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Loser3,柳風の別世界傭兵書記  作者: 西山ァ!
第一章:異世界の生き方
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第一節

話が全然進みません……頑張ります

 三人の登場を前に魔獣達は浮き足だっていた。いくつかの個体は怯えているようで、すぐに襲いかかってくるヤツはいない。

 この戦場で一番槍を務めたのは雷のような瞳の男だった。両手両足にアタッチメントを装備したその男の身体からは陽炎かそれとも煙だろうか、紅い()()纏われている。

 その男が駆け出した瞬間、彼の身体は柳谷の視界から()()()。消えたのか、否速すぎて視線が追いつかない。1秒経たずに近場の魔獣に近づき、魔獣の心臓部に右拳を叩き込む!その魔獣の胸は陥没し、そのまま吹き飛ばされた。

 その一撃を打ち込んだ後、男は脚で軽くステップを踏みながら、左手左足を前に構える。ボクシングの構えだ。

 魔獣が男に攻撃を仕掛けるも、その動きを左ジャブで止める。その左ジャブですら強烈!魔獣達は鉄杭で突かれたかのように動きを止める。

 そして動きを止めたところに右フック、魔獣がまた吹き飛ばされる。さらに後ろから襲いかかる魔獣腕の振り下ろしを避けながらその腕を掴み、一本背負いに投げ飛ばす!


(凄い、単に身体能力があるだけじゃない!あの男、格闘技の覚えがある)


 その後ろからもう一人の男が戦場に加わる。全身に黄色の陽炎を纏い右手には肉厚の山刀(ブッシュナイフ)、左手にはこれまた肉厚な片刃のナイフ。近場の魔獣に近づくと同時に山刀による一撃。魔獣の頭部と胴体を分離すると同時に男はその魔獣を蹴り飛ばしす。一体目を倒した後は襲いかかる魔獣の攻撃をナイフでいなしながら、確実に急所に打ち込んでいく。


 体重200kgは超えるであろう魔獣の肉体を吹き飛ばすという身体能力。一体この二人は何者なのか。

 その疑問に答える間も無く、柳谷と翼の生えた少女に三体程の魔獣が襲いかかる。この状態で逃亡しないあたり、魔獣が通常の生物とは違うことが柳谷には直感的に理解できた。

 小女は地面に降り立ち剣を正眼に構える。構えた剣は西洋剣ではなく、日本刀のようだ。しかし単に日本刀ではなく、日本刀の反りと両刃が共存した剣だ。


 「ハァッ!」


 小女は気迫鋭く斬り込み、一番近づいていた魔獣を袈裟切りにする。斜めに別れた魔獣の身体が地面に沈む前にもう一太刀を叩き込み首を落とす。

 この小女も凄まじい力、人間とは思えない速度の斬り込みだが、他の二人と違い陽炎を纏っているわけではない。だが、剣が光り輝きそれに呼応するかのように小女の肉体が強化されている。

 ほぼ同時に二体目と三体目が飛びかかる。少し焦った顔を見せながらも、小女は右に避けながら、まるで魚が水中で舞うかのような軽やかさで二体目に剣を投擲する。咽を貫かれた魔獣はそのまま地面に激突し動きを止める。

 三体目の魔獣はすぐさま小女に構えを向ける。武器を持っていないなら勝機はあると思ったのだろうか。しかし、武器を持たない少女の右手に先ほどの剣に似た別の剣の幻影が現れた。

 その幻覚は寸秒経たずに、幻覚から実体へと姿を変える。それと同時に少女に今までとは違う圧倒的な熱量(エネルギー)が宿る。先程は単なる児戯、ここからが本番と言わんばかりの熱量を持つその剣は、ジェット噴射のように加速した少女の一撃をもって魔獣の上半身を粉砕した。


―――――――――――――――――――――――――――


 わずか数分の激闘だった。三十はいたであろう魔獣は死体へと姿を変え、悪臭を放ちながら肉が溶けていっている。茫然自失の柳谷に少女が話しかける。


「はぁーよかった!ホント、危なかった。まさか日本人が魔獣に襲われているなんて。大丈夫?怪我とかない?あっそういや石ぶつけられてた!」


 先程魔獣を斬り伏せた時の余裕はどこえやら、急におしゃべりになった。慌てだした少女に代わり、ナイフを持った男が話しかけてくる。


「俺の名はアシスモ・バベッジ。色々と聞きたいことがあると思うが、事情は後で話す。とりあえず俺達に身柄を預けてくれ」


 柳谷にとってもこの提案は有難い。肩部に重傷を負い立ち上がる事が出来ないからだ。しかもこの三人なら魔獣に襲われても平気そうだ。

 なんとか頷く柳谷を軽々と担ぎ上げ、米俵スタイルで持ち上げる。そうしているともう一人の男が近付いてきた。


「神崎弘、日本人だ。今から俺たちのいる安全な拠点に向かうので安心してほしい」


 そういうと神崎は少女に自己紹介を促す。


「浜崎由美、同じく日本人です!日本人どおし仲良くやっていこう。あっあと君の名前は?」


 そう聞かれても今は呼吸が困難で声を出すことも出来ない。申し訳無さそうな顔で浜崎の顔を見る。


「あぁっ、ごめん!」


 そういうと背中の翼を広げ上空に飛び立つ。バベッジと神崎は飛び上がり浜崎の腕に掴まる。二人が掴まった事を確認した浜崎が翼を羽ばたかせてこの河原から西に向かう。柳谷を労っているのかそこまで速度を上げずに、気持ち急ぎながら。



