108 野営1日目
走ってもいいのだが意思疎通のできない子が腕の中にいるので歩きながら行くことにした。怖がったり酔ったりしたら嫌だからな。
走らないと言うとクー太は左肩に。ランは右肩。ラックは頭。アキとフェリ、ドライは鞄の中に入ってきた。クロは影だな。お前たち歩くの嫌いなの?いやいいんだけどさ。
『いいなぁ。皆一緒で…』
「リーフ。流石にお前は俺よりも…というより俺達を乗せられるくらい大きいんだから俺に乗るのは無理だからな?」
『わかってるよぅ』
二時間近く歩いた。
その間クー太達はモモンガに話しかけ、モモンガはキュッキュ言って何か返事をしてる。
会話が成り立っているとは思えないのだが…。クー太。好きな食べ物を聞くのはいいが伝わってるのか?それに、僕は菓子パンが好きー。って…絶対伝わってないと思うぞ…。仮に言葉を理解してても菓子パンがなにかわからないだろう…。
俺は会話には参加せずずっとモモンガのことを揉み揉みしてた。
それにしてもあのコウモリもこの子も警戒心緩いよなー。俺がテイマーだから魔物に好かれやすいのか、魔石にすごい魅力があるのか、クー太達、色んな種族がいるから安心できるのかわからないが…。
「そろそろ二十二時だし…寝床作るか。枯れ草や枯れ枝探してきてくれ」
とりあえず五本程木を切り飛ばす。切り飛ばした木は細かくして亜空庫(小)に入れていく。木が倒れた瞬間腕の中のモモンガが物凄く驚いて少し震えていたがそれも少し撫でていたら落ち着いた。
地面スレスレに風刃を放ったから草も刈り取れたので草は風球の未完成版を放ち散らす。
そしてクー太達が拾ってきてくれた枯れ枝や枯れ草、そして亜空庫(小)に入れておいたお袋達が食器を持ってくるときに包むために使っていた新聞紙などの紙類を取り出し火をつける。
その後は持ってきたレジャーシートを敷き、二枚持ってきた掛け布団は一枚を敷き、一枚は身体に掛けるつもりだ。
「みんなおいで」
今日は旅の初日だからな。亜空庫から缶詰と紙皿をだし、缶詰を皿に出してやる。それとアキ用に果物の缶詰を。アメリはサバ缶の方が好きらしく、アキはナッツ、缶詰なら果物が好きらしいが、他のメンツはみんな焼き鳥の缶詰が好きらしい。後は牛肉の大和煮やコンビーフか。それらはあんま数がないからとりあえず今日は焼き鳥にする。
いくらクー太達が小さくなっていて、クレナイとハクが人型になっているとはいえ一つじゃぺろっとすぐ食べてしまうので二つ出してやる。
また街に行って調達しなきゃなぁ。
モモンガは何食べるかね?
焼き鳥と果物の缶詰を皿に持って顔の前に置いてやる。
両方をクンクンして果物の方にかぶり付いた。
『あー!それ!わたしのですー!』
ビクッ。
モモンガが、え、だめなの…?みたいな感じで見てきたので撫でてから、良いよ。と声をかけてやる。
「アキ。お前のは別に出してやるから待ってろ」
『わかったです!』
アキの分も出してやり皆で食事をする。ちなみに俺も含め付け合わせに魔石を二個ずつ。缶詰二つじゃ物足りないけど、これ以上は用意ができないから最後に魔石でお腹を満たしてね。ってことだ。
食事を終えクー太やラン、ラックが魔法について語っているのを横目に俺は横になって目蓋を閉じる。
今日も色々あった。正直毎日が濃すぎる…。たまには探索も戦闘もしないでのんびりしたいなー。なんて考えながら睡魔に身をまかす。
翌朝。
目が覚めるとまず人化を解いたクレナイが目に入り、次にハクが目に入る。クー太たちは相変わらず俺にひっついて寝ていて、今日はクロも一緒に寝ていた。
一人だけ影の中は寂しかったのかね?
それとモモンガが俺の腕を腕枕にして寝ていた。
可愛いなぁ…。
まだ皆寝ているし特に急いでやることもないので二度寝をする。このモモンガ、名前つけようかな…。名前は何が良いかな…。なんて考えながら睡魔に抗わず眠りにつく。
次目を覚めるとアキ以外は起きていた。
「すまんな。寝過ごした」
『ゆっくり寝てていいわよ?』
「いや、十分だ。アキ。起きろ」
アキの頬袋を引っ張ったりしてアキを起こし荷物を片付け準備をする。
「んじゃ今日は沼に向かおうか。その前に…お前達。このモモンガ、オスかメスどっちかわかるか?」
『メスだよー?』
『メスに決まっているじゃない』
「同族じゃないのでわからないのは仕方ないかと」
「女の子ですよ」
『ご主人!でりかしーがないです!』
『メス…』
「メスなの」
『メスの比率高いねー?』
『確かに』
「アキ。デリカシーなんて言葉どこで覚えたんだ…」
『メイちゃんが言ってたです!』
「はあ。まあいいや。とりあえずメスな。なら名前は斑…マダラ…いやメスだしな。黒白の斑…クロ、シロでクシハ?クシハにしよう。テイムしてないから正式な名前じゃないけどな。クシハよろしくな」
「キュッ!」
異存はなさそうだ。
「じゃあ行くぞー」
その後はリーフに乗り木々の上を行く。池があるのならそこには木々がないだろうからな。
十分ほど飛ぶとサークル状にポッカリと空いた場所を見つけた。周りの木々が高すぎて遠目からでは全然わからなかった。
リーフは何も言わずとも池の縁に降りてくれた。
「リーフありがとうな」
『うん!』
池を見ると緑一色で御世辞にも綺麗とは言えない。川に繋がっているわけではないから雨水などが溜まってできた場所だろうか?
水を一掬いして匂いを嗅いでみるがまあ予想通りの匂いだ。これは絶対飲めないな。飲む必要もないんだが。
『ご主人さまー!』
『ご主人様!』
ん?
呼ばれたと思って振り向くとクー太とランが風球を放つところだった。
え?何故?避けようとしたがその風球は俺に向かわず俺の足元に飛んできた。
!?
バンッ。
今なんか足元にいたか…?
『ご主人さま気をつけてー』
『変なのが噛みつこうとしてたわよ!』
「ああ。すまない。助かった。んで今のは何だ?」
「亀だったの!」
亀…?




