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筆頭の死と領地

「高白斎から国をおさめるための分国法を作ってはどうかと草案を渡された。皆の者読んで意見を」

兄上と家臣の取り次ぎ役である駒井高白斎が家臣の統制のため領地や税の事についての決まりを明確にすると言うことで兄上に提出した。

それぞれが写しを読み意見を言う、

「これによりますと税の書いてありますが国人や豪族が納得するとは思えませぬが」

甘利がもっともなことを言う、

「武田の下では従ってもらう。異論や破る者有れば裁くだけ」

「これでは争いが起こっている土地の行く末が」

「全ての者に対しての法、農民の年貢や離散もだが山伏が納得しましょうか」

「領主自らが法の下に入られるのですか」

色々と言うのを兄上は黙って聞いている。

出尽くしたところでいくつか補足をしながら対応していく、

数日間話を聞いて最後に後ろで聞いていた私に何かあるか聞いてくるので、

「山伏は山伏にしかわからないこともあり実際とかけ離れた法かもしれません、修正できる余地を残して声を聞いてみたらどうでしょうか」

兄上は嬉しそうに頷き信濃攻略へ進み始めた。


準備で忙しいある日兄上に呼ばれる。

「小虎、元服を進めようと思う、ただしわしの側にいる近習としてだ」

思わぬ申し出に喜んで返事をすると、

「無茶はするな、三条を悲しませるでないぞ」

そう言うと烏帽子は兄の典厩信繁が勤めてくれることになる。

諏訪の攻略では大将を任され板垣と共に諏訪を押さえており兄上の腕として立派に働いている。

「小虎、兄上のてとなりしっかり働くことだ、頼むぞ」

そう言われて大きく頷くと、

「甘利が泣いておる鬼の目にもだな」

そう言うと飯富が、

「守役同然でしたからな、どこへ行くかと心配して去年は落ち着かず困っていたところです」

飯富も兄上の嫡男である太郎の守役を命じられており感慨深いらしく嬉しそうにしている。

兄上が、

「絶えて久しい一条家を継ぎ一条信龍とする。領地も上野に与えるが信繁が補佐する」

一条信龍と言う名前を何度も繰り返し元服の義を終える。

祝いの品も渡され駿河の父上からも貰えて嬉しくしていると、

「志賀に向け出陣をする。それが初陣だ」

そう言い兄上が締めくくり田植えが終わった頃に今の清里を経由して佐久へと向かった。


「中々面白い鎧だな」

信繁が私の鎧を見る。

動きにくいので鎧は簡素化しており乱戦では危険だが近習としていると言うことで気にせず初陣にうれしく返事をする。

「もし危ないときは甘利に頼れ離れるでないぞ良いな」

それだけ言うと信繁は行ってしまい兄上の後ろを進む、

志賀の笠原氏が関東管令の上杉に援軍を頼み籠城しておりそれに勝てば佐久を押さえ碓氷峠から越えてくる援軍を押さえることができる。

大井勢を先陣で向かわせており予定通り志賀城を包囲した。


「金堀衆に穴を掘らせ城内の水をたて」

金山などで活躍している者達で穴を掘らせる事にかけてはすごく今回も連れてきて早々に投入する。

城内からも作業が見えており挑発したり届かない矢を放ったりしており数日掘ると水を押さえることに成功した。


「碓氷峠から援軍が到着したとの知らせが」

前年、氏康の奇襲により川越で大敗して平井城に逃げ戻ったがまだ管令としての力は衰えておらず西上野衆を送ってきたと報告があり兄上は、

「板垣と甘利よ急ぎ撃破してこい」

兄上が包囲の一部を迎撃に向かわせる。

