102 ネーミングセンス
他の子達はそんなにレベルは上がっていなかった。というか一昨日はほとんどの戦闘をクレナイとハクにやらせていたからな。
ただ…クロも【暗殺】って。クロは最近は俺の影から敵の影に転移して背後から【尾突】で攻撃してるからか?というか【影転移】反則級だな。気配察知やクロの攻撃速度に対処できる能力とかがなければヤられる。
んで、アインス達はレベル4でドライとは差が開いている。どちらかといえばアメリやビャクヤと近いレベルになっているって…どんな訓練したんだ。
「なあ。ドライ。強くなりすぎじゃないか?」
『でしょ!』
ふふん。と立ち上がって小さな身体を逸らし胸を張るドライ。俺小さい物好きだったかね?凄く可愛く見える。まあ実際可愛いのだろうが、小さい魔物ほどそう感じることが多い気がする…。まあそれはいいとしてだ。
「アインス達かネズイチ達と一緒に訓練や狩りをしてたんじゃないのか?お前だけレベルの上がりが早いが」
『アインス達とは別行動で、魔鼠達はネズイチに任せて私は一人で狩りしてたの!ご主人様について行きたいって思ってたから…他の子達より強くならないと連れて行ってもらえないと思ったし。だから猿達を一人で狩りに行ってたの!』
ドヤッ。ってしているが…。
軽く額にデコピンをする。
『あうっ』
「んな危ないことするな。確かに大勢連れて行けないからある程度の強さがなきゃ連れてはいかないが、お前たち、進化を二回している個体なら言ってくれれば連れて行ったさ。勿論全員は無理だが。だからあまり無理をするな。無事だからいいが怪我したり死んだら怒るぞ?」
『うっ…。ごめんなさい。でもでも!無理はしないで頑張っだんだよ!』
「まあ…そうだな。それは偉いし凄いぞ」
怒るだけではかわいそうだし、こいつなりに頑張って結果を出しているのは事実だから撫でて褒めてやる。
『えへへ〜。じゃあついて行っていい?』
「ああ。本当にネズイチに任せて大丈夫なんだな?」
『大丈夫!多分あの子達ももう進化できるよ』
ふむ…。今から皆のステータス見て進化させていたら夜になってしまうだろうからな…。親父に任せて行くか。
「ならわかった。その代わりアインス達に挨拶して、ネズイチとちゃんと話してこいよ」
『わかった!こっそり置いて行っちゃ嫌だからね!』
そう言ってドライは走って行った。テイムした時も思ったがあの子は俺に畏まった感じじゃないし元気だな。同行者はクー太、ラン、クレナイ、ハク、アキ、クロ、フェリ、ラック、リーフ。それとドライか。まあリーフは魔法で浮いているし、数が増えても大丈夫だろう。
さてと。準備をしようか。
準備を始める。
準備といっても大したことはしない。飯は基本魔石だ。他のもの食べたくなったら何処かで缶詰でも拝借させて頂くか、猪とか、いるかわからないが牛、豚、鶏などの魔物を狩ってそのうち食べてみよう。
魔物を殺すことはもう抵抗は無いが、殺して食べるってことに関してはあまり気が進まないが…何事も経験だ。
水は魔法で出すのでいらないので、俺の荷物は服、タオル、薄い掛け布団にレジャーシート。これらをバックパックと肩がけ鞄に。クー太達が入るから七割程度は荷物を入れておかなければならないしな。
んで他の生活必需品…歯ブラシとかトイレットペーパーとか石鹸とか。ああ。後は動物用のシャンプーとかもどこかで調達しなければ。
とにかくそういうものは道中で拝借するつもりなので空の肩がけ鞄を一つ。
あとは小麦粉と砂糖、ベーキングパウダー、小さなフライパン、包丁。包丁は魔石を取るために。他の物は以前菓子パンを作ってやると言って買ってきたのに作れてないからな。道中気が向いたら作ってやろうかと思い持っていくことにした。
まあ菓子パンというかただの甘いパンしか出来ないが、まあそれは勘弁してもらおう。牛乳やバター、卵、果物などがあればいいのだが無いしな。以前スーパーに行った時はどれも状態が良くなかったか諦めた。
