お茶会
二話連続ロリ(?)が出てきますが、決してロリが好きな訳ではありません。
決して!
アリスの入れてくれたお茶は、以外にも……と言ったら失礼になるが、美味しかった。
知り合いのギルドに貰ったアップルティーらしい。
この世界にも、こういう物が普通に存在している事に、何だか俺がいた世界とそこまで変わらない気がして、混乱が少し治まった。
あまり驚けなくはなっていたが、一応この状況に混乱していたんだ。
本当に夢じゃないのか?とか、あの本は一体何なのか?とか、俺はどうして呼ばれたのか?とか。
そして、出来ることなら、説明聞いたら帰りたい。
叔母さんも心配してるだろうし、俺がいなくなったらあの店は絶対潰れる。
父さんの遺してくれた大事な店。
潰れるなんてそんなの絶対嫌だから―――
「……オリ……シオリ?ねぇ大丈夫?黙り込んで」
「うえ?―――大丈夫、です」
反応が遅れてしまった。
少しばかりぼーっとしてしまったみたいだ。
「……あんた、私には敬語使わないのに、マスターには使うのね……」
ムゥがジト目でこちらを見る。
まぁ……年上だしな。一応。事実上は。別に、ムゥさんに使うとかなんか悔しくなるとか無いですよ?コレッポッチモ。
「まぁまぁ!敬語でも、そうじゃなくても、変わんないよ!別に、アリスに敬語じゃなくてもいいよ?シオリ」
「でも、一応年上だし……?」
「遠慮は無し無し!だってシオリはアリス達のギルドに入ってもらうんだから!」
「ブッ!」
アリスの発言に驚いて、思わずお茶を吐いてしまった。
「ッッッ――!げっほげっほ!」
ヤバッむせた……っ!
アリスは大丈夫?!と、背中を叩いてくれている。
「って事は、俺は帰れないってこと?!」
「ちょ、せ、説明するから!顔近いぃぃ!」
顔を近ずけ過ぎたみたいだ。
―――説明中―――
「なるほどー」
「ね、引き受けてくれない?」
「断る」
「えーーッ?!」
アリスの話をムゥの時みたく簡単にするとこうだ。
まず、俺が呼ばれた理由は大きく分けて3つ。
①この世界が何者かの手によって、壊されかけている事。
何でも、この世界は物語が命だそうで、物語が壊れると、この世界のパーツが抜け落ちた状態になり、そのうち壊れてしまうらしい。しかも、壊れた物語の守り人は消えてしまうと言う。
それがどうして俺に関係があるのかと言うと、それは理由の②になる。
②俺がこの世界を救う『アクター』に選ばれたからだ。
『アクター』というのは、アリスにもよく分から無いみたいだが、ムゥが言うには、「正義のヒーロー」らしい。
関係ない話だが、物語の守り人は、その物語の力が衰えると、消えてしまうらしいが、物語を維持するには、また新たな守り人が居なければいけない。
その時、ある特定の条件を満たす物語は、違う世界から守り人の後継者を召喚する。
しかし、条件を満たさない物語はどうするのか?
そこで『アクター』の出番である。
『アクター』は、物語に入ることが出来、壊れた箇所を特定し、きちんとした「終わり」にするため、登場人物になりきる力を持つらしい。
ならば、その物語を救う『アクター』は何に選ばれるのか?
答えは簡単。前の『アクター』だ。
ここに来て、俺がここに呼ばれた意味がやっと理解出来た。
そして、理由③だが……、
③自分のギルドに消えかけたメンバーがいるから助けて欲しいという事。
これは無理だ。だって力の使い方なんて分かんないもん。
「そう言わずに、助けてよ〜」
「いや、でも……」
「コレが終わったら、元の世界に返してあげるから〜」
「高橋シオリ、全力を尽くさせていただきます」
「何この手のひらリバーシ」
ムゥが小さくつっこむ。
いやだって、早く帰りたいじゃん。
「ギルドに入ってくれないのは、残念だなぁ」
「俺にも都合あるからな。しょうがない」
「しょうがない、かぁー」
本当に残念そうにアリスが言う。
なんか悪い事した気になるが、俺にだって事情はあるんだ。
ここは譲ってもらおう。
「良かったら、君が帰らなきゃいけない理由、教えてくれない?」
アリスが無邪気な笑顔で俺に聞く。
「……死んだんだよ。父さんが」
「え?」
ムゥが驚きの声をあげた。
「それは……」
「正確には行方不明だがな。父さんが俺に古本屋を遺した。俺は父さんの形見である古本屋を潰したくない。だから帰りたい。これじゃ理由になんないか?」
「……」
アリスはしばらく下を向いて黙っていた。
ムゥとパディも黙っている。
やがて、お茶の湯気が消える頃、アリスは口を開いた。
「……シオリのお父さん、確かに死んでる。
でも、シオリの世界じゃない」
「あんたのお父さんは、この世界で『アクター』として死んだのよ。でも……」
「まさか、シオリがタイチの息子……?死んだって……でも、それはここでのこと……あの時無事に……」
アリスとムゥが俺の分からない話をしている。
「何の話だよ。それに、何で俺の父さんの事知ってんの?」
俺は痺れを切らし、アリスたちに聞くと、アリスはゆっくりと顔を上げ、俺を見つめた。
アリスの肩は震えている。
目には少し涙がにじんでいる。
どうしたんだ、と聞こうと、俺がアリスに手を伸ばすと、
「まずは、ギルメンを助けてもらうのが先。一刻を争うから、話は後」
ムゥがそれを制した。
「……ムゥ、シオリをみんなの所へ。食堂に居ると思う」
「マスターは?」
「アリスは……ちょっと独りにして」
すっかり元気を無くしたアリスは、ブオン、と空間を歪めてブラックホールのようなものを生み出し、その中に入って行った。
「何だ、あれ」
「時の狭間。さ、食堂に行きましょ」
「お、おう」
俺は、少しムゥに押されるようにして、ギルマス室を後にした。
読者の皆様、ありがとうございます。(´・ω・`)(´-ω-`)) ペコリ