93 お風呂
『ご主人様おかえりなさい』
『ご主人様ただいま戻りました。少し聞こえて来ましたがお湯を貯める穴でしたら私が地面に穴掘りましょうか?』
クー太と話していたらアインスとツヴァイが戻って来た。
「アインスとツヴァイか。土に穴掘っても水が濁ったら嫌なんでな」
『周りの土を固めれば多分大丈夫だと思いますが…』
「そうなのか?ならやってみてくれるか?場所は小屋の裏側にするか」
『はい』
小屋の裏へ移動しツヴァイが手を使い掘り始めた。時間かかりそうだなーなんて見ていたらどんどん削れていく。まるで粘土でも扱っているかのように穴ができていく。
数分後。
『こんな感じでどうでしょう?』
「ツヴァイ凄いな!穴掘りスキル持ってるだけあるな」
クー太たちと入っても余裕があるほど大きく、深さは俺の腰あたりの穴ができた。流石にクレナイは無理だろうが。あ、人型なら問題ないな。
ツヴァイを撫でてやり、お湯水球を入れてみる。
水は地面に染み込まず濁りもしなかった。
穴掘りスキル優秀だなおい。
「これ水は染みないが強く触ったりしたら流石に削れるよな?」
『そうですね…おそらくは』
「なら石でも詰めるか?あと排水できる穴が欲しいな。作れるか?」
『底の方に何処かに繋がる穴をあげればよろしいですか?』
「ああ。帰ってきてすぐこき使って悪いな」
『これくらいなんてことないですので気にしないでください!』
「そうか?ありがとうな」
感謝を込めて長めに撫でてやる。あんまりツヴァイたちと会話することはなかったがいい子だな。
『ご主人様石集めてきますか?』
「アインスも悪いな。頼めるか?俺も集めに行くから」
そのあとアインスと俺、クー太やラン、クロも影から出てきて手伝ってくれるそうなので石集めをする。
アインス達は地面に埋まってる石を掘り返したりしてもらって一か所に集める。
その後は俺が水球で汚れを落とし、表面のざらつきなどを風球で削っていき亜空間倉庫に入れる。といった感じで集めていく。
暇つぶし程度だったのだが結構時間使ってしまってるな。石集めに出る時にはすでに全員集合してきてアンたちが自己紹介というかお喋りしていた。
石をある程度集めて戻るとツヴァイと女物の服を着たハクが待っていた。
『ご主人様終わりました。川の方まで穴を掘っておきました』
「流石に早いな。ありがとう。ハクもおかえり。結構似合ってるぞ」
「ありがとうございます」
「んじゃ石を敷き詰めるんだが…ツヴァイもう少し穴広げられるか?それと側面には石を埋めたいがそのあと土を固めるのを頼む」
『かしこまりました』
「私もお手伝いしますね」
石を側面に当て殴り付けて埋め込んでいく。出来るだけ密着させて埋め込んでいくがどうしても隙間はできるのでそういうところには殴って砕いた石や岩を入れていく。
その後はツヴァイが掘り広げた底に丸めの岩を設置していく。
最後に排水用の穴に石を詰めて終わりだ。
『ご主人様土はほとんど固まったままだったのでとりあえず尖っていた石を少し削っておきましたがよかったですか?』
「助かる」
試しにお湯をある程度入れて染み込んだり、濁らないか様子見をするが大丈夫そうなのでどんどんお湯を入れていく。
「おおー!完成だな!よし早速…っと。その前にアン達はどうした?」
「ご主人様が熱心にお風呂作りしていたのでアンちゃん達は私に言伝を頼んで狩りに行きましたよ?森狼達….狩りから戻って来た子達はご主人様の姿を確認して邪魔しないようにと、少し離れたところにいると思いますよ」
「ん?そんな熱中してたか?」
「ええ、とても」
「すまんなハク。アン達にも戻って来た奴らにも悪いことしたな」
というかもう三時を回っていた。そんなにやってたか。
よく見ればクー太とランだけではなくアキにフェリ、ラック、アメリ、ビャクヤ、それにドライまでも側にいた。
「あれ?クレナイとグレイは?」
『クレナイはあっちで蛇さん達の訓練の成果を見に行くってー』
『…グレイは訓練してくるっす。って…いってたよ』
「了解。んじゃ早速入るか」
アインスとツヴァイも一緒に入れてやる。初めにお湯をかけて汚れを軽く落としてやり湯船へ。
「はぁー。気持ち良いな」
『気持ち良いー』
『そうね』
「初めて入りましたが良いものですね」
『溺れるです!ご主人離さないでくださいです!』
「いや、自力で捕まってろよ?」
「とっても気持ち良いのー」
『なかなか良いにゃ』
『はい!とても落ち着きます!』
あー。最高だな。タオル用意するの忘れたけど…まあいいか。
「中野さん〜って…ひゃぁ!?は、裸!?あ、お風呂ですか!?しかもハクちゃんも一緒!?そ、そういう関係ですか!?」
「んあ?」
メイがなんか言ってるが…そういう関係?
「あー…ハク。お前人型のままか。そのままでも構わんが狼になっておけばどうだ?んでとりあえずメイは何か用か?」
「お風呂の間はこの状態で構いませんか?お湯が溢れちゃいますし、狭いでしょうから」
「まあ、そうだな」
「えー。反応薄い…。こんな美人とお風呂に入ってその反応はどうなんですか?」
「いや。美人でもハクはハクだし。んで何の用だよ」
「なにか作業している音が無くなったので終わったのかな、と。少し様子を。それとご飯とかどうしますか?これだけの数の魔物全てのご飯の世話をしていたとは思えませんが…」
「え?お前や親父達はまだしも魔物に飯はいらんだろ?」
「え!?みんな喜んでパンとか缶詰食べますよ!?」
「いや、食べるには食べるが魔石や主の身体から溢れる魔力で大丈夫じゃないのか?」
「ご主人様。彼女達はここから移動していませんので魔石は多分持ってないかと。それとご主人様ほどの魔力なら数百匹の魔物達が魔力を摂取しても満たされますが、彼女達では魔蛇一匹のお腹を満たすことすら難しいかと」
「あー、レベル上げしてないとそんなもんなのか。なら魔石やるから魔物達にあげてくれ。そこにある鞄に適当に突っ込んであるから取ってっていいぞー」
「え、あ、ありがとうございます!中野さんはどうします?といっても缶詰とか乾パンくらいですが…」
「カップ麺とかあるか?あるならお湯出せるぞ?」
「本当ですか!?持ってきます!」
「あ、待て。タオル何枚か持ってきてくれ」
「はい!」




