閑話 クレナイ
118話とクー太閑話と内容が被りますがクレナイ目線も書いておきたかったので。
次話は本編、近いうちに他の魔物の閑話予定です。
各々が主様に役目をもらい移動を開始します。
私はクー太殿と一緒です。
『ねぇねぇクレナイー』
キノコを探して移動をしていたらクー太殿に呼ばれました。
「どうされましたか?」
『クレナイはご主人さまみたいな物をたくさん入れられる魔法使えないのー?』
亜空庫のことですね。一度練習したことがありますが何も発動しませんでした。
「練習したことはありますができませんでしたね。クー太殿は?」
『ボクも無理だったー。でもあれがあればキノコたくさん集められるよねー?使いたいなぁー』
「主様が言うには魔法はイメージが大切とのことです。私達は物をたくさん入れられる魔法ってイメージが足りないのでしょう。
物をどうやって入れるか、どこに入れるか、どのように保存するか。亜空間とは何か。そういった知識が足りないのでしょう。
今度主様にご指導していただけるようお願いしてみましょうか」
そう。イメージと知識が足りないのでしょう。後は魔力も足りないのかもしれませんが。
主様の魔力量…いえ、身体能力やスキルの覚える速度も尋常ではないと思います。比較対象が主様のご両親と主様が助けた女性二人しかいないのではっきりとは言えないのですが…凄いと思います。
主様が本気で鍛錬をしたら私達魔物が持つスキルや魔法、更にその系統の技術全てを短時間で覚えられるのではないでしょうか?
私達とパスが繋がっているからだとは思うのですが、それだけではない気がします。
『うん!教えてもらおー!』
クー太殿は本当に主様が好きなのですね。いえ、慕っていない魔物はいないとは思いますが。
『あ!動く草がいるよー』
「本当ですね。ですがキノコはいないようです」
『ご主人さまが探してたしこれも一つ持って行ってみるー?』
「そうですね…ですが主様は主様で探すでしょうし、我々はキノコだけにしませんか?」
『んー。そっか。そうするー』
主様と会った時に必要か聞いて必要ならここに取りにくればいいでしょう。
それにしてもキノコも草も魔石を持っていますが…不思議な生き物ですね。なんか普通の魔物とは違う気がするのです…。それに今まで動物以外の魔物は見たことなかったのですが…。
『そういえばクレナイはなんでそんな話し方なのー?』
考え事をしていたらクー太殿にそんなことを聞かれました。話し方、ですか。
「そんな話し方、とは?」
『ボクもねランになんでそんな間延び?した話し方するんだーって言われるの。クレナイも凄く畏まった?固い話し方?でしょー?なんでかなーって』
ああ。そういうことですか。
…考えてもわかりませんね。自我がはっきりと芽生えた時からこの話し方でしたから…生まれつき、というやつでしょうか?
「なんででしょう?意識したことはありませんでしたね」
『そっかー。ならいっかー』
ふふ。クー太殿は主様と似てますね。
主様も口癖のように、まあいいか。と言いますし。主様は譲れない部分、芯は持っていますがそれ以外に関しての物事にはあまり頓着しない性格ですし。
『キノコも魔物もいないねー?』
「一応この草も魔物ですが…確かにいませんね。もう少し奥まで行きましょう」
『うん。行こうー!』
クー太殿が走り始め、どんどんスピードを上げていきます。ついて行くことはできますが結構大変です。私はあまり足が速くないのでクー太殿やラン殿、ハク殿が本気で走ったら蛇の身体でもギリギリ付いていけるといったレベルです。それも速いわけではなく、皆より身体が大きいのでその分一つの動作で移動できる距離が大きいからついていけているだけなので人型では無理ですね。
主様…は正直比べ物になりませんね。主様が本気で巨大な鳥と戦っているのを観ましたが、主様が苦労されているのに思わず見入ってしまいました。速度も力も魔法もどれを取ってもこの方は誰よりも強く、またもっと強くなる方だと思ったものです。
さて…あまりクー太殿が速度を出すと大変なのでお止めしましょうか。