「信龍殿何をしておられる」

私は当然のように甘利の側を離れる考えはなく馬に乗ると板垣が聞いてくる。

「信繁からも離れるなと言われましたから甘利が行くならついていくのが当然です」

何か言いたそうな板垣に甘利が、

「何かあればわしが守る駿河(板垣)よ急ぐぞ」

そう言って私を急き立て進む、


「敵は大軍であり我らを侮っているが数で合戦をするのではない」

そう言うと編成をしなおして三角に組み直すと甘利が突撃を開始する。

「西上野衆とお見受けする。我は武田家家臣甘利虎泰だ」

そう言うやいなや突撃を開始しており相手は動揺して陣を崩した所に切り込みをする。

「すごい、武田ってすごすぎる」

思わず呟いてしまうほどの攻撃であり、一人一人が強く尾張の兵の何倍もの強さだと実感させられる。

中でも甘利は槍を振り回して陣形に亀裂を作り押し広げていき、板垣がそれを巧みに使い追い討ちをかける。

西上野衆も必死に後陣が勢いを止めて反撃しようとするが武田勢を止められずとうとう退却を始めた。


私は離れたところからそれを観戦しつつ鉄砲を取り出し支えきれない自分に代わり三脚をたてる。

火薬をいれ弾を込め皿に火薬をいれて火縄に火をつけた。

「当たったらみっけもん」

呟きながら崩壊した西上野衆が退却を始めそれを武田勢が追いかける。

退却の先頭をいく身なりのよい武将に向けて引き金が届かないので改良を加えた鉄砲を射った。

「当たった」

この体では筋力が足りないためぶれて的に当たらなかったのだが大当たりで武将は後ろに吹っ飛び鉄砲の轟音に敵は大混乱で次々と討たれていった。


「倉賀野為広ですな、関東管令の直臣であります」

初陣で見事武功をあげ首実検で相手の素性がわかる。

「我らは信龍殿が館で撃っていたのでさほど驚きませんでしたが敵は同情したくなるほどの混乱で3000の首をあげ武将は10数人にのぼりまする」

飯富が報告するとみな予想以上の戦果に驚き士気を高める。

「板垣、甘利そして信龍ご苦労だった。首を志賀城の前に並べよ援軍が負けて来ぬとわかれば士気も落ちよう、攻め落とすぞ」

そう兄上が言うと家臣は声をあげ頷き出ていった。

「信龍よ猟銃として手に入れたと言うが数が揃えられれば使えるかも知れないな」

「兄上、これ一丁の値段と火薬を使用するのでそれを南蛮から輸入しなければならず値段もさることながら堺から離れているふりでしばらくは手に入りずらいと思います」

そう言うと残念そうに、

「値段が値段だな、安くなるのを待って揃えよう、そのときは頼むぞ」


数日後総攻めの命令が下り小山田隊が先鋒となり外曲輪へ攻めかかった。

笠原勢も必死だが士気の衰えは否めなく徐々に反撃の勢いが落ちてくる。

「いまぞかかれ、かかれ」

小山田の声がここまで聞こえ部下達は中へと侵入に成功してさらに二の曲輪へと攻めかかり落としてしまった。

「本曲輪のみとなったが夕闇がせまるので明日に持ち越す」

一気に攻めようとする小山田に余計な被害を出さないようにと兄上が止めて包囲を続けた。


夜、武田本陣

「今回の捕虜は身請け(身代金)の金額をこれにする」

毎回捕虜は身内がお金を支払い解放される。払われなければ身売りされるか鉱山などで一生働かされる。

今回の金額はとても払えるものではなく生活費を稼ぐ家臣は不満が起きるだろうと言うことだが兄上は行ってしまう。

「これでは誰一人支払いができるとは思えぬ、晴信様は何を考えておられるのか」

板垣が言う、

