表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵は推理しない  作者: 寿
18/24

その11


「この学校周辺での鑑賞を控えていただきたいだけです。それ以外の場所でしたら、私が口をはさむ筋合いではありません。存分に楽しんでください」

「とは言いますが、南高校の制服を一度にこれだけ鑑賞できるのは、やはりこのポイントしか……」

「そこですよ、〇〇さん!」

 ズビシと指を差す。

「あなたの究極とするセーラー服は、数をそろえていなければ魅力を発揮できないものでしょうか? いや、違う!!」

 考える隙を与えずに、すぐさま畳み込む。

「よその制服の中にあっても、あなたのセーラー服は光り輝くに違いない! いやむしろ単身、様々な近代制服に囲まれてこそ、真価を発揮するべきでしょう!」

 私に挑発されたと思ったのだろうか。趣味人氏の瞳は、好戦的な色に輝いていた。

「なるほど探偵さん。私の存在はあなたの仕事の邪魔になる、ということですね?」

「有り体に言えばそうです」

「だがしかし、私としてはストーカーが憎くて仕方ありません」

「その無念は、きっと私が」

 君の無念はわかる。だが、理解してほしい。ここはプロの現場だ。素人は、私たちプロフェッショナルが仕事を終えたあと、平和な世界を楽しんでいただきたい。

「それでは仕方ありませんね」

 趣味人氏は一度目を伏せて、それから空を見上げた。私に目を戻すと大きくため息をつき、となりの電柱を指差した。

「では探偵さん、あの老人はおまかせしてよろしいですね?」

 その電柱には、三脚にカメラを据えた井上翁が貼りついていた。鬼の速写でシャッターを切っている。ハアハアと息も荒い。

 膝から力が抜けそうになったが、ソフトをかぶり直して自分を保つ。

 キャメルを新たにくわえ、スマートとはほど遠い乱暴な動作で火を着ける。私は靴のカカトを鳴らして翁に近づいた。撮影に集中した翁は、私に気づかない。シャッターを押す指が止まったと思ったら、次なる被写体を探しているのだろう。レンズを左右に振っている。

 一発くらい殴ってやろうか? すでに射程距離に入っている。悪くないアイデアだ。

 だがキャメルを捨てたところで、翁は振り向いた。

「いけませんなぁ、探偵さん。ワシに後ろから近づいたりして、抱き締めようっていうんですかな?」

「死角から近づいたのに気づかないでください、気持ち悪いですから」

「まあ、探偵さんが相手ならキスくらい許してもかまいませんがね」

「いや許さないでください、本当に。ノー・サンキューです」

 妖怪なみの危機察知能力を発揮した翁を相手にしていると、件のミスター・趣味人が背後に迫ってきた。気配でわかる。

 まったく、次から次へと面倒くさいものだ。私の周辺には、どうしてこうもイカレた連中が多いのだろうか?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