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3. 契約書

 

 美貴は佐藤太郎と面接した部屋のソファに座っていた。

 目の前には相変わらず、しわのあるスーツに不快感を与える無精髭を生やした佐藤太郎が目の前に座っている。

「合格おめでとうございます」

「・・・はぁ」

 体力測定の時点で落ちても仕方ない成績をしていたのは美貴自身も理解していた。

 また、佐藤太郎に合った以降のモチベーションも下がっており、落ちても他の所を探せばいいと思っていた。

「いやー良かったですねー、ハハハ」

「・・・はぁ」

「それじゃあ、お仕事の内容を説明しますねー」

(いや、面接の段階で説明しろよ!聞かなかった私も悪いけど・・・)

「佐藤さんには・・・あっ、下の名前でいいですか?僕も佐藤なんでなんか変な感じがして」

「あっ、はい大丈夫です」

「それでは美貴ちゃん・・・」

(ちゃん付け!?せめて、さんだろ!)

「美貴ちゃんには宇宙に行って頂きます」

「・・・は?」

「あっ、本当の宇宙じゃないですよー、本当の宇宙に行けると思いました?ハハハ」

「いや・・・」

(めっちゃ腹立ってきた・・・)

「VRって知ってますかね?今流行りのゲームとかでもある」

「あぁー、はい」

「言ってみればVR的なものですねー、簡単そうでしょう?」

「はぁ」

「美貴ちゃんにはVRでいくつかミッションを達成するだけの簡単なお仕事です。ね?できそうでしょう?」

「はぁ」

(この人の美貴ちゃんは絶対慣れない・・・)

「それじゃあ契約書にサインしてもらっていいですか?」

 太郎は契約書とペンを取り出し、美貴に渡す。

 美貴は契約書に目を通すが規約など、難しい文章で読む気を失い、ペンを取り氏名欄に名前を記入しようとする。

「あっ、規約はちゃんと読んだ方がいいですよ」

 太郎の言葉でペンを止めて、規約を再度見るが頭に入ってこず、読んでいるフリをする。

「まぁー、何点か重要な事もあるんですが、簡単に言っちゃうと守秘義務ってやつです。

 お仕事で知った内容は一切口外しないってことですねー。

 破っちゃうと大変なことになりますよーってことですねー」

 子どもに諭すような口ぶりの太郎に苛立ちを覚えながら、美貴は太郎の話を聞く。

「もちろん友人や家族の人にも話しちゃダメですからねー。

 SNSとかもっての他ですからねー、注意して下さいねー」

「喋ったらどうなるんですか?」

「うーん・・・大変なことになっちゃいますねー」

 太郎は笑顔で話すが目は笑っていないことが見え、美貴は口外しないことを心の中で誓う。

「じゃあ、サインお願いします」

 太郎に促され、契約書にサインをする美貴。

 サインをした契約書を太郎に渡し、太郎は契約書を確認する。

「・・・はい、OKです、それではこれを飲んでもらっていいですか?」

 太郎は懐から一粒の錠剤を取り出し美貴に渡す。

「え?」

「酔い止めみたいなものです。VRに酔っちゃう人もいますからねー、念のためです」

 美貴は渡された錠剤を見て、飲んでいいものか不安を覚える。

「あっ、ちゃんとしたお薬ですから副作用とかないですから大丈夫ですよー、水なしで飲める素晴らしいお薬です」

 不安を覚えながらも、美貴は錠剤を口に入れ飲み込む。

「飲めましたかー?」

「・・・はい」

「それは良かったですー、ねっ?別に体に異常はないでしょう?」

「・・・は・・・・・い」

 太郎の言葉が遠のき、美貴は瞼が重くなり目を閉じ意識が遠のく。

 ソファに倒れこむ形で意識を失う。

「・・・・・それじゃあ、お仕事しましょうか」




クスリ!ダメ!絶対!

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