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9月入学制導入議論について

作者: 加賀洋介

2020年春、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、学校が休校に。学習の遅れが心配される中、「9月入学」が議論されるように……。


 結論から言うと、筆者は9月入学制導入に反対です。

 いや、9月入学制自体にはそれほど反対ではないんですね。確かにメリットもたくさんあるんだろうと思います。

 けれども、今議論すべきはそんなことではないと思うのです。今、政府がするべきは新型コロナ対策であり、それに全力を注ぐべきなのです。9月入学制導入でコロナ禍が終息するならそれでもいいですが、もちろんそうではない。そんな状況でこんなことを議論しようものなら、どちらも片手間になるに決まっています。

 先日(2020年5月1日)、島根県の丸山達也知事が9月入学制導入を求める議論について、「自宅が燃えているときに消火しながら、バーベキューをやろうというふうに聞こえる」と発言されました。筆者は全くその通りだと思います。

 そもそも、9月入学制導入は学校だけの問題ではないわけです。幼稚園・保育園や、企業の採用日程。それだけじゃない、官公庁の年間スケジュールや会計年度まで、ありとあらゆる職種に甚大な影響があるわけです。おそらく影響を受けない人なんていないんじゃないかと思います。そのような大改革を、新型コロナ対策をしながら成功させることは極めて困難だと考えます(特に今の安倍政権では)。大学入試制度改革のときでさえ、二転三転し散々現場を振り回したような政府です。彼らにそんな器用なことができるとは思えません。

 推進派の方々は、「非常時だからこそ改革するチャンスだ」「ピンチをチャンスに」と仰っていますが、ピンチはピンチでしかありません。確かに平時に議論しようとしても、必要性を感じない者ばかりで議論は進まないでしょう。しかしだからといってこのコロナ禍にあって、そのような議論をしている場合ではないと考えます。保健所の人員も満足に増やせないのに、どうして9月入学制を導入できるのでしょう。コロナ終息後を見据えることは非常に大切ですが、今はとにかく感染症対策に集中しないと、終息はどんどん遅れることとなるでしょう。

 このような大改革は何年にも渡る議論を重ねて決定し、何年もかけて準備すべきことです。それをこの4ヶ月程度でやろうとは、呆れてものも言えません。大学入試制度改革のときもそうでしたが、十分に議論も準備もしないなまま改革しようとすれば、必ず現場に皺寄せが来ます。学校現場を始め、多くの業界は今、ただでさえコロナ禍で甚大なダメージを負っています。そんな中で9月入学制導入の議論をすることは、非常に短絡的であり、時期尚早であると考えます。




 最初にTwitterで9月入学制導入を提案した男子高校生。彼はおそらく自分や全国の学校の状況を憂慮してこのような提案をしたのだろうと思います。しかし彼の考えはあまりに短絡的でした。まあしかしそれは高校生だからという理由で許せるとしましょう(斯く言う筆者も同じ高校生ですが)。問題は大人たちです。宮城県の村井知事らです。筆者の考えでは、9月入学制導入は彼らのパフォーマンスに過ぎません。東京都の小池知事も大阪府の吉村知事も、感染症対策が思うように進まない中で、新しい論点を作りたかったのでしょう。

 問題は首長だけではありません。とある新聞社のアンケート調査の結果を拝見しましたが、9月入学制導入に反対する人が多いのは10代と40代。つまり現役の学生とその保護者の世代というわけですね。そして賛成が多いのは50代以上。自分はもちろん子供も学校は卒業していて、「自分には関係ない。なんかよく分からんけどよさそうじゃない?」とテレビの前でコーヒーを飲んでいるだけの人たちというわけです。

 この無関心が問題でありましょう。普段、「若者が政治に無関心なせいで投票率が下がっている」などと言っている人たちが、いざ自分に関係ない話題が出てきたらこの有り様。年長者を敬わない若者が増えているなんて言いますが、その原因が年長者自身にあることにどうして気づけないのでしょう。



 じゃあ学習の遅れを取り戻すためにどうしたらいいんだ、と言われれば、「分かりません」としか言えません。無責任だと思われるでしょう。自分でもそう思います。しかし9月入学制導入は間違っている。それだけは分かるのです。

 政府は、本当の意味で身を切った政策(議員報酬2割削減なんて身を切ったうちに入らない)で以て、この新型コロナウイルス感染症を一日でも早く封じ込め、一日でも早く全国の学生が学校に通える日常を取り戻していただきたいと切に願います。そうしなければ、9月になっても、新型コロナウイルスは終息しないでしょう。

拙文をお読みいただき、有難うございました。

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