―――――――――――――――――――――――――――

 

 3分ほどで拠点と呼ばれる場所についた。森の中の丘のような高台で、巨大な車両の姿もある。

 降りた先には火が焚かれていた。昼食の準備だろうか。ざっと見ただけで数十人、警備会社のジャケットを纏った人間もいれば、騎士のように鎧を纏った人間もいる。この三人の格好はどちらかと言えば現代日本寄り。ジャケットを纏い、動きやすそうなナイロンに似た素材の服だ。


「おーい、助けてきたよー」


「お疲れ様。その人どこか怪我してる?」


 浜崎の呼び声に答えて野菜を切っていた女性がこちらに向かってくる。同時に味噌汁を煮ていた男もこちらにも向かってくる。その男が近付き、柳谷をジッと観察する。近づいてきた二人は二人とも黒髪の黄色人種で日本人のようだ。


「肩甲骨の骨折と右手に打撲、あとは脚に軽く内出血ぐらいだな」


 男は一瞬で柳谷の負傷を見抜いたが医者には見えないぐらい若い。というより、先程から日本人に見える人間は皆若い。年は柳谷と大差がないだろう。


「ホイホイじゃあちゃっちゃとやりますか。肩脱がして」


 トントン拍子でシャツを脱がされる。裸になった上半身に浜崎がちょっと照れているが、治療しようとしている女性は特に気にしていない。


「万能の薬よ、乾粉より出でて錬金の至高よ、我が手より出でていたるその力で害毒を癒せ」


 女性がそう唱えると手からドロドロとした透明な液体が溢れ出てきた。


「何度見てもその“神威継承”って気持ち悪いよな、手汗みたいだしさ」


「うるさいな‼︎好きでこんな形になったわけじゃないし、本当に治るんだから文句言うな」


「すいませーん」


 そのドロドロとした何かが肩に塗られる。すると徐々に痛みが引き、肩の調子も回復してきた。次に手の打撲と内出血にもその何かが塗られてる。右手の打撲は肩の痛みが強すぎて気にしていなかったが、そこそこの重症だったようだ。


「ありがとうございます。先程は命を助けてくれたし、皆さんには感謝してもしきれません」


「いやいや、人を助けるのは普通だよ。それに助けたのはそこの神崎達だし」


 その一人の浜崎は元気になった柳谷を見て顔を輝かせている。相当不安だったようだ。


「まだ名乗れていませんでした。自分は柳谷風磨です、先程はありがとうございました」


「いやいやいや!そんな仰々しくしなくてもいいよ。私も助けたいから助けたんだし」


 その後ろから神崎とバベッジが現れる。アシスモの手には六人分の茶碗と水筒を持っている。


「まぁ見つけたのは荒木だがな。ところで荒木と長島、二人はもう自己紹介は済ませたか?」


 そう言われて二人とも慌てて自己紹介する。どうやらすっかり忘れていたらしい。


「俺は荒木勇士、そこの神崎とは古い仲。まぁ仲良くしてこう」


「私は長島清子。なに、古風な名前?今時古い名前だと自分でも思っているよ、ここにいる高校生共とは長い腐れ縁」


「柳谷風磨です。荒木さんが見つけてくれたんですか?お陰で助かりました。ありがとうございます」


「まぁまぁ柳谷君もそう硬くならないで。お昼時だし食べながら色々説明するよ」


 焚火鍋から雑穀を煮た料理を取り分ける。胡麻と豆を混ぜて塩を加えたような味、栄養がありそうだ。そしてここは日本とは思えないが食器は何故か箸だった。

 30秒足らずで茶碗一杯を平らげた荒木が食後そこそこに柳谷に一言。


「ここが何処かわかってるか?」


「?いえ、全然わかりません?そもそもここって何なんですか?あの怪物、魔獣でしたっけ?一体なんなんですかアレ?」


「そりゃそうだよな、じゃあ、簡潔に言うよ。ここは異世界、俺たちの居た世界とは別の世界」


「……………ブブッボォッ‼︎熱っ‼︎」


 いきなり話の意味が違い過ぎた。驚きのあまり吹き出しそうになりむせる。異世界、一体何事なのか。そもそも異世界とは何か。


「異世界って何ですか?元いた世界と違う?宇宙になある別の星とかそんな話?」


「あー、うん、まぁ俺たちの居た日本のある世界と俺たちが今いる世界は別なんだよ。別の星じゃなくて、なんて例えればいいんだ?」


「簡単に言えば部屋の違いだよ。宇宙全体を一つの部屋と例えれば、異世界は違う部屋、という感覚だ」


 飯を食べている途中の神崎が荒木の補足をする。さらに長島が衝撃的な事を言い出した。


「ほら、ゲームとかで選ばれた勇者サマとかあるでしょ?私達はこの世界で戦う為に連れてこられたの」


「はぁ?勇者?なに?へっ?」


誤字脱字がありましたら、一言お寄せください

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