空の肩がけ鞄を含め全て亜空庫(小)に突っ込んでいく。掛け布団もギリギリははいるだろうが先ほど言ったようにクー太達。主にフェリだな。あの子達が鞄に入るのにある程度柔らかいもので埋まってないと入り難いだろうからそれらは最初の予定通りバックパックともう一つの肩がけ鞄に。
準備をしていたら俺が何か食べ物を作る気があることを察したのか、うちの子達は目をキラキラさせていたので、何処かで必ず作るか調達してやらないとな。
「さて。もう十四時だが…行くか」
「行くのか」
訓練していた親父が俺の準備が整ったのを察して近づいて来た。
「行って来るよ。親父達も無理しないでくれな。あと…魔物達は基本的放置でいいから。飯はあげたいならあげてもいいが基本的魔石で大丈夫だし、魔石の配分に関してもグレイに任せているから気にしなくて大丈夫」
「わかった」
「あとは親父達の生活必需品やご飯だが…持ってきたもので当分なんとかなるか?」
「うーん。母さん!」
親父はあまりそこら辺に関してわからないらしくお袋を呼び、小屋の中にいたお袋はすぐに出てきた。
「はーい。なにかしら?」
「今マコトと話していたんだが、食べ物とか生活必需品は持ってきた物だけだとどれくらいもつ?」
「うーん。そうね。持ってきた物だけだと節約しても4人でひと月分もないと思うわ。二、三週間がいいとこでしょうね。それにほとんどが缶詰とか乾麺がでしょうし。多めに持ってきたとは言ってもたまにオーちゃんにもあげてるからね」
「オーちゃん?」
「狼のオーちゃんよ!」
「…」
俺のネーミングセンスのなさはお袋譲りか…。
「親父の魔物の名前も聞いてなかったな…。なんで名前にしたんだ?」
「おう。前にも言ったけどオーガのシュキ。朱い鬼だな。森狼はラグ。ライトグレーの頭文字取っただけだけどな。んで赤蛇はセルパだな。フランス語で蛇がセルパンって言うから“ン″をとってセルパにした」
色を名前に入れるところは同じだが…やっぱり俺はお袋譲りだな…。
「い、いい名前だな。話が逸れたがまだ大丈夫そうだね」
「ええ。それにメイちゃん達が言ってたんだけどこの森リンゴみたいな果物とかあるんでしょ?」
「え?果物?……アキ!ちょっと来てくれ」
ドングリっぽいのを齧っていたアキを呼ぶ。
『ご主人どうしたのです?』
「この森って果物とかあるのか?」
『あるのです。ただ前より少ない、美味しくない、実がなっている場所が高い。って感じなのでわざわざ取り行かないのです』
あー。そうか。実がなっているのが相当上だから気がつかなかったのか。
でも小屋の周りの木にはなかったよな。
「美味しくないって食べれる実なのか?」
『食べられたのです。渋かったのです』
アキの話を親父がお袋に通訳している。
「それなら最悪その実をなんとか取ったりすれば当分大丈夫よ。もうすぐ冬だからあまり知っている野草とかはなさそうだけど、きっと探せば少しくらいあるわ」
「ああ。それに俺がもっとレベル上がれば街まで行って缶詰取ってくることもできるし、野菜の種とか探してきて、ここに小さな畑作るのも出来るだろうしな。ただ時間が経てば経つほど、生き残ってる人たちもお店から食料を持って行くかもしれないから出来るだけ早めに行くが」
「んー。とりあえず2週間くらいで一度戻ってくるからそこら辺は心配しなくてもいいよ」
「そうか…気を遣わせて悪いな」
「まあ戻って来なかったら親父が頑張ってくれ。親父のレベルが上がっていなくても魔物達を五十匹でも連れて行けば余裕だろうしな。最悪魔物達全て連れて、お袋達も一緒に行けばいいさ」
「まあ…確かに。だがあまりお前の魔物達には頼らないように頑張るよ」
「そこらへんは任せるよ。じゃあメイ達に挨拶してそのまま行くよ」
「わかった。いつでも帰って来いよ」
「気をつけて行ってらっしゃい。無事に帰ってくるのを待ってるわよ」
「ありがとう」
親父とお袋に挨拶を済ませ、クー太達に声をかける。
これから一緒に行くメンバーと共に居残りの魔物達に声をかけながら、メイ達がいる方角へ向かう。




