第2話(残酷描写あり)
残酷描写ありです。苦手な人は気を付けてください
「あぁ、王子様。愛しの王子様、あなた様はとっても素敵です」
人魚姫は蕩けるような声で、恍惚の表情を浮かべながら呟きました。ただし、その顔を、ドレスを、全身を、血液で真っ赤に染め上げながら。
「本当に、真性に、至当に、素敵で素敵で堪りませんわ‼ 狂おしいほどに素敵すぎて、思わず狂ってしまいそう‼」
人魚姫はその豊満な肉体を両腕で包み込むように抱きます。まるで愛しい人を抱擁するかの如く。そして、その手には血を吸い、やや赤銅色に変色した骨が握られていました。
「こんなお姿になっても、私は王子様を変わらず愛し続けます。ですが、その前に、」
今にも天に昇りそうなほど、幸せな笑みを浮かべていた人魚姫は、突然にその表情を一変させ、憎悪を露わにしました。
「王子様を惑わせた悪い女を、地獄に叩き落として差し上げましょう」
人魚姫は早速、王子の婚約者。つまりは隣国のお姫様が寝ている部屋へと向かいました。
お姫様は何も知らず、ただぐっすりと、深く深く、眠っていました。
「私の愛しの王子様をだまして、惑わして、誘惑した悪いお姫様。あなたには死すら優しいと思えるほどの苦痛を味わってもらいます」
すると、人魚姫は迷いなく、お姫様の胸にナイフを突きさします。ナイフはお姫様の右胸を容赦なく、深々と穿ち、肺を破りました。
「えっ?」
お姫様は目を覚まし、自分の胸から生えている一本のナイフを、不思議そうに見やりました。その直後、お姫様は口から大量の鮮血を撒き散らします。
「本当なら、あなたの家族も、みんなみんな、ひどい目に遭わせてやりたいのですが、仕方ありませんよね。あなた一人だけでも、苦しんでください」
人魚姫はナイフを引き抜きます。ずるりとナイフが抜かれ、お姫様の胸からは冗談のように血が吹き出ます。しかし、人魚姫はそれをそっと抑えました。
「あなたには、簡単に死んでもらう訳にはいきません」
今度は脇腹に、ナイフを突きさしました。鮮血で染まり、肉で汚れたナイフはなお、一切の加減もなく、お姫様の柔肌を貫きます。
「~~~~~~~ッッッ‼‼」
右の肺が使えなくなり、上手く声を上げられないのか、お姫様は声にならない悲鳴を上げ、華奢な身体を痙攣させます。ビクリビクリと震えるその身体は、まるで陸に打ち上げられた魚のように滑稽です。
「この程度では、まだまだまだまだ足りませんわ。もっと、あなたには苦痛を味わってもらわないと」
人魚姫は微笑を浮かべました。しかし、その瞳はただ冷徹に、冷静に、冷血に、お姫様のことを見下していました。
「さぁ、今夜は愉しみましょう」




