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濡れ衣(プロローグですが、なにか?)


 キーンコーン…と最終下校を知らせるチャイムが校舎内グラウンドに響く。


 ここ県立小山高等学校は、小山市と武蔵川市の境にある高校である。昭和五十四年に設立され、当初は女子高であったが、近年少子化が進み、平成十一年に共学高とし、古かった校舎や体育館も建て直した。


「おい、敏明…」シャワー室から濡れた髪のまま、帰りの支度をしている彼に声を掛ける。


「今日は、無・理・だ!」と俺は、ユニフォームを詰めたディバッグを背負い、髪から滴をポタポタと落とす武彦に返した。


「無理か…。」タオルで濡れた髪をワシャワシャと拭きながら、椅子に腰を掛けて俺を見る。


「つか、毎日行ける程、お前みてーに金ねーし」


 クラスメイトでもあり、同じ部活の仲間である武彦とは、よく学校帰りにゲーセンやカラオケに行っては、遊び歩いていた。


 今までだったら、家に帰っても母さんだけだったし、あまり言われる事はなかったんだが…


「悪いな。父さん、戻って来たから。じゃ…」それだけ言い、部室を出て真っ直ぐ駅に向かう。


 父さんが、長期に渡る単身赴任(海外勤務)が終わり、内勤になってからはパートに出ている母さんよりも帰りが早くなった頃に、運悪く中間考査の結果を先に見られ…


「学校が終わったら、真っ直ぐに帰ってきなさい…」と冷たい言葉を中間考査の結果通知と一緒に返してきた。


 部活のある日は、十八時半迄に帰宅しなくてはならず、こうして腕時計をチラチラ見ながら駅まで走るのである。


 タンッ…と駅の入り口に足を掛け、呼吸を整えながら改札口をパスルで通過する。


「な、なんとか間に合うかな…」いつもなら十分の余裕があるのだが、今日に限って道路の夜間工事で道が塞がれ、ダッシュで迂回。


 ホームの電子掲示板では、俺が乗る各駅停まりの電車があと二分で到着するとテロップが流れていた。


ガタンガタン…と三野駅から無数の乗客を乗せた電車が、ゆっくりとホームに入り、錆び付いたブレーキ音を鳴らしながら停まり、ゾロゾロと乗客が降り始める・


 間に合うかな? ま、走ればなんとか…


 後ろから押されながらも、なんとかドア付近に立つ事が出来、ポケットからスマホを出して少しだけポイッターというSNSを確認。


 電車が軽く揺れ、動き出すとドアニもたれかかった。


 あ、今日あのドラマがあるんだ。早く帰りてー…


 ポケットの中で、着信を知らせる振動があったが、車内での通話は勿論、他の車両から流れてきた乗客に押され、確認することも出来なかった。


 段々と乗客が降りていき、多少前にゆとりが出来たが、降りる駅が次だから移動することもなく、着信だけ確認してスマホをしまった。


≪間もなく、電車は黒金駅に到着します…≫の車内アナウンスが流れ、降りようとドア付近に立ち、ドアが開き出ようとした瞬間!


「ちょっと、君っ!」いきなり腕を見知らぬ男性に掴まれ、上にあげられた。


「あの…」訳もわからず、怖い顔の男性を見るも、後ろから降りる客に押され男性と一緒にホームへと出た。


「なんですか?」男性の側には、中学生位だろうか?セーラー服を着て、青白い顔をしている女の子がいた。


 周囲の人も、なんだ?なんだ?の顔で俺らを見ては、歩き出す。


「ちょっと、来なさい!」


「は? なんで? 俺なんかした?」身に覚えが全くなく、睨み返す。


「あんた、この子のお尻触ってただろ!」男性の大きな声に、周囲に人が集まり、俺固まる。


「は? 何言ってんの? 俺、痴漢なんてしてねーよっ!」力いっぱい腕を下げ、手首を振る。


 腕時計を見ると、十八時十分になっていた。


「いいからどけよ! 時間ねーんだよ!」


 前に出ようとすると、女の子が泣きだし、男が前を塞ぐ。


「ちっ…」思わず舌打ち。


「退け!」


「ダメだ! おい、誰か駅員を…」男が大きな声で言い、一人の男が走っていくのが見えた。


 ざけんなよ…。俺、なんもしてねーぜ?


「痛いっつてんだろっ!」さっきよりも力を込め、降り解き走る。


 後ろから、「おい、待て!」という男の声や「待ちなさい! きみつ!」という駅員らしき声も聞こえたが、停まるわけにも行かず、通路口にパスルを通し、ひたすら走った。


 チラチラと後ろを振り返り走った。のが。いけなかったのか、停まっていたのは道路の真ん中で、気付いた時には、


『宙に浮くって、こんななんだ…』とバカな事を考えていた。


 そして…



 ピピピピピッ…


「ん? ここは?」目が覚めると辺り一面小さな花が咲いていて、気持ちいい風が俺の髪を揺らしていた。


『良かった。目を…覚まされたのですね』目を開けると、目の前に大きくてプルンプルンしている二つの…


 ムニュ…ムニューッ…


『……。』


「……。あ…」


 どうやら俺は、目の前にあった二つの柔らかな物を掴み、


『きゃぁ────っ!』


 ゴンッ…いきなり白い服を着た女性が立ち上がった拍子に後頭部を打撃し、


 パァ────ンッ!と頬を思いっきりひっぱたかれ、飛ばされまた意識を失った。らしい…


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