「もう一度考え直してもらわなければなるまい」

甘利が言うと飯富が私に、

「なにか知っているようだな信龍殿」

鋭いなと思いながら、

「今回の事、私が使用した鉄砲からの流れにと考えています」

板垣が促すので、

「鉄砲にしろ何にしろ戦いはお金がかかります。現状甲斐は貧しく金山に頼っておりそれは兄上も痛感しておられます」

「送り込むと言うことか」

甘利がそう言うと考え始める。

「すぐには結果がでない物ですから今から増やしていく様にと言うお考えで今回の捕虜をと言うことです」

飯富が、

「わかった、従うことにします。よいな二人とも」

そう言って解散した。


翌日、朝から陣太鼓がならされ小山田隊が曲輪を通り抜け笠原勢に攻撃を仕掛ける。

城兵は負ければどうなるかわかっているので必死に抵抗しており3度の波状攻撃に耐え抜いていたがとうとう一角が破られ蛮族のような喚声をあげ城内へと突入していった。

「検分する」

兄上が城内へと入り私も後ろからついていく、焼けた臭いと悲鳴が何時ものようにしていたが生活に直結しているのか血眼になって戦利品を漁っており女を見つけては抱えあげ笑いながら城外へと出ていった。


本曲輪へ到着すると笠原の妻が引き立てられてきており夫の首の前で呆然としており小山田がひかえ、

「笠原と援軍の将の首にございまする」

満面の笑みで言う小山田に兄上は頷き、

「よくやってくれた、女をやる好きにせい」

それだけ言うと絶望の笠原の妻を横目で見ながら本陣へと戻った。


「捕虜は全て黒川(金山)におくる。女子供は売り払う」

結局身代金を払えず何時もではあり得ない割合で奴隷となり送られ売られた。

黒川を見たいと思い兄上の許可をもらい奴隷となった男達を連れて進む、躑躅ヶ崎から東へ向かい途中南の山へと向かい西へおれて峠へと登る。

途中いくつか視線を感じ兄上の命令で監視している者が多数いると感じながら黒川金山へ到着した。

「山間の川縁にある地獄だな」

思わず呟くほどの状況であり、監視小屋が周囲にありかろうじて雨風がしのげる小屋に奴隷が追いたてられ金堀衆が指図して採掘する。

人を人とも考えない扱いで死ねば古い鉱山の穴に放り込まれ、動けない者も食事を与えられず同じようになり人手不足らしい、

「奥まで進めますが水が染み出してしまい掘り進めることもできずに次の坑道を掘っている状態です」

監視している役人が説明しているのを聞いていると男達の慰みものとして連れてこられた女が一人ケタケタと笑いながらやって来るのを役人が慌てて、

「殿の一族の方に無礼は許されぬぞ、さっさと連れていけ」

さらに逃げ出したものが連れ戻され奴隷の前でむごたらしく殺されるのを見ながら山をおりた。


河原に向かい陽気に騒いでいる民の輪に入る。

今更ながら戦国時代なのだが近畿と地方での生活の違いというか効率の悪さを気がつかず行っている状況にへっこんでいる私に温かい食事を差し出してくれる皆に感謝をしながら長老に、

「気持ちよく働いてもらえれば効率も上がるのになんで非生産的な行動をしているのかわからないよ」

初めて進められた酒を飲みながら何時もは心にしまっている事を思わずしゃべってしまう。

長老は黙って聞き役に回ってくれ最後に、

「信龍様は我らの身分に関係なく接してくれるそれは嬉しいのです。しかし力を持てばそれを行使してその下にいる者を足蹴にして何とも思われない事の方が普通でありそれを暴風の様に静かに通りすぎるのを待つしかありません、しかし我々の自由を奪おうとすれば戦いますよ」

