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種は、種でも?

「はぁーん。で?」鏡に写った俺の顔。右頬には、でっかいガーゼが張られ、ふっ飛ばされた先に、また違う女神がいて顔中に引っかき傷がある。


『大変、申し訳なく…』白い服を着たおっぱいプルンプルン女神。名を…


『あ、申し遅れました。私、東の女神・レイラ・アズールと言います。お怪我、大丈夫ですか?』心配はしているらしく、ガーゼを貼った頬を優しく触って微笑む。


「…っ」少し触られただけでも、腫れてるから痛む。そんな俺をチラチラと横目で見ているのが…


『ほら、ミリア。あなたも、お謝りなさい…』とレイラさんの背後から、これまた白い服を着た…


『はぁい。さっきは、ごめんなさいなの』ミリアと呼ばれた女性が、目の前にきた。


 なの? 語尾に、なの?


『そうじゃないでしょ? ミリア』レイラさんは、ミリアさんの頭に手をおくと、優しく微笑む。


『えっと、ミリア・ブルームです…なの』


 また?と思い、レイラさんを見上げると、笑ってはいるものの、右頬がヒクヒクとしていた。


『では、お決まりの言葉にはなりますが…』とレイラさんは、胸に抱えたB5サイズのファイルを広げ、


『名前は、井筒敏明。間違いありませんね?』


「はい」何故か、俺の傍でミリアさんが、花を摘み始めた。


『年齢は十六歳。高校一年生…』


「はい…」


 ふっふふん…と楽しそうに口ずさむミリアさん。


「あの…ひとつ聞いていっすか?」


『どうぞ…。ミリアさん?』レイラさんの声が聞こえてないのか、一生懸命花を摘んでは何かをしている。


「俺、死んだんすか? 気付いたらここにいたんすけど?」とレイラさんを見上げた。


『ええ、ここには…』とファイルをめくりながら、何かを探し、見つけたのか安心した表情になり、俺を見返した。


『そうですね。痴漢に間違われ、追われ、逃げている最中に車に惹かれて…とありますが? 違うんですか?』


「あぁ、ひとつだけな! 俺は、断じて痴漢なんて事はしてねーし! 俺は、ずっとポケットの手を入れていたんだっ!」思い返しても、腹が立つ。そんな俺を見かねてか、レイラさんは、


『でも、ここでの暮らしも楽しいですよ? ねぇ、ミリア?』名前を呼ばれているのに、集中してクスクスと笑いながら何かをしているミリアさん。


『ミリア?』


「……。」


 ミリアさんは、レイラさんが背後に立ったのも気づかない。なんとなく、母さんが怒る感覚が頭をよぎり、少し離れた。


「おーい、呼んでるって!」少し後ろから声を掛けても、聞こえてねー!


『ミリア?』


「……。」


『ミリアちゃん?』


「……。」


あ、このシンとした空気。もしかしたら?


『ミリア────ッ!』座っている地面、空までもが、地響きみたいに揺れ


「「……。」」俺とミリアさんが、レイラさんを見る。


「ゴメンなの。これ…」とミリアさんが伸ばした手の先には、小さな花で作られた王冠みたいな輪が掛かっていた。


「あげるの。これ…」とミリアさんが、俺の頭に輪を乗せ、


「ようこそ、スコルティランドへ…」と可愛らしくスカートの裾を持ち上げお辞儀をした。


パンッパンッパンッ…とレイラさんが手を叩き、


『良く言えましたね。ミリア・ブルーム・アズール』レイラさんが、ミリアさんに微笑みながら言うも、ミリアさんはプルプルと顔を振りながらイヤイヤの素振りを見せると、レイラさんはさみしそうな顔をしていた。


「で? 俺、結局どうなんの? 本だとさ、違う世界に行ったり、元の世界に戻ったりできるってあったけど?」


『元の世界…ですか?』とレイラさんは、指で宙に四角を描くと…


 っ?!


 テレビのようなiPadのような物が出て、


「あ! え?」時、既に遅し! 俺の身体は、火葬場の過疎炉の中へ入って行くのが映し出されていた…


「ははっ…」


『すみません。何分時間が違うものですから…』と申し訳なさそうに言うレイラさん。の隣で、また花を摘みだすミリアさん。


『転生しか…ないのですが、こちらも二種類ありまして…。ミリアちゃん? おやめなさい』


「……。」いつの間にか、積んだ花が小さな山となっていた。


「二種類?」そう聞き返すと、ミリアさんがテトテトと走ってすぐ近くの扉に入ったと思ったら、すぐ出てきて、


「これなの! どっちがいいの?」と目の前に置いたのが…


「あ? なんだこれ」


ミリアさんが持ってきたのは、二枚の白い封筒。それぞれに、あみだくじ、箱と書かれていた。


いまどき、あみだくじって。しかも、こっちは箱としか書かれていないし…


「これを選ぶなの!」


 また、なの!発言。


「なんだか、思ってたのと違う。レイラさんなんて、おでこに手を当てて、いまにも倒れそうなのに。


「拒否権は?」


『ございません…。ミリアったら…』


 ミリアさんは、ニコニコとし俺を見ている。


「じゃ、じゃぁ、こっち…」と箱に手を伸ばすと、横からミリアさんが大きな声で邪魔をし、あみだくじにすると激しく頷く。


「また質問していいですか?」とレイラさんを見た。


『どうぞ…』


「ミリアさんと、女神なんですか? どう見ても背は小さいし、子供みたいだし…」


 俺の目から見ても、130あるかないかの身長に子供っぽい顔つきに言う事や行動がまるで子供!


『これでも、二十歳なんですけどね。ミリア…』とレイラさんが言うと、ミリアさんが嬉しそうに返事をした。


「……。」


『どうかなさいました?』心配そうな顔で見るレイラさん。


「じゃ、こっちで…」あえて嫌そうにしていた箱と書かれた封筒をレイラさんに差し出す。


「えー、ミリアこっちが…」とあみだくじと書かれた封筒を差し出し、レイラさんにきつく睨まれ、一歩下がった。


『わかりました。では、読み上げます』レイラさんが、封筒の中から一枚の紙を取り出し、一瞬固まったが?


『汝・井筒敏明。人間として、種からの転生と処します』


「種? は?」


『さあ、目をお閉じなさい』言われたまま、訳も分からず目を閉じる俺。


『ミリアは、お開けなさい! 失礼…』だいたい、何があったかは、想像出来るが…


 フワッとした風が、下から上に向けて伸び、


『リ・ピュア・スルーム。髪のご加護があらんことを…』


 ちょっとだけ目を開けると、自分の身体が足から薄く消えていくのが見えた。


 人生やり直すには、早かったけど。また母さんや父さん達みたいに優しい両親のもとに生まれたいな。


 シュパンッ…



 それまで、井筒敏明がいた場所にはなにもなくなり、レイラとミリアの二人になった。


『ミリア? 人間の種って、なんですの?』


「種―?」と小首をかしげるミリア。


『まっ、こちらにも! これでは、あみだくじには…』両手にいっぱいの花を握ったミリアが、


「パパ! ミリアは、パパの種から生まれたんだって言ってた!」


『そう…。あの人が…』笑顔ではあるが、顔を引きつらせ、肩を震わすレイラ…


『あ・な・たぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』展開の空一面に黒く暑い雲が多い、雷鳴が聞こえ始めた…


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