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プロローグ

 優秀と言うのは、どのような事を言うのだろうか。辞書に載っている意味であれば、非常にすぐれていること。また、そのさま。と言ったような形だろう。


 自分で言うのも何だが、何をやっても、何をやらせても想像のはるか上を行った。平等院高等学校びょうどういんこうとうがっこう。数多くの優秀な生徒がいる学校の中でも、佐伯和也(さえきかずや)は一年の中で群を抜いて優秀だった。


 中肉中背でイケメンということはなく、普通の顔立ちで、髪も染めず真面目な生徒だと自負している。校内のテストでは、常に1位を取り続け、全国で行われる実力テストでも1位を取っている。運動神経も良く、運動部の助っ人に呼ばれることもある。しかし、好きで運動部の助っ人に行っているわけではなく、勝手にスケジュールを組まれて行かされることが多い。幼馴染の高月紗枝(たかつきさえ)によって……


 「今日はサッカー部の助っ人に行く日って言ってあったよね! さぁ、早く行くよ!」


 甲高い声の仕切りたがり屋で、プライベートに勝手に介入してくるこの女こそが高月紗枝。幼稚園の頃からの腐れ縁で、俺が平等院高等学校に入学するって言ったら、1日10時間の勉強で入学してきた。しかし、元が頭が悪いため、この学校では最下位争いをしている。


 「確かにサッカー部の助っ人に行く日だとは聞いていた。だけど、用事が出来たからいけないことになった。キャンセルってことにしといてくれ」


 「キャンセルなんて出来ると思うわけ? あんたが居ないと私たちの学校は負けちゃうのよ? そもそも用事って何よ。言ってみなさい!」


 怒らせると絶対に後を引かない性格だから、嘘を言って誤魔化すしかないのだが、後々嘘と発覚すると、大変なことになるのは経験から百も承知である。


 「今日はヨガの日だ。マハチャーイ先生のヨガは血行を良くし、集中力も上がるんだよ。インドから日本に一週間滞在していて、インド政府公認プロフェッショナルヨガ検定のレベル4の資格を持っている。そんな素晴らしい先生にヨガを教えてもらうんだから、どうしても行けない。頼む……それに明日は、俺たちのクラスは長野まで勉強合宿だろ? 怪我でもして明日行けなくなったらどうするんだ?」


 「そんな凄い先生が日本に来てるなんて……というと思った? 確かにあんたの趣味がヨガなのは知ってるけど、マハチャーイ先生の所は嘘ね。それにそんな検定聞いたことないわ。それに、怪我なんてあんたの好きなヨガで何とかなるでしょ!」


 この流れは助っ人に何をどう頑張っても行く流れだ。マハチャーイ先生のヨガに行けなくなってしまう。マハチャーイ先生の所と検定の話が本当だが、確かに信憑性が無い。俺もいきなりそんな事を言われたら、嘘じゃないかって疑ってしまう。


 「待て、調べれば分かる。頼むから今日だけは! それに明日は俺たちのクラスは長野まで勉強合宿だろ! 疲れを残したまま勉強合宿に行きたくない!」


 「問答無用! サッカー部の助っ人に行くわよ!」


 仕方なくサッカー部に行くことになった。試合はハットトリックを決めて3-0で俺たちの学校が初めて地区大会で優勝したのであった。

 

 次の日、俺は筋肉痛になりながらもバスに乗った。バスの隣の席は幼馴染の高月紗枝で、既に窓際の席を独占している。長野の勉強合宿所まで眠ろうとしていたが、こいつが隣と言う事は寝れそうになかった。

 

 「何? ムスッとした顔して。昨日はお疲れ様! 今日からの勉強合宿は頑張らないとね!」


 「俺は頑張らなくてもいつも通りやれば済む話だからな。昨日はヨガに行けず、帰ってすぐ寝てしまったから、家でのヨガも出来ずに少し疲れが取れていないだけだよ」


 「あら、そうなの。まぁ、昨日の活躍に免じて長野の合宿所まで寝かせてあげるわ」


 バスが動き出し、俺はすぐに眠ってしまった。


 ――――ガシャン!!


 大きな振動と音で俺は一気に目が覚めた。命乞いをしたり、甲高い声、大声で叫んだり、目を閉じて必死に耐える生徒でバスの中は狂乱していた。


 バスは草木を薙ぎ払い、段差を下って、大きな湖に突っ込んで行った。水が入ってきて、息も出来ず、バスから出ようとしても、窓は開かず、どうしようもない。水を多く飲んでしまったためか、気が遠くなっていく。


 ふと、隣の席で幼馴染の高月紗枝を見ると、ショックのせいか気を失っていた。俺の人生良い事なんてあまりなかった。勉強が出来ても、生きてなければ何の役にも立たない。運動が出来ても、自分の身を守れなければ何の意味もない。そう考えている内に気を失った。




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