5. ブタ
美貴にとって見慣れない景色があった。
目にしたのは大自然の緑。
草や木は都会育ちの美貴にとっては公園で見る程度、街では人工的に植えられた木を見る程度。
目の前に広がっている景色は遊牧的な風景、奥手には湖が見える。家畜を除いた壮大な風景である。
(なにこれ・・・すご・・・)
「おはようございます」
大自然を堪能している美貴に、不快な男の声が響く。
美貴は声に反応して辺りを見渡すが、太郎は見当たらない。
「どこ!?」
「どこでしょう?」
からかう太郎の声に美貴は苛立ちを覚える。
「ここですよ」
再度、辺りを見渡しても太郎の姿は見当たらない。
「どこだよ!?」
「美貴ちゃんの頭の中です」
「え?」
「美貴ちゃんの頭の中に直接語り掛けてるので、探しても僕は見つかりませんよ?」
「頭?」
美貴は自分の頭に触れる。
「ん?」
普段、頭を触る感覚との違和感があり、手を見る。
そこにはピンク色をした見慣れない手があった。
二又状に別れ、人間の手ではないことが一目で分かる。
「え!?」
「ヒズメです」
美貴は手だけではなく体や足、見える範囲を見る。
中世のドレスのような服で、色は茶色と白色の組み合わせである。
ドレスから見える足は、手と同じくピンク色で、足の形状は靴を履いていて見ることができない。
「奥手に湖があるので鏡代わりにそれで顔見てみましょうか」
太郎の言葉に従うのは抵抗があったが、美貴は自分の変化を何よりも確認したく、湖に走って向かった。
ドレスでの走りが難しく、ドレスを両手で持とうとするが、ヒズメでの持ち方が難しい。
「・・・ぬんん」
試行錯誤してドレスを持とうとするが、結局は諦めて走る。
「はぁはぁはぁ・・・」
息を切らしながら湖に着き、顔を湖に近づける。
湖に映っていたのはブタである。
「なに?どういうこと!」
「ブタさんです。可愛いですね」
「なんでブタ!?」
「だってブタが好きって言ったじゃないですか?」
「サソリとブタだったら大半の人はブタ選ぶでしょ!」
「そーですかー?」
「そんなこといいから説明して!」
「そうですねー。そろそろ説明しないと美貴ちゃん怒っちゃいそうですもんねー」
「もう怒ってる!」
「そうでしたかーハハハ・・・じゃあ説明しましょうか」
サブタイトルを「ブタ」にするか「大自然」にするか迷いました。
「ブタ」の方が正しいと思うのですがネタバレ風になるのが微妙かなと。
大半の人は予想できたことだと思いましたので「ブタ」としました。
感想や、誤字脱字の指摘頂くと嬉しいです。
モチベーションに繋がるので、お時間ありましたらよろしくお願いします。