「クー太殿。そんな急がなくても時間はまだまだありますよ」
『はーい』
速度を緩め駆け足程度になってくれたので並走してついていきます。
『キノコの匂い!あと魔物も!…なんの魔物だろー?』
ある程度移動するとクー太殿が声を上げたので私もクー太殿が見ている方向を注視すると魔石の反応がありました。キノコと思われる普通の魔物よりも小さな魔石の反応。それとその側にいる大きな魔物の反応を見つけたのでそこに向かいます。
『あ!キノコ食べてるー!だめー!』
そこで見たのは食べられても逃げる素振りを見せずウロウロとするキノコとそれを食べているイノシシでした。イノシシといっても物凄く大きいですが…。主様がクー太殿は最大四メートルだと言っていたので今のクー太殿より少しだけ小さいこのイノシシは三メートル以上はあるでしょう。
まあ魔力と雰囲気からしてアキでも余裕…いえ、いくらアキが少々自堕落なとこがあり、少々間の抜けたところがあってもあの子も私達と同じく初めのころから主様と行動を共にしていますし、普段はあまり戦う姿を見ませんが、あれでも主様の魔物としては上位に位置するくらい強いのでしたね。
そうですね。私の配下という扱いにして頂いているアカイチ達と同じくらいの強さでしょうか。
「イノシシですか。まああのキノコは諦めましょう。それより倒して主様の元へ持っていきますか?」
『んー。どうしよう?殺して放っておいたら消えちゃうし美味しくなくなっちゃうよねー?』
クー太殿は幼くともしっかりと主様が話した内容、漏らした言葉を覚えているんですね。……といっても私は生まれてそんな経っていないので年齢でも主様に仕えたのも後輩ですが。
「ええ。そうですね。なので食べるようなら主様の元へ持っていきましょうか」
『うん!そうするー』
クー太殿がイノシシの頭を一瞬で刎ねたので人化を解いてイノシシに巻き付き首を下にします。血抜きをしなければいけませんからね。
『??クレナイどうしたのー?』
『主様に前日聞いたのですが、動物は殺したらすぐ血を抜いておいた方がいいらしいです。なのでこうやって吊り上げているのです』
『そっかー。美味しくなるのー?』
『らしいですよ?魔物は食べたことないからまだわからないと言っていましたが』
ちゃんと処理して調理した魔物は私も食べたことはありませんが…いえ、キノコは調理して食べましたね。
クー太殿は当初の目的であるキノコを捕まえ始めました。風刃で傘を飛ばし、手を器用に使って柄と傘を外したりと。
『クレナイー。鞄貸してー』
『今手が離せないのでキノコを纏めて置いておいていただけますか?後ほど人化して鞄に詰めますので』
『わかったー。なら少しキノコ集めてくるねー』
『はい。お願いします』
クー太殿が草木で見えなくなったと思ったらキノコを咥えて戻ってきて、それを置いたと思ったらまた奥に行きキノコを置きに来て、と何度かやっているのを眺めている間にイノシシから血が出なくなりました。
イノシシを置いて人化します。
「クー太殿、終わりました。鞄に詰めますね」
『お願いー』
キノコを詰めていきます。なんとかすべて詰めることができましたが、二十個ほどで鞄がパンパンになってしまいますね。
「この鞄ではあまりたくさんは集められませんね…」
『だねー…ご主人さまに相談してみよー!』
「そうしましょうか。それではこの鞄はクー太殿が持っていてください。私は蛇の姿でこのイノシシを運びますから」
クー太殿の首に鞄を引っ掛け移動を開始します。
クー太殿は先輩ですが、一方弟のような…主様といる時は顕著ですが、行動の端々に楽しい、嬉しいって気持ちが表れていて、主様に甘えたりしているところを見ると可愛らしいと思います。
主様の言う変革された世界。その変革前と変革後に生まれた私達はきっと成長の仕方が違うのでしょう。
変革前に生まれた魔物…いえ、変革時に魔物になったんでしたね。
変革前から生きていたクー太殿、ラン殿、アキ、フェリ殿、ドライ殿。
変革後に生まれた私、ハク殿、クロ殿、ラック殿、リーフ殿。
