117 魚と手分け
自分以外のステータスを確認したが、やっぱりまだ誰も進化しないか…というかゴブリンとかばっかじゃあレベルもあんまり上がらないよな…。せめてオーガとか大猿とかを狩りたい。狼もそんなに悪くないか。
蛇、大蛇、ゴブリン、キノコ、魚なんてほとんど経験値を貰えないだろうし…。上位種がもっと出て来てくれればいいんだが…。
んで、新しいスキルは【光刃】だけだな。
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【光刃】
・光属性の魔法。刃のように薄くした光属性の魔力を放つことができる。
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まあ他の刃系魔法と似たようなものだよな。光属性ってだけで。ゾンビとかに良く効きそうだ。
ステータスの確認が終わった辺りで全員が起きた。珍しくアキも皆と同じタイミングで起きたので少し驚いた。
「よし。全員起きたな。珍しくアキも起きたし…クシハも起きたな」
『こ、これからは頑張るです!』
「キュ!」
そこら辺のこともクレナイに説教で言われたのだろうか…?
「おう。頑張れ?」
『信じてないです!?』
「いや、信じてるぞ?…三日坊主にならなきゃいいなぁ」
『が、頑張るです…』
「さて、今日はどうするか?」
『さかな獲るー!』
『後キノコね!』
まあそこは譲れないわな。大丈夫だ。俺も食べたいからな。
「オーガはどうされますか?」
「それと…動く草と黒い木を探しますか?昨日は偶然か、キノコばかりでしたので」
んー、そっちも…。オーガは見つからなかったし、同情から探して仲間に。と思ったが別に優先度は高くないしな。
『きのみも探すです!』
きのみって…アキが食べたいだけだろう……いや、きのみ採りに行かせて、ついでに果実を探して来てもらうか?
『イノシシ探す?』
『イノシシ…じゅる…』
クロとフェリはイノシシを食べたいのだろうか…?
「魚が食べたいの」
『私も魚!』
『お肉も魚もキノコも全部!』
「キュッキュー」
…うん。聞かずとも明白だったな。そしてクシハはわからん。
「了解。とりあえず魚を獲るか。雷球を撃ち込むから浮いたやつを獲って来てくれ。俺はその間にこの生簀を広くしておく。
それとクロ、フェリ、ラック、ドライは身体の大きさ的に難しいだろうし無理しなくていい。クー太とラン、アキは魚を獲りにいくなら身体の大きさ大きくしておけよ?クシハも待機な?」
『『『『『『『「わかったー(わ)(です!)(なの!)」』』』』』』』
「キュ!」
「大丈夫だと思うがクレナイとハクは一緒に獲りながらこいつらのこと見ててやってくれ」
「かしこまりました」
「はい。わかりました」
俺はとりあえず生簀を三倍ほどに広げる。とは言っても深さはそのままだ。幅を広げ、半径四メートル弱の円形の生簀ができた。まあ四角い形や星形でもできそうだったが流石にそれはやめておいた。
そして硬化し、水を入れ終わるとどんどん魚が放り込まれていく。魚を捕まえて生簀の横で待機していたからな。アキ、ハクは抱えて、クー太やラン、リーフは何匹も咥えて。もちろん殺さないように咥えて来た。そしてクレナイは人型で抱えてくるのではなく、蛇の身体に戻り、その身体を使って何匹も纏めて巻きつけて連れて来た。
「クレナイはだいぶいっぺんに持って来たな」
『はい。捕縛スキルのおかげかもしれませんが、あれくらいの大きさでも絡め取れるので、こちらの方が早く済むかと思いまして』
「ああ。ありがとう。にしても…この池はだいぶ魚がいるよな。川に繋がっているわけでもないのに…蛙とかならばいてもおかしくはないが、いないし」
『以前は川と繋がっていたのかもしれませんね』
「そうかもな」
まあこれだけ森だらけになって、草木も花も動物も変わってしまったんだ。川の流れなどの地形が以前と変わっていてもおかしくはないか。
「そういえば亀はあれから見ないな?」
『そうですね。昨夜は一応気にしていたのですが出て来ませんでしたし』
「あ。…すまんな。普段夜の警戒なんてほとんどしないから忘れてた。警戒していてくれたのか。ありがとうな」
『いえ、気にしないでください。主様をお守りすることは私のやりたい事ですので』
「いつも助かってるよ」
『ありがとうございます。それではもう少し魚を取ってきます』
「おう。頼んだ」
俺も行こうかと思ったが魚達が目を覚まして飛び跳ねて出て来たら困るから魚を見張っている。
まあ昨日放置してても問題はなかったから大丈夫だとは思うが、一応、な。それにわざわざ俺が行かなくてもすぐに結構な数が集まりそうだし。
クー太とラン、アキが一生懸命に魚を運ぶのをフェリとドライ、クシハと一緒に眺める。
クロとラックは池の縁まで行き、クー太達から一匹だけ受け取り運んでいる。クロは身体に巻き付け、ラックは小尾を持って宙を浮きながら運ぶ。
ラック達も伊達にレベルを上げてるわけでも進化しているわけでもない。身体が小さくとも力はあるので余裕で運べるため手伝っているようだ。
手伝わなくていいと言った理由は、クロの場合水の中での行動は難しいと思ったからだし、フェリ、ラック、ドライは身体のサイズの問題で一メートル、二メートル、もっと大きい魚を持つのは大変だろうと思ったからだしな。手伝ってはいけないと言うことではないので好きにさせている。
ちなみにフェリとドライの場合は、ラックのように飛べたり、クロのように絡め取って持ち上げることができず、運べるには運べるが引きずってしまうから待機をしている。
クシハはもちろん待機だ。大きさ的にも力的にも難しいからな。
そしてある程度の数を生簀に突っ込んだのでストップをかける。
「おーい。そろそろ終わりにしとけー」
そう言うとクー太達が、「え!?もう!?」みたいな反応をしたがこれ以上この生簀に詰め込んだら泥抜きどころではないだろう…もうかなりいっぱいだ。それに捌くのは俺なんだよなぁ。大変なんだが?
