決闘 「全弾射出!」
いよいよアリアとの戦闘です!
書きたかったのを書けて良かったです。
side:大牙
「ハッ!」
タンッ! タンッ! タンッ!
アリアは俺に向けてライフルを連射する。
俺は走りながら弾を避けていく。
ライフルは連射の隙が大きいから簡単に避けられる。
「ハァァ!」
接近し、アリアに村正を振るう。流石に分かるような攻撃だからアリアは簡単に避ける。
避けた後、すぐさま体勢を立て直し、ライフルを連射。
そして、俺はまた走りながら避ける。
「さっさと当たりなさい!」
「これじゃあ、キリが無いな。違うやり方でいってみるか」
走りながらバリアに跳び、足をつける。すぐにまた跳躍し、アリアに空中から立ち向かう。
「バリアを使った!?」
予想外の動きにアリアは驚く。
俺は落下の速度に合わせてアリアの頭上から村正を振るう。
「くっ!シールド!!」
俺が振り上げた瞬間、アリアは俺に向かって掌をかざし、幾何学模様を生み出す。
キンッ!
斬りつけようとしたが幾何学模様に遮られる。
これが防御魔法か。
アリアは後方に跳躍し、俺との距離を開ける。
「ちょこまかと目障りですわ。じっとしていてくれません?」
「生憎ながら動かない的になる気にはないんでね。そっちこそちゃんと狙って撃てよ」
「なら、この武器であなたを射ぬいてさしあげますわ」
ライフルが粒子となり消え、粒子は再度集まり、マシンガンへと変わった。
「武器がかわった!?」
「私の魔術名は『銃切替』。数多ある銃を高速に切り替える魔術ですわ。さぁ、光陰大牙。私の前で踊りなさい!」
ダダダダダダッ!
アリアはマシンガンを発砲する。
俺は先程同様、走りながら避けるが肩や足に弾をかすめる。
「くっ!」
それでも走る。走りながらアリアに問いかける。
「そんなに勝ちたいか!勝利がそんなに大事か!」
「ええ、そうですわ!私にとって勝利は絶対条件!どんな勝負にも勝たなくてはいけないんですの!」
「それは自ら望んでいることか?」
「もちろんそうですわ」
「嘘だな」
「なんですって?」
射撃が止む。
俺は身体全身のいたる所に擦り傷やかすり傷ができていた。
俺とアリアは対面する。
「本当に勝利を望んでいる奴は 「勝たなくてはいけない」 などと言った言葉は出ない。普通なら 「勝ちたい」 「勝つ」 と言った言葉が出るはずだ」
「何が言いたいんですの」
「つまりお前は誰かに命令されて1度も負けてはいけないことになっている」
「っ!」
「多分、これは俺の推測だが、レイフォン家の娘の名目上、負ければ泥をぬることになる。だから負けてはいけない」
「・・・・・・・・・」
「けど、お前は心のどこかで苦しんでいるはずだ。そんな命令を遂行しなくてはいけないことに。レイフォン家の娘という肩書きのプレッシャーに」
「・・・・・れ・・・」
「 「勝たなくてはいけない」 なんて言ってる時点でお前の負けだよ」
「・・・ま・れ・・・」
「レイフォン家とは酷だな」
「だまれ!」
アリアは怒り、激昂する。
「だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれ!!!!!」
アリアは俺を睨みつける。さっきまでの優雅で余裕の感じは無い。
「あなたに私の何がわかる!」
「分からないよ。分からないけどお前を見ていたらその位は分かるもんだ。・・・可哀想にな」
プチッ
アリアの頭の何かが切れた。
「・・・あなたとは少し弄んであげようと思っていたのですが、我慢なりませんわ。全力をもってあなたの心身を粉々にしますわ!」
マシンガンの銃口を上に向ける。
何をする気だ?
