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探偵は推理しない  作者: 寿
7/24

ケース1 エピローグ

ちょっと短いです


「……で、探偵さん。それからどうなったのかしら?」

 いつものバー、いつものスツール。すこぶる美人なマダムの前ではあったが、私は苦い酒を舐めていた。

「どうもこうも、成功報酬はまだ受け取れない、ってことさ」

「あら、深雪ちゃん帰らなかったの?」

「帰ったさ。だが和之氏のフリル好きを治すまで、結婚は無期延期だとさ」

「延期なら良かったじゃない。破談じゃないんだから」

「それがそうでもないのさ」

 私は肩をすくめてみせた。

「彼女、頑張っちゃってね。誰の力も借りず、『私が和之さんのフリル好きを治すんだ!』だとさ」

「それじゃ、この一〇〇万円は預かっておくわね」

「依頼主に返すんじゃないのかい?」

「あら探偵さん、深雪ちゃんが勝つって思ってんでしょ?」

「そりゃ、まあね……」

 私は残りの酒を煽った。代金を支払って席を立つ。

 外に出ると、冬の寒さが襲いかかってきた。

 ウィナー・テイク・オール。勝者が根こそぎいただく。藤井和之は、やがてすべてを手にするだろう。

 ルーザー・テイク・ナッシング。そして私に、成功報酬はまだ無い。

 都会の孤独と噛みつくような寒気が身にしみたが、それも時間の問題だ。

 相思相愛、若い二人が互いの溝を埋めるのに、それほど長い時間はいらないだろうから。


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