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Loser3,柳風の別世界傭兵書記  作者: 西山ァ!
序章:馬酔木と朝顔
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第三節

初戦闘ですが、自分で書いててよくわからないです。今後、精進したいです。

 怪物に怯えながら歩いていると、川が見つかった。清流のようで、一先ず水分補給をする事にした。寄生虫が怖いが水を飲まずにいるのも苦しい。大きめの葉っぱで簡単な皿を作り飲む。


 (もう20分くらいかな、そろそろ食い物を見つけなきゃ先が怖い)


 あの後、ジャンズさんの遺体を簡単に供養する事にした。穴を掘る余裕は無いので首のナイフを抜き地面に横にしてから軽く祈ったぐらいだが。

 ナイフは血の錆で使い物にならなかったが剣はまだ使えそうなので拝借してきた。死体から物を持っていくのは気が引けるのだが仕方ない。剣の鞘はカビや苔が生えているが破れたりはしていない。背中に背負うためのベルトも残っていた。


 人里を見つける為に川に沿って歩く事にした。蛇や毒虫に注意し、川沿いを歩いていく。しばらくは森が続いたが、石が転がる河原に出た。ここにも人の気配はないが、1つ嬉しい幸運があった。


 (ラッキー!果物だ。これで飯が食える)


 河原の近くに蔦が生えた木があるのだが、その蔦にアケビに似た果実が実っている。そこまで高い木でもないし蔦も生えていたので楽に登ることが出来た。剣を使って蔦を切り、1つ口にして見る。毒が入っているかもしれないがその時はその時だ。


 (うぅ〜〜〜ん?美味いとも不味いとも言えない)


 完全に森に生える野生種なので味に期待はしていなかったが、なんとも言えない味がした。琵琶の甘さにゴーヤーのわたの苦さが混ざった味だ。香りはただただ青臭い。

 とりあえずもう一つ手に取ろうとした瞬間、自分以外の吐息が聞こえた。咄嗟に動きを止めた。


 音の大きさからして距離は近い。足音もしてきたが、これもかなり大きい。ズルズルと何かを引きずる音もする。野生動物、鹿や猪、熊を疑ったが、そうすると引きずる音が不自然だ。どうやらこの木の下を通るようで、木の上に隠れながら様子を疑う。

 それは怪物だ。2m近い巨躯に鋭い爪、盛り上がった筋肉に濁った赤、巨大な口にしか見えない顔。完全に怪物だった。


 (@☆/○△●◇!!!!????)


 咄嗟に悲鳴を押し殺した。いや押し殺せた。単に怪物だけだったら大声を上げていた。しかし、後ろに引きずられた死体を見て野生的な危機感で声を押し殺せた。木に登っていた事、後ろの死体で危機を察知出来たこと、この二つの幸運が無ければ柳谷は見つかっていただろう。

 怪物……あの日記で魔獣と呼ばれているものだろう。武装した人間でダメなら、剣以外何もない柳谷に勝てる通りはない。よってここは逃げるが勝ちなのだが、怪物は柳谷のいる木の下で動きを止めた。木の根元に腰を下ろし、死体を妙に長い舌で舐めている。


 (おいおいまさかこの木!?)


 よく見ればこの木の下には果実が落ちていない。熟した果実が落ちていないのはこの怪物が糧食としているからなのだろうか。そうなればここが奴の縄張りの可能性もあり、そうであれば逃げる事はおろか、怪物が離れるのを待つこともできない。そしてこの怪物があの日記と同じ個体か種族ならば人を食する。


 (でも果実を食うのなら草食……いや雑食の可能性も考えられる。というか縄張り意識が強かったりしたら一発で死ぬ!とゆーか死体持ってきてるって事は人を殺す生物!バレたらどうせ襲われる!)


 ここで座して待つのも愚策。見たところこの怪物は死体を貪ろとして周囲を警戒していない。警戒心の無さは武装した人間を殺せる強さ故か。だがもし食い切った後に周囲に注意を向けられたら柳谷は発見されるだろう。


 (逃げるのも無理!あんな筋肉お化けの野生動物から流れるか!)


 ならば残った手は一つ。この怪物を殺す事だ。見たところ怪我を負っているようだし、隙をつけば殺せない事はない。そして今ならその隙がある。それに……


 (……あの人にも親がいるんだろうな)


 怪物に食われようとしている遺体。亡くなっただけでも苦しいのに、その遺体が傷つけられたなら、彼の両親や兄弟、大切な人は悲しむだろう。彼の最期の尊厳を守りたい、柳谷は自分勝手にそう思った。



 ならば狙うは一つ。頭上から体重をかけて奴の頭を砕く。この剣は多少錆びているが切っ先鋭く、まだ十分に使える。


 (ジャンズさん……お借りします!)