渋々諦めたクー太達を撫で次の予定を考える。
動くキノコ、動く草、動く黒い木、木の実もしくは果実。あとはオーガとイノシシ?全員バラけて行動できればいいのだが、キノコや木の実を集めても持って帰ってこれないだろうし…イノシシも無理だし、オーガを見つけても俺がいなきゃどうしようもないだろうし…。どうするか。
「アキは元の身体の大きさで木を登ったり木の実や果物を集められるか?」
『問題ないのです』
ふむ。アキとクレナイ、ハクなら鞄を持たせれば採取できる、か。
「フェリは【操草】で動く草を操れたりするか?」
『……わからない』
「まあ、そうだよな」
俺はとりあえず動く草と動く黒い木を見たいな。後はオーガは…もういいか。昨日探していなかったんだ。オーガが俺たちより早く移動できるとは思わないし、もう死んでるか、別の方角へ行った可能性が高い。わざわざ探すこともない…か。
「よし!ならクー太とクレナイ。ランとハク。お前達は二人一組……二匹一組でキノコ集めだ。クレナイとハクには肩がけ鞄を渡す。アキとラックも一緒に行動して木の実や食べられそうな果実があればそれを取って来てくれ。アキは俺のバックパックを背負って行け」
『んー…わかったー』
『わかったわ』
『かしこまりました』
「はい」
『頑張るです!』
「任せてなの!」
「クレナイは人型になってな」
『はい』
肩がけ鞄とバックパックの荷物を亜空庫(小)と亜空間倉庫にいれ、クレナイ、ハク、アキに渡す。
「んでリーフとドライ、クロはここで待機しててもいいが…リーフとドライはレベル上げにいくか?」
『レベル上げてくる!早く皆に追いつきたいもん』
『私もレベル上げしてきていいー?』
「行っておいで。ただ無理はしないように。それと一応リーフとドライは一緒に行動してくれ。クロはどうする?」
『ここの魚見ておいた方がいいなら待ってる』
「どっちでもいいぞ?放っておいてもまあ、問題ないだろ」
『ならついてく』
「俺に?」
『うん』
「了解」
『…私は?』
「キュ?」
「フェリとクシハも俺と行動だ。俺らは動く草と動く黒い木を見に行って、その後はイノシシを探すでもキノコ集めでも構わないし」
『ん…わかった』
「そうだ。フェリの【栽培】で草を成長させて【操草】でこの生簀の上に草を伸ばしたり生やしたりして隠せるか?一応草に水をかけとくか。肥料はないが」
『………やってみる?』
「ああ。やってみてくれ」
『わかった…』
草が風で揺れたわけでもないのにユラユラと動き始め少しずつ伸びる。ここら辺の草は邪魔だったからだいぶ短く刈ってしまって数センチだったのが十センチくらいになり、どんどん伸びていく。
『…限界』
一メートルほどまで伸びたところで止まった。
「それは魔力が?それとも成長の限界?」
『成長の。…これ以上魔力使って成長させたら枯れる…?と思う』
ふむ。魔力だけではやっぱり限界があるのだろう。土壌に水や肥料を与えたらもう少し成長するだろうか?
「了解。なら後は【操草】で隠すようにしてくれ。覆い隠すのは無理だから見え難くなればいいから」
『…ん』
ウネウネと草が踊り生簀側に先端が垂れ野ざらしより見え難くなった。
罠に使えそうだな。罠を必要とすることはないが。
「フェリありがとう。気休めだがこんなもんでいいだろう。じゃあ皆それぞれ行動してくれ。クー太達は鞄に入り切らなくなったら此処に戻って来て置いておけばいいから。満足するくらい集まったらここで休んでてもいいし、狩りに行ってもいい。陽が暮れる前には集合な」
まだ九時だし陽が暮れるまでだいぶあるが、たまには丸一日自由行動もいいだろう。
それぞれが移動を始め、俺とクロ、フェリ、クシハが残る。
「よし。俺らも行こうか」
『影の中にいる。必要なら呼んで。戦闘はする』
「了解」
『…肩乗っていい?』
「いいぞ」
俺の身体を器用に登り肩に落ち着くフェリ。そしてクシハを抱える。
「クシハもレベル上げしような」
「キュ!」
俺の撫でる手に頭を擦りつけ返事をするクシハ。この子は結構甘えん坊だよな。会話ができないから行動で示してるだけかもしれないが。
じゃあまずは動く草と動く黒い木を探しに昨日とは違うところへ行ってみるか。
誤字報告ありがとうございます!
○魔物特徴
クー太 妖狸(五尾) 最小体長10〜15cm
最大体長約400cm
茶色一部白
ラン 妖狸(五尾) 最小体長10〜15cm
最大体長約400cm
茶色一部白
クレナイ 七歩蛇 体長約1500cm
赤色
ハク ヴラウヴォルフ 体高約200cm
体長約400cm
白銀色
アキ 巨大森栗鼠 最小体長約15cm
最大体長約120cm
赤茶色一部緑縞
クロ 大黒毒蛇 体長約150cm
黒色
フェリ 大森鼬鼠 体長10〜15cm
濃茶色
ラック 人妖精 体長約10cm
白色(髪色)
リーフ 鷲獅子 体長約500cm
体高約300cm
緑色一部白
ドライ 闇鼠 体調約15cm
黒色




