないとかではない。以前クレナイも一回念じただけではテイム出来なかったがこんな弾かれた感覚はなかった。


『僕はどうなったのですか?貴方と繋がりを感じるのですが…。それに意識がはっきりしますし…貴方の言葉もわかるのですが…』


 ん?テイムされたらなんとなく理解出来るんじゃなかったのか?

 こちらを見上げるように全体を逸らし上を向いているのでしゃがんで出来るだけ視線を合わせてやる。目があるのかは知らないが………って目があるんだが。黒い傘ではなく白い柄の部分に黒いビーズのような物が二つ。これ目だよな…?


「テイムしたんだが…テイムってわかるか?」


 今度は傘を横に傾けた。わからないってことだろうが…可愛いななんか…。

 その後色々説明してやった。テイムっていう主従関係になったこと。テイムされたことによって知能が上がったと思われること。更には俺が人間ってことすら知らなかった。オーガとゴブリンのハーフ…赤いのと緑ののハーフですかって聞かれた。全く別の種族だ。ってことを話し色々教えてやった。

 気がついたらフェリ、クロ、クシハの三匹が俺の横でキノコ…エリンを観察していた。


「とりあえずいいか?」


『はい!ありがとうございます。貴方が僕の新しい主様ってことですね』


「新しい?」


『あ、はい。僕らはあの木から生まれたので元々はあの黒い木が主…のようなものでした』


「あぁ…。すまないな。木もキノコもお前以外はもう生き残ってない…」


 あの木から生まれたのか…。生木…黒い人面樹っぽいのからでもキノコは繁殖するのだろうか…?それとも霊狸みたいな感じで生まれたのだろうか?


『あ、いえ!気にしないでください!主様に対するパスのようなものも、横にいる方々に対する仲間意識といったものも先程までは持っていませんでしたし、そんなこと考えたこともなかったので…』


「でも多少は自我があったんだよな?聞きたいんだがこの赤いキノコ達と意思疎通できるか?」


『…無理かと思います。元主様も僕もこうやって会話はできませんでしたが、多少の意識…自我…のようなものはありました。けど赤いやつらは多分そういった自我が全くないかと…。ただ走り回るだけでしたし』


「そうなのか?だけど追いかけっことか同じキノコ同士戦っているような行動はしていたぞ?」


『あれは多分緑の…ゴブリンでしたっけ?ゴブリンの行動を真似てただけだと思います。特に意味はない行動だったと思います』


「もう一つ。お前達は繁殖するのか?胞子を飛ばすのか交尾するのか知らないが」


『僕は胞子を飛ばして仲間を増やしていましたが、僕以外は特に何も。ゴブリンの真似をするか、辺りを走り回るか、くらいでした』


 そうなのか…。赤白キノコは赤ん坊みたいなものなのだろうか?自我や意識が極端に薄く、生存本能も生殖本能もない。テイムができなかった理由はそれか?俺を認識してパスを構築するほどの知能がなく失敗した、と。その可能性は高いかもな…。それでこの黒白キノコは他のキノコよりも知能が高く、生存本能もある。魔物自体テイムされる前はそんなに知能が高くはないが、赤白キノコはテイムに必要な最低限の知能もなかった、ってことか。なら今後も食用だな。


「俺らは赤白キノコを食べるが…エリン的には問題ないか?」


『はい。特に気にしません』


 ならいいか。さて、次はクシハだな!



誤字報告ありがとうございます!



○魔物特徴



クー太 妖狸(五尾) 最小体長10〜15cm

         最大体長約400cm

         茶色一部白


ラン 妖狸(五尾) 最小体長10〜15cm

        最大体長約400cm

        茶色一部白


クレナイ 七歩蛇 体長約1500cm

         赤色


ハク ヴラウヴォルフ 体高約200cm

           体長約400cm

           白銀色


アキ 巨大森栗鼠 体長約15cm

         赤茶色一部緑縞


クロ 大黒毒蛇 体長約150cm 

        黒色


フェリ 大森鼬鼠 体長10〜15cm

         濃茶色


ラック 人妖精 体長約10cm

        白色(髪色)


リーフ 鷲獅子 体長約500cm

       体高約300cm

       緑色一部白


ドライ 闇鼠 体調約15cm

       黒色







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