91 帰宅
うっ。寒っ。
水場だからだろうか。まあもう秋だしな。眼を開けるとまだ暗かったので顔のあたりにクー太がいたのでその毛に顔を埋める。
あー。あったかい…。
なんてやってたらハクがひっついてきた。
「寒いのでしたら元の姿に戻りましょうか?この姿ではくっついても暖はあまり取れないようですし」
「別に耐えられないほどでもないし気にしなくていいぞ。というか起きてたのか。ちゃんと寝たか?」
「はい。ただクレナイさんもそうですけど私達魔物は人間のご主人様よりも比較的眠りが浅いので」
「そうなのか?クー太やアキ、アメリを見てると…」
「この子たちは…なんででしょうね?性格でしょうか」
「まあそれはあるな」
その後は一度目が覚めたせいで結局眠くならず、陽が出るまでハクとテイムしている子達のことを話して過ごした。
「あさなの!」
「うお。どうしたラック。いつもの頭に直接…パスを通して?話すんじゃなくて普通に挨拶してきて」
「ハクさんもクレナイさんも普通に喋ってたの!だからワタシも普段はパスを通さなくてもいいかなって思ったの!」
「普通に会話できるんだから普通にしてていいぞ?周りの人間に聞かれたくないとかそういう時以外は」
「わかったの!」
「そういえば寒い理由はタオルケットとかないのもあるが今日は火を焚いてなかったんだ。少し火を焚いてついでに顔も洗ってくるからアキとアメリのこと起こしてやってくれ」
「わかったの!アキちゃんを叩き起こすの!」
「なら私はアメリちゃんのこと起こしますね」
二匹のことは二人に任せる。誰もいないところで弱めた火球で火を焚く。そして水球で顔を洗ったりしているとクレナイが近づいてきた。
『主様おはようございます』
「おはよう」
『今日はどうされますか?大回りして仲間を増やしながら行きますか?』
「そうだな…。一番の目的だったお前たちの進化もできたし、とりあえず最短でフィーアたちのところへ戻るか。ただし、アンたちに案内させて虫がいないエリアを通っての最短でな」
『かしこまりました』
その後は火を焚いたことに驚いて、文字通り跳ね起きたアンに全員を起こすよう伝え、起きてきたクー太やアキ達と共に暖をとる。
『ご主人お待たせしました!全員起こしてきました!』
「ありがとう。さてお前達には虫のいない場所を案内してほしい。目的地は…あっちの方角なんだが。案内頼めるか?」
『そちらの方向へ真っ直ぐ行くのでしたら虫達の住処は通りませんよ?』
えーと。誰だっけ。………トロワだトロワ!すでに忘れてた…すまん。
「トロワ。本当か?」
『はい。そちらへ真っ直ぐ行って私達の行動範囲を超えると動物も虫もいない場所だったかと…』
つまり人面樹たちの縄張り?