その瞳の奥にある決意を見せてくれ近くの自分の館に戻った。


翌日、兄上に呼ばれて黒川の事を聞かれたので坑道の下に水抜用の穴を掘ってはどうかと言うと嬉しそうに頷き直ぐに家臣に書状を持たせて走らせた。

「北信濃の村上についてどう思う」

兄上から切り出され少し慌てながら、

「評価では父上に勝るとも劣らない猛将であり気を見るに敏と思います」

「我らが仕掛ければどうなる」

「総数ではこちらが多いと思われますが損害は馬鹿にできないかと」

「信龍ならどうする」

「戦いは挑まず先ずは海野や真田を寝返らせてからでも遅くはないと思います」

「信龍にしては弱気よな、手配はするが来年早々に攻める」

そう言われて兄上にしては急ぎすぎておりやな感じを受けざる終えずその後の評定でも聞き役に回った。


「年明け雪解けと共に上原城経由で大門峠を通り小県郡にでる」

評定は兄上の言葉で終わる。

不安な気持ちで思っていると呼び止められる。

「一条信龍殿とお見受けいたす」

そこには粗野な武田の武将とは違い思慮深そうな男がおり、

「真田幸綱(昌幸の父)にございます。今後よしなに」

そう言われて、

「真田か取り返せればいいが村上も手強い、内応をしている時間もない」

「もう少し時間をいただければ一族がおりますので」

「そうか、ところでその方にも私と同じ頃の長子がいたと聞いたが」

「源次郎ともうします。我が息子にしては剛勇であり将来が楽しみです」

「よければしばらくは私の下に、よければ兄上に申し上げるが」

そう言うと幸綱は喜び近いうちに元服をさせましょうと言ってくれ兄上に願い出て近習とした。


年が明け雪が解け始める頃出陣する。

源次郎は信綱と名前を変え初陣を飾るので無言で気合いをいれており少々怖い、

武器は三尺三寸の陣太刀でありとてもじゃないが無理な代物を信綱は振り回して見せてくれており、乱戦になれば任せてくださいと言われうれしく頷いた。

出発をして雪解けで水量が多い釜無川を横目で見ながら上原まで向かうと板垣に率いられた諏訪衆が合流するとそこから大門峠を目指す。

「白樺湖がないていうかあれ人造湖か」

一人で呟き車山でのスキーを不意に思い出しながら進むと小県郡へと到着をした。


「村上勢千曲川をはさんで対岸に陣を構えております」

後年の上田城が建てられた辺りであり真田側に村上が徳川側に武田が展開しており縁起が悪い、

「陣を整える。先鋒は板垣、次は甘利、そして小山田を両翼を飯富と信繁とする」

願い出ていた真田を先鋒に使わず何時もの勝利の方程式である重臣で固める晴信、

「陣代え完了」

急ぎ展開を終え安堵すると兄上が命令を下すと陣太鼓が鳴らされた。


村上勢も進み千曲川の上での戦闘になる。兵数は同じに思えるが先鋒は鈍く感じられ板垣との戦いが始まり槍で突き合い石を投げ混戦となり徐々に圧倒していく、

「幸綱、敵は下がりぎみに見えるが」

先鋒を外された真田勢は予備として本陣の横におり、その端で待機している私の横だったので叫ぶと直ぐに来て、

「確かに何時もより引きぎみです。好戦的な村上が何かあると思われます」

板垣が村上の先鋒を引き裂き見事に崩壊するが村上本隊は何時の間にか引いており、さらに悪いことに板垣勢は討ち取った敵の首をあげ始め足が止まる。

馬に乗り本陣へと走らせ兄上の前で降りると、

「あれは敵の誘いにございます、首をあげるために止まった板垣隊危ないです」

初戦の勝利に上機嫌な本陣の雰囲気を潰しながら言うと兄上はその後ろの敵本隊を遠目で見て、

「焼きが回ったか、直ぐに知らせい両翼を押し上げ板垣には追撃を緩めるなと」

ムカデの旗を立てたお使い番がそれぞれの方向に走る。

本陣の重臣達も村上本隊が先に動き始めたのを見て遠くて聞こえぬ板垣に敵が来るぞと叫んだ、


板垣も気がついたがもう遅い、一気に呑み込まれ甘利に襲いかかる。

「甘利隊が崩壊しますぞ」

何時もは逆なのだが受け身になり村上勢を押し止めようとしたが無理で次の小山田隊にとうとう襲いかかった。