拠点にいる他の子達も含めますが、変革前にルーツを持つ魔物はその心がゆっくりと成長し、変革後にルーツを持つ魔物は急速に成長する傾向がある気がします。
生まれた時からある程度成熟している魔物もいればビャクヤ殿のように舌足らずで少し幼い魔物もいますが、数日で舌足らずなのは無くなりますし。
変革前、変革後。または通常の母体から生まれたか、魔物から生まれたか、魔素から生まれたか。それによって変わるのでしょうね。不思議なものです。
『あれー?』
クー太殿が主様を見つけたようですね。
私も主様の魔力を感じ取れます。ですが…ある程度時間が経っているのにまだこちらにいたのですね。
『やっぱりご主人さまだー。どうしたんだろー?ご主人さまー!イノシシさんー!』
「クー太…?クレナイもどうしたんだ?」
主様は少し目を見開いて驚いているようですね。まあこんなすぐに戻って来ればそうでしょう。私も蛇の姿になっていますし。
『イノシシさんだよー』
クー太殿が簡潔に告げるので補足します。
『ただいま戻りました。イノシシを倒したので主様にお渡ししようと思って戻ってきました』
「お、おお。でかくね…?…いや、ありがとう。そこに置いておいてくれ」
『はい』
『あとキノコもー』
「ありがとう。これはしまっておくな」
『あとねーこの鞄だとすぐ一杯になっちゃうからどうしようー?』
「あー…やっぱり小さかったか。どうするかなー…」
主様が悩まれています。基本的に私達は魔石、または主様から溢れる魔力、パスを通じて流れる魔力があれば食事が必要ありませんからね。主様も最近では食事は簡単に済ますか魔石を食すだけになっていますから食料を調達する予定はなかったので悩まれるのは当然ですね。
「霊狸をお前達につけるからそれを連れて行って、キノコを運ばせたらどうだ?あんまり能力は高くないが集団で移動させれば大丈夫だろ」
霊狸…主様が進化した時に覚えたという召喚魔法のことですね。確かに運び手が増えればたくさんの物を運べるでしょう。ただ霊狸一匹につき数個程度なので召喚された者達は大変でしょうが…。
『わかったー』
そして主様は自身の毛先を切り大量の透明な狸を召喚しました。
これほどの数を召喚できるとは…。切り落とした髪の毛は微々たるもの…なのに何十匹も…。壮観ですね。
流石にないとは思いますが、主様が髪の毛を全て切るようなことがあれば…。
いえ、それはないでしょう。おそらく…。ですがそんなことがあったら何億…いえ、数えるのが不可能なほどの狸が…。一瞬で世界征服できそうですね…。
「クー太とクレナイについて行って陽が暮れるまで運搬作業をしてくれ。陽が暮れるまで顕現してられるか?」
『『『『『『『無理です!』』』』』』』
「……どこのくらい顕現してられる?」
『『『『『『『お昼くらいまでだと思います!』』』』』』』
あぁ…やはり召喚に際して時間等の制限はあるのですね。それがなければこの森を一瞬で征服することも可能でしょうね…。さすが主様です。
ただ召喚できるのは狸だけなのでしょうか?私と同種の蛇も…と思ってしまいます。
「ならそれまで頼んだ」
『『『『『『『はい!』』』』』』』
『よろしくー!』
『よろしくお願いしますね』
『『『『『『『はい!』』』』』』』
「じゃあ行っておいで。お昼くらいに俺もここで待ってるからそいつらが消えたら新しく出すよ」
『はーい。頑張ってキノコ取ってくるよー』
「それでは失礼します」
「おう」
「そういえば主様。動く草も見つけたのですが取って来た方がよろしいでしょうか?」
クー太殿が霊狸達と話しているので先程聞こうと思っていたことを聞いてみます。
「いや、いいよ。俺も後で探索しに行くから」
「かしこまりました」
「あと別にキノコ狩りに一日使わなくていいからな?狩りしたり休んだり、好きに過ごしていいぞ」
「かしこまりました。ありがとうございます」
主様はとても優しいです。私達のことをとても想ってくれてます。そんな主様の役に立つようにキノコ狩りもレベル上げもするとしましょう。