「覚醒!!!」
「覚・・・醒・・・?」
瞬間、アリアの足元から幾何学模様が現れる。そこから光を放ち、風が舞う。砂埃がたち、アリアの姿が見えなくなる。
「い、一体何が・・・」
俺はアリアの方を見る。
砂煙が消えていき、その全貌が見えてくる。
「!!!」
そこには自分の身長の倍以上、銃口は巨大なライフルがあった。
肩に2門、腰に2門、そして両手に2門と、計6門のライフルがとりついていた。
「覚醒、バーストモード」
アリアは静かにこちらを睨みつけていた。
「な、なんなんだよ、あれ。覚醒って一体・・・」
「覚醒とは、魔力を最大限に使う攻撃魔法の奥義のようなものだ。普段使っている魔術よりも数倍に強くなり、武器や技なども変わる」
バリアの外から茜が説明してくれた。
「ただ、覚醒ができるのは一定以上の戦闘経験と闘いのセンスがないと使うことができない。ギルド内でも全員ができるわけではない。かくいう私も、できないからな」
「そんな大事なこと、何で前もって知らせてくれないんだよ」
「すまない。忘れていた」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
茜は俺から目線を逸らす。
忘れちゃいかないだろ。忘れちゃ。大事なことだから2回言った。
「話は済みましたかしら?」
俺は視線を茜からアリアに移す。
アリアは口元だけ笑っていて、目は笑っていない。
「私の覚醒名は『全弾射出』。さっさと終わらせますわ。目標を補足」
6門全ての銃口が俺に向けられる。
「・・・凄いな。お前の魔術、いや、覚醒か」
「今さらお世辞を言ったって止めませんわよ」
「違うよ。純粋に驚いているんだよ。本当に凄いや」
「フフッ。ありがとうございます。」
「ただ」
「?」
「覚醒もできなく、ほとんど戦闘経験が無い俺に対して、覚醒しなければならないなんてな。大したことないな」
「・・・私は勝たなくてはいけない。あの人のために勝たなくてはいけないんですの!そして、あなたには圧倒的な力を見せて勝利すると決めているのですわ!」
銃口から緋色の灯火がつく。
「さぁ、塵になりなさい!『全弾射出』!!!」
瞬間、6門の銃から巨大な光輝くビームが放たれた。
「ぐっ!」
俺は光の奔流に飲まれた。
side:三人称
アリアの周りには砂煙が舞っている。何も見えない状況だ。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ!」
覚醒を使った反動により体力が著しく消費されている。
「ハァ、ハァ、ハッ、ハハハ、ハハハハハ」
しかし、アリアは笑っていた。相手を、大牙を倒せたことで。
「ハハ、あれだけ散々言っておいて、結局あなたの負け。無様、としか言いようがありませんわね」
大牙の方を見る。砂煙によって確認できないが確信していた。勝利したと。
「フゥ・・・」
息を整え、天を仰ぐ。そして呟く。
「今回もやりましたわ。お父様」
「感慨に浸るのはまだ早い」
「!!!」
再び、大牙の方へ視線を戻す。砂煙が晴れていく。そこには・・・
大牙が立っていた。翼に守られながら大牙はこちらを見ていた。
「な、何で・・・」
「俺はお前が撃った瞬間、反射的に翼を出し、身を守った。無傷、とまではいかなかったけどな」
大牙は翼を拡げる。顔や身体は煤汚れ、腕には軽い火傷を負っているが、翼は汚れ1つ無く、光輝いていた。
「そ、そんな・・・『全弾射出』を受けてまで立っているなんて・・・」
「俺の翼には他のと違って魔力が込められているからな」
少しずつ、1歩ずつ、大牙はアリアに近づいていく。
「勝つことだけが全てじゃない。負けることだって大切なんだ」
「ラ、ライフルを・・・っ!」
粒子が集まり、ライフルを造ろうとしたが、途中、粒子が弾け飛んだ。
「ま、魔力切れ・・・」
「あんな大技使えばそうなるな」
さらにアリアに近づいていく。
「負けをその身に味わえ」
「あ、ああ・・・」
アリアは絶望していた。攻撃も防御も魔力がないと使えない。目の前の相手を倒せない。今まで下に見ていた相手が今は上に感じる。
「これで終わりだ!!!」
アリアに突貫し、村正を振るう。
アリアはただ立ちすくんでいただけだった。
ドッ
村正の峰で腹を打つ。
アリアは膝から崩れ気絶する。
気絶する直前、1粒の涙を流して小さな声で呟いた。
「お・・・とう・・・さま・・・」
闘いは大牙の勝利に幕を降ろした。