小山田は石を投げ必死に応戦する。両翼も必死に支えるが村上の勢いを止められずじりじりと後退しており悲鳴が漏れはじめる。

「踏みとどまれ、引くな耐えろ、予備も投入して押し返せ」

兄上が見下ろしながら崩壊一歩手前で押されながら耐えている小山田に援軍をと命令を下す。

「鉄砲を」

私は鉄砲に火薬と弾を装填して横に控え信綱が私の横で寄り添うように守ってくれる。

私の守役だった景政は馬場を継ぎ信春と名前を変え兄上の横で待機しておりこちらを見て頷いた。


援軍が到着した小山田勢が逆に味方に割り込まれたせいで崩壊してしまい最悪の状態で村上の突破を許してしまい本陣にせまる。

「村上家家臣雨宮正利すいさん、武田晴信何処におるか勝負いたせい」

私の前に来た武将に引き金を引く、

「当たった」

良しと思った瞬間には次々と村上勢が襲いかかり信綱が陣太刀を私の前に進み出ながら敵将を切り落とす。

兄上の方を見ると次々と現れる敵に信春が槍で突きまくり押さえ込んでいたが多勢に無勢で兄上の姿が見えなくなる。

「信綱、兄上を晴信を助けろ私は気にするな」

信綱がこちらを見るので、

「晴信あっての武田だ、私もすぐいく助けてくれ」

そう言うと決心をしたのか信綱は振り返ると体の震えと共に喚声をあげ周囲の動きを封じると陣太刀を肩にかついで走り始める。

私は馬に乗り信綱を目で追うと村上勢に陣太刀を振り下ろし、振り上げ、凪ぎ払う、首が胴が腕が飛び動きが止まったのを見て兄上の元へ馬を走らせた。

「兄上」

そう叫ぶと晴信はこちらを見て手を伸ばす。

あぶみをしかっかりと踏み股で馬を挟みながら後ろに乗せ走り出した。

「信綱の働き見事だ」

少し離れたところで止まりふりかえると信春と工藤(内藤)が付いてきており頷く、少し遅れ旗や旗本と信綱が到着して陣を構える。

味方も合流し始め幸いなことに村上勢の追撃はなく踏みとどまることができた。


疲れた顔をして武将が集まり評定が始まる。

兄上を正面にして左には兄である典厩信繁が一族筆頭として座り、反対側は主二人が不在の腰掛けが置いてあり席についたが誰も言葉を発せず下を向いている。

私が兄上を見ているのをようやく気がつき目で促してくる。

「我らの慢心が板垣や甘利を亡くし多くの将兵を失ったと言うことです」

皆はっと顔をあげ苦渋の表情で兄上をみる。

私はさらに言葉を続ける。

「撤退をしますか、この土地を諦めますか」

そういった瞬間晴信の瞳に光が戻り立ち上がると、

「信忠(甘利の長子)父の後を継ぎ兵を率いよ、信憲(板垣の長子)父の後を継ぎ兵と諏訪郡代としての役目を行え」

「この地を取るまで引かない、それぞれが頼むぞ」

戦意を回復した兄上に家臣も喜んだはずなのだが、


「いつまでにらみ合いを続けられるのか」

「兵が畑仕事をしたいと申しておる」

「来年再度出兵すれば良いのでは」

対陣が続き未だに村上勢とのにらみ合いが続いており、戦意を回復させた私にも家臣から兵を引くように説得を頼まれるが首をたてにふらない、

「信龍、何かないかな兄上を引かせるには」

兄である典厩信繁が私以上に家臣から言われ疲れた様子で会いに来た。

「私たちでも戦意を取り戻して意地になっている兄上の説得は難しいですよ」

「誰か聞く耳を持たれるような方はおられぬか」

そう言われて一人思い出す。

「兄上の母、大井の方様にお願いを」

実母と言われ典厩は頷きすぐに書状を書くと言って戻っていった。


早馬で躑躅ヶ崎へそして戻ってくると兄典厩と共に兄上に渡しに行った。

「母上からだと」

兄上は書状を読み始め読み終わるとホッとため息をついて、

「皆に負担をしいらせた、撤退する」

即決され撤退が始まり皆も一様に安心して再戦を誓い甲斐へと戻った。


兄上からは信綱共々誉められ、

「信龍、上野城城主とする。しっかり頼むぞ」

この若さで城を任せられると言うことに最大限の礼を言い喜んで向かう、

「何処もそうだけど甲斐は貧しいな」

