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8. 牢屋

 

(わたし 佐藤美貴 18歳 大学1年生 牢屋に入っています。)



「太郎!太郎!返事して!ねえ!太郎!」

 地下にある牢屋の中に1人、美貴は太郎の名前を叫ぶが太郎からの返事はない。

 太郎のからかいを不快に感じていたが、1人牢屋の中で不安になり太郎の声にすがるように太郎の名前を呼び続ける。

 牢屋の中は布団と便器のみ、照明は薄暗く不安な気持ちをより一層強くする。

 美貴が入っている以外にも牢屋はあるが、受刑者は見当たらない。


 地下に降りてくる足音が聞こえる。

 革靴のこの足音は美貴が連れて来られた時に聞いた足音である。

 美貴の目の前に現れたのは、美貴を連行した衛兵の1人である。

「反省したか?」

 衛兵は美貴に問いかけてきた。

「反省してます、反省してます。だから出してください!」

「それが出してやれねぇんだ」

「お願いします!」

「相手が悪かったなー、イタズラした相手が貴族でなぁ・・・」

「そんな!カツラ取っただけじゃない!」

「次は相手見てからイタズラするんだな・・・次があるのか知らねぇがな」

 衛兵はポケットからパンを取り出す。

「腹が減ったろ?これでも食ってな」

 鉄格子の間からパンを差し出す。

「・・・・・」

 美貴はパンを受け取ろうとはせず、衛兵はパンを鉄格子の間からパンを投げ入れる。

「またあとで来るよ」

 衛兵は地上への階段を上って行った。


「・・・・・太郎!太郎!返事して!ねぇ!」

 返事はない。

「これVRなんでしょ!ゲームなんでしょ!なんでゲームで牢屋に入れられなきゃならないのよ!太郎!!」

 返事はない。

「・・・・・」


 意気消沈としている中、ぐぅーっという音が牢屋に響いた。

 音の正体は美貴の腹の音である。

 美貴は自分の腹に手を当てる。

「なんでゲームでお腹空くよ!」

 沈黙が続く中、再度ぐぅーっという音が牢屋に響く。

 美貴は牢屋の中の床に転がっているパンを見る。

「・・・・・」

 パンに手を取る美貴。

「・・・・・あぁーもう」

 美貴はパンを一口食べる。

「・・・・・おいしい」


「ハッハッハハハハ・・・フハハハハハ」

 聞きなれた不快な男の声が美貴の頭に響く。

「いやー、それはダメでしょー、落ちたもの食べちゃダメって教わりませんでしたかー?」

「太郎!?」

「しかも牢屋に入ってるじゃないですかー、ブタが牢屋ってこれブタ小屋じゃないですかー、ハハハハハ、ブタがブタ小屋で臭い飯ですかー?ハハハハ、もう美貴ちゃん最高ですねー、ハハハハハ」

 太郎の笑い声が響き続ける。

「あんた!今までどこにいたのよ!?」

「いやー、ちょっと席を外してましたー。戻ったら美貴ちゃん牢屋で、臭い飯食べてるんですから、ハハハハハ、もうダメ笑い死ぬ・・・フハハハハハ・・・」

「いいから!早くこの状況どうにかしなさいよ!」

「ハハハ・・・そうですねー、じゃあまず・・・フハハハハハ・・・ダメちょっと待ってフハハハハハ・・・」

 太郎の笑い声が響き続ける。

 太郎の声を懐かしがっていた自分を後悔する美貴である。


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