 剣を下向きにして角度を調整する。多少、武術に覚えはあるといえ、こんな体験は初めてだ。勤めて冷静、されど苛烈。呼吸を整え、一撃の力を貯める。


 (三……二……よし!)


 全体重を載せ頭を狙う!飛び降りると同時に魔獣の頭に狙いを定め、真下にいる魔獣の脳天を狙う!

 ワーム状の魔獣の頭部は硬い甲羅に覆われているようではないのでこの一撃でも十分に貫ける。

 唐竹割り、頭部めがけて振り下ろされた刃は魔獣の頭部に命中し、緑がかった黒い液体を撒き散らす!全身全霊をかけ、火事場の馬鹿力とでもいうべき力で振り下ろされたその刃は魔獣の頭部を砕くのに十分!


 「シャアラァッ‼︎」


 しかし、柳谷の一撃を受けた魔獣は身体を崩さず、後ろに下がる。一撃で仕留められた訳ではない!


 「ギェビァァァィァァァア‼︎」


 聴いたこともない悲鳴をあげながら魔獣は爪を尖らせる。ジャキンと音が出そうなその鋭い爪、人一人解体するには十分な破壊力!

 柳谷も距離を取りながら剣を構えなおす。


 (マジか!クソったれこうなったら真剣勝負!)


 一見すれば勝ち目のない戦いだが、柳谷に勝機はある。まず柳谷と会う前からこの魔獣が消耗している事、そして不意打ちに成功した事。頭部を狙った事もありおそらく魔獣の感覚器は破壊されたか、そうでなくても動きは鈍いだろう。しかしその剛腕は危険だ。


 対峙する両者。先に魔獣が動いた。走りながら接近し、魔獣はその勢いのままに横薙ぎに右手を繰り出す。怪我をしているのもあり多少は鈍いが、柳谷に回避する速度はない。柳谷も接近して魔獣の右手に剣をぶつけ相殺しようとするが、そのまま剣ごと吹き飛ばされる。魔獣の剛腕は剣の威力を受け勢いを殺してなお強烈だった。まるで丸太で殴られたような一撃!剣を離さずにいられたのは幸運だった。地面にぶつかる前に受け身を取り、すぐさま体制を立て直す。密着するほど接近したおかげで爪での一撃を避けれたのも大きい。


 「ぐっ、あぁ痛っ!いぁぁイッテェ!いいぃっ!」


 ダメージはあったが想定内、まだ動ける。すぐさまに魔獣の追撃。先と同じく走りながらの一撃!しかし魔獣は怪我で動きが鈍くなり、さらに不意打ちも食らっている。そして一度見た攻撃、見切る事は出来た。地面を転がりながらなんとか回避する。そして転がる勢いを利用し、魔獣からかなり距離をとる。


 (よし!次だ‼︎)


 立ち上がるときに大きめのの石を手に取る。野球ボールを潰したのような形状とサイズのものだ。

 魔獣はまた同じく突進攻撃を繰り出そうとする。無理もない、ダメージに次ぐダメージで頭が混乱しているのだろうから複雑なコンビネーションは混ぜない。同じく走りながらの一撃!

 

 (来たな単細胞!)


 魔獣は直線的な動きでこちらに向かう!それに合わせ柳谷は手に持った石を投げつける。投石、子供の遊びのようだがその破壊力は確実だ。

 魔獣の胸部に石が激突する。カウンターのように食らった投石は魔獣自身の速度もエネルギーとなり、見た目以上のダメージだ。その突進も止まる。


 「アァァアァァァァァァァア‼︎」


 悲鳴をあげる魔獣に向けて柳谷が刃を横にして突撃する。斬撃じゃダメだ、魔獣の頭部を確実に破壊する為に突きを使う!最初の一撃で頭部を損傷し、冷静さを無くした魔獣にその一撃を避ける事は出来ない!ゴリュ、とした手応えとともに魔獣の脳天を剣が貫く。


 「ウワァァァっ!ヘイヤアッ‼︎」


 貫いた刃を縦に向け、頭を上にかち割りながら振り抜く。頭蓋が真っ二つにわれた魔獣から柳谷はすぐさま離れ、体制を整える。


 「アッアッアッアッアッアッアッ!アギャ!?」


 魔獣が無闇やたらに剛腕を振り回す。どうやら柳谷が離れた事に気がついていないようだ。柳谷は警戒しながらその姿を見守り、生き絶えるのを待つ。

 しばらく動いていた魔獣だが、腕に振り回され身体を倒す。倒れた瞬間、糸が切れたようにプツリと動かなくなった。


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