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ストーリーズ・ワールド  作者: 今野 なう
不思議の国のアリス《アリス・イン・ワンダーランド》
4/4

お茶会

二話連続ロリ(?)が出てきますが、決してロリが好きな訳ではありません。

決して!

  アリスの入れてくれたお茶は、以外にも……と言ったら失礼になるが、美味しかった。

  知り合いのギルドに貰ったアップルティーらしい。

  この世界にも、こういう物が普通に存在している事に、何だか俺がいた世界とそこまで変わらない気がして、混乱が少し治まった。


  あまり驚けなくはなっていたが、一応この状況に混乱していたんだ。

  本当に夢じゃないのか?とか、あの本は一体何なのか?とか、俺はどうして呼ばれたのか?とか。

  そして、出来ることなら、説明聞いたら帰りたい。

  叔母(おば)さんも心配してるだろうし、俺がいなくなったらあの店は絶対潰れる。

  父さんの遺してくれた大事な店。

  潰れるなんてそんなの絶対嫌だから―――


「……オリ……シオリ?ねぇ大丈夫?黙り込んで」


「うえ?―――大丈夫、です」


  反応が遅れてしまった。

  少しばかりぼーっとしてしまったみたいだ。


「……あんた、私には敬語使わないのに、マスターには使うのね……」


  ムゥがジト目でこちらを見る。

  まぁ……年上だしな。一応。事実上は。別に、ムゥさんに使うとかなんか悔しくなるとか無いですよ?コレッポッチモ。


「まぁまぁ!敬語でも、そうじゃなくても、変わんないよ!別に、アリスに敬語じゃなくてもいいよ?シオリ」


「でも、一応年上だし……?」


「遠慮は無し無し!だってシオリはアリス達のギルドに入ってもらうんだから!」


「ブッ!」


  アリスの発言に驚いて、思わずお茶を吐いてしまった。


「ッッッ――!げっほげっほ!」


  ヤバッむせた……っ!

  アリスは大丈夫?!と、背中を叩いてくれている。


「って事は、俺は帰れないってこと?!」


「ちょ、せ、説明するから!顔近いぃぃ!」


  顔を近ずけ過ぎたみたいだ。


 ―――説明中―――


「なるほどー」


「ね、引き受けてくれない?」


「断る」


「えーーッ?!」


  アリスの話をムゥの時みたく簡単にするとこうだ。

  まず、俺が呼ばれた理由は大きく分けて3つ。


 ①この世界が何者かの手によって、壊されかけている事。

  何でも、この世界は物語が命だそうで、物語が壊れると、この世界のパーツが抜け落ちた状態になり、そのうち壊れてしまうらしい。しかも、壊れた物語の守り人は消えてしまうと言う。

  それがどうして俺に関係があるのかと言うと、それは理由の②になる。

 ②俺がこの世界を救う『アクター』に選ばれたからだ。

  『アクター』というのは、アリスにもよく分から無いみたいだが、ムゥが言うには、「正義のヒーロー」らしい。

  関係ない話だが、物語の守り人は、その物語の力が衰えると、消えてしまうらしいが、物語を維持するには、また新たな守り人が居なければいけない。

  その時、ある特定の条件を満たす物語は、違う世界から守り人の後継者を召喚する。

  しかし、条件を満たさない物語はどうするのか?

  そこで『アクター』の出番である。

  『アクター』は、物語に入ることが出来、壊れた箇所を特定し、きちんとした「終わり(エンド)」にするため、登場人物になりきる力を持つらしい。

  ならば、その物語を救う『アクター』は何に選ばれるのか?

  答えは簡単。前の『アクター』だ。

  ここに来て、俺がここに呼ばれた意味がやっと理解出来た。

  そして、理由③だが……、

 ③自分のギルドに消えかけたメンバーがいるから助けて欲しいという事。

  これは無理だ。だって力の使い方なんて分かんないもん。


「そう言わずに、助けてよ〜」


「いや、でも……」


「コレが終わったら、元の世界に返してあげるから〜」


「高橋シオリ、全力を尽くさせていただきます」


「何この手のひらリバーシ」


  ムゥが小さくつっこむ。

  いやだって、早く帰りたいじゃん。


「ギルドに入ってくれないのは、残念だなぁ」


「俺にも都合あるからな。しょうがない」


「しょうがない、かぁー」


  本当に残念そうにアリスが言う。

  なんか悪い事した気になるが、俺にだって事情はあるんだ。

  ここは譲ってもらおう。


「良かったら、君が帰らなきゃいけない理由、教えてくれない?」


  アリスが無邪気な笑顔で俺に聞く。


「……死んだんだよ。父さんが」


「え?」

 

  ムゥが驚きの声をあげた。


「それは……」


「正確には行方不明だがな。父さんが俺に古本屋を遺した。俺は父さんの形見である古本屋を潰したくない。だから帰りたい。これじゃ理由になんないか?」


「……」


  アリスはしばらく下を向いて黙っていた。

  ムゥとパディも黙っている。


  やがて、お茶の湯気が消える頃、アリスは口を開いた。


「……シオリのお父さん、確かに死んでる。

  でも、シオリの世界じゃない」


「あんたのお父さんは、この(ストーリーズ・)世界(ワールド)で『アクター』として死んだのよ。でも……」


  「まさか、シオリがタイチの息子……?死んだって……でも、それはここでのこと……あの時無事に……」


  アリスとムゥが俺の分からない話をしている。


「何の話だよ。それに、何で俺の父さんの事知ってんの?」


  俺は痺れを切らし、アリスたちに聞くと、アリスはゆっくりと顔を上げ、俺を見つめた。

  アリスの肩は震えている。

  目には少し涙がにじんでいる。

  どうしたんだ、と聞こうと、俺がアリスに手を伸ばすと、


「まずは、ギルメンを助けてもらうのが先。一刻を争うから、話は後」


  ムゥがそれを制した。


「……ムゥ、シオリをみんなの所へ。食堂に居ると思う」


「マスターは?」


「アリスは……ちょっと独りにして」


  すっかり元気を無くしたアリスは、ブオン、と空間を歪めてブラックホールのようなものを生み出し、その中に入って行った。


「何だ、あれ」


「時の狭間。さ、食堂に行きましょ」


「お、おう」


  俺は、少しムゥに押されるようにして、ギルマス室を後にした。

 


読者の皆様、ありがとうございます。(´・ω・`)(´-ω-`)) ペコリ

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