躑躅ヶ崎と駿河を結ぶ道の途中にあり城と言っても館を大きくしたというほどの規模でしかない、

城下町も宿場町かな位の規模で土地も痩せておりやることがありすぎて嬉しいやら悲しいやらで若いので兄典厩が後見人となり城へと入った。


「一条信龍である。兄晴信の命により城主となった。皆力を貸してもらいたい」

そう言うと私の戦いを知っている者は好意的になってはいるが知らない者は侮った顔を見せる。

「まずは領内の主要な道を整備していく、これは山本勘助のちからを借りて行う」

道はでこぼこしており雨が降ると歩きにくいのでそれぞれの配下の領地で正しい土木工事を行うことを伝える。

「そして年貢は今は民4豪族3私3となっているが去年のとれだかで固定とする」

昨年は豊作ではないが豊作になるのがまれな甲斐であり、それを聞いた豪族は嬉しそうに頷く、

「ただし農業を指示したとおりに行うように、それができないならば罰を受けさせる」

そう言って農業師事書を配りそれを読んだ者からは苗を植えるときに等間隔で植えると言うことに反発が起きるが、

「だからこそ最初の通り固定としたまでだ損をするのは誰かな」

そう言うと納得してそれが収穫量をあげる秘策だが他の項目に目を奪われ討論しながら戻っていった。


「勘助か、すまない忙しいときに」

兄上の家臣であるが頼んできてもらい土木の基礎を配下に教え込む、

「私の配下でいたければこれは最低限習得せよ」

戦いには有能だがさぼってばかりの家臣を兄上に返していくと早馬が来た。


「小笠原勢が諏訪に向かい典厩殿が迎撃にでました」

兄上は先の戦いで怪我をおったため温泉で治療中で不在、飯富が名代として援軍の準備を行い私も上野に使者を走らせ準備させる。

「我が方の勝利で小笠原勢撤退したもよう」

「さすがは典厩殿、見事ですな」

飯富の言葉に同意する。

「兄上への報告は私が向かいましょう」

そう言って館から馬で半刻の湯村へ向かった。


「そうか武田が破れたと聞き小笠原め動き出したな、典厩に諏訪の豪族の動きに警戒するように伝えておけ」

目を閉じたので出ていこうとすると、

「好き嫌いはあろうがそれを使いこなすのも器と言うものだ」

「はい、申し訳ありません未熟で」

兄上の忠告に礼を言いながら飯富に伝えて上野に戻った。


「申し上げにくいのですが河原の笛吹川に上無しの流浪の民が集まっております」

心配そうに聞いてくるので、

「かまわないよ、私が責任をもつから配下にも気にせずにいるようにと、知り合いがいるから」

そう言うと微妙な顔をしているので信綱と心配をする家臣の菊地を連れて館の南にある笛吹川の河原に向かった。


「長老こんなに集まってどうしたの」

河原の民で溢れており菊地は顔をひきつらせる。

長老のいる場所を聞き到着すると嬉しそうに出迎えてくれ、

「信龍様の領主となられた御祝いに一族をあげて集まりました」そう言って座らされると酒と何時もの色々入ったごった煮の食べ物が出され感謝しながらいただく、

「これはうまい、おかわりを頼んでよいか」

いつも無口な信綱が一口食べあまりの美味しさにおかわりをする。

菊地も差し出された酒をのみ自然と杯をかさねており最後には最初の評価を覆しさすがは殿と誉めてくれる。


「話があるんじゃないか」

長老に聞くと、

「よろしければ我らから希望する者に配下として登用していただければと思っております」

思わぬ申し出に私は感謝しながら、

「ありがたい、でも城主罷免になったらどうするの」

そう言うと笑って元に戻るだけでしょうそう言ってくれ100人程を登用してあと他国で有能な人が埋もれていれば連れてくるように伝え結果、

「京で浪人をしていた平野吉保、遠州の浪人井伊直義」

と二人の武将を配下にすることとなった。


その間に小笠原勢が再度侵攻して下諏訪を占領した。

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