「なら狩りは一旦中止して帰るか。とりあえずお前たちも来てくれ。後でここに戻ってきても構わないから」
『かしこまりました』
『ご主人。他の水場にいる同族達はどうしますか?』
「まだいるのか。とりあえずいいや。一旦戻ろう。フィーアやフンフ、ゼクス達をあまり待たせてもかわいそうだし」
『かしこまりました』
「そういえば、他にも同属がいるっていうならおたまじゃくしとか…お前たちの子供とかいないのか?」
『私達の子は…以前は居ましたが私達の身体がおかしくなってみんな亡くなりました。それに仲間も結構減りました』
「そうか…悪いこと聞いたな」
『いえ…気になさらないでください』
少し気まずくなりすぐに火を消し移動を開始する。
カエル達は俺達の早歩きくらいの速度に合わせるのは大変なようで、ゆっくり歩くか跳びながら結構な速度で移動するかしかできないみたいだから駆け足で移動する。
カエルが跳ぶとぴょんって音がするが、こいつらくらい大きいカエルが五十匹以上が跳ぶとドンッって音がして地響きまでしている始末だ。ここがこいつらの縄張りじゃなきゃすぐさま魔物が集まってきそうだ。
その後虫やカエルと戦うことなく進み1時間程でフィーア達の元へ来れた。
『『『おかえりなさいませ』』』
『『『おかえりでござる』』』
「ただいま。紹介は後回しだ。拠点に戻るぞ」
ちゃんとフィーアも他の人面樹十六体もフンフ、ゼクス、カブイチ、クワイチたちも揃っていた。よかった。
さてこの先は猿達の縄張りか。猿くらいなら…。
「ビャクヤ、アメリが先頭で戦ってくれるか?それとアキ。お前もたまには戦うか?」
『はい!』
『猿どもにゃ?わかったにゃ。でも一際大きい猿は多分厳しいにゃ』
『わたしもなのです!?わ、わかったのです!やってやるのです!』
「でかいやつが出てきたら俺らが倒すから心配しなくて大丈夫だ。クロはどうする?」
ずっと影の中にいるクロに声をかける。
『私もやる』
「了解」
そして人面樹が十七体、カエルが五十三匹、カブトムシが三匹、クワガタが二匹が俺らの後に続く。
後ろがドスンドスン、ガサガサ騒がしい。
野生の人面樹と猿はビャクヤ、アメリ、アキ、クロに任せる。たまにグレイも参加し、俺の頭の上とか左右の肩とか鞄の中から魔法が飛んでいく。
お前たち…びっくりするから降りて戦えよ…。
クレナイもたまに人面樹を倒しながら俺の左側進んでいく。クレナイは手足が生えたが今までと同じように手足を使わず這うように進んでいる。
まあその短い手足じゃ歩くのは不便か。
「そろそろ先頭交代するか?」
『大丈夫です!!』
『大丈夫にゃ』
『大丈夫』
『え!戻っていいのです!?』
ビャクヤとアメリとクロはずっと戦闘していなかったからか嬉々として戦っている。
「アキ。お前はもう少し頑張れ」
『わかったのです…』
これが噂に聞くセクハラというやつです…?
なんて声が聞こえたが、それを言うならパワハラだし、別にパワハラしていない。アキはずっと胸ポケットか遠くから石投げるだけで少し運動不足だからな。俺なりの優しさだ。
その後も巨大猿も出なく順調に進んでいき、フィーア達と合流してから三時間ほどでイチロウ達と出会った。
『ご主人様おかえりなさい』
「イチロウか。ただいま。二十匹くらいしか居ないが他はどうした?」
『ジロウやサブロウ達も二十匹程の群れで狩りに出てますので。あんまり多いと訓練にならないので』
「そりゃそうか。わかった。お前たちも戻るか?」
『はい。他の者たちに小屋へ戻るよう連絡しますか?』
「んー。頼めるか?」
『お任せください』
イチロウ達は遠吠えをして、その後何か話したかと思ったらイチロウ以外の狼達が散り散りに何処かへ行った。
『今遠吠えが届かない距離に居る仲間へ伝令を出しましたのでそのうち皆が集まるとおもいます』
「ありがとうな」
優秀だな。撫でてやろう。
イチロウを撫でていたら鞄の中や肩と頭から圧力を感じたのでフェリ、クー太、ラン、ラックも順番に撫でてやる。
クロも影から頭を出していたので撫でる。
「というかいつの間に影の中にはいってたんだ」
『ビャクヤの影から転移してきた』
いつのまにか【影転移】使いこなしてるし。
その後イチロウを連れて小屋に戻ってきた。訓練していたのか親父達とオーガがバットと木の枝を手に持ちこちらを見て驚いていた。
親父達ってカエルとか虫大丈夫だよな?まあ駄目でも我慢してもらうが。もう大切な仲間だしな。まだ名前と顔は一致しないが。
「ただいま」