ギルドへ登録 「私は大牙が羨ましい」
遅くなりました。
すみません。
まさか、あんなことになろうとは・・・(笑)
side:大牙
俺と茜は今、ギルドへ登録するためにギルドカウンターへ向かってる。
しかし、究極の2択だった・・・
こんな面倒くさいことをしたくないし、かといってギルドに入れば50万手に入るわけだし。
結局、ギルドに入る方を選んでしまった。やっぱりこの性格は変わんないなー。この性格のせいでどんだけ苦労したことか・・・
金の方はすぐには渡されず、成果をだしたらあげると言われた。
茜はしっかりしてるなー。俺は金をくれたらすぐにトンずらしようと思っていたからな。まるで俺の考えが筒抜けだ。
すると、道中、茜が俺に聞いてきた。
「大牙は翼人なのによく人から嫌われなかったな」
「あぁ、そのこと。それは俺の翼はお前のと違って、出し入れできるからな」
現に今、俺の背中からは翼は出てない。誰が見ても人にしか見えない。茜は翼が見えてる。
俺は基本的にパフォーマンスをやる時くらいしか出さない。だから、普段は人として過ごせるし、観客の前では翼を出した後、すぐに消してしまうから人々は結局、パフォーマンスの一部だろうと思っている。
「そうか。珍しいな。そんなに翼を出さずにいられるなんて」
「そうなのか?」
「あぁ、そうだ。私や他の翼人たちも翼を消すことができるが1日の4分の1位しかもたない。なにより、息苦しいというか窮屈というか、体に違和感を感じるんだ。」
ということはの数時間の間は人として動ける訳か。その間に会わなくてはいけない人に会うということか。
「翼が生えると体の構造も変わってしまうんだな」
「そのようだ。だから私は大牙が羨ましい」
「・・・・・・」
俺は何も言えなかった。
そう言われたって俺は特別なんかじゃない。まだまだ弱いし、ちょっとのことで悲しくなったり、怒ったりするし、護れた人も護れなかった。
俺も茜と同じ弱い人・・・いや翼人だ。
けど、茜には言わない。言ったら、茜の何かに傷をつけそうだったから。
「ほら、何をボーっとしてる。ついたぞ」
ハッとなり、顔をあげた。
目の前には腰までの高さしかない扉があり、中の様子が見える広間の前にいた。
そうか、もう着いたのか。
「ここはギルド内の中心でもあり、主に依頼を受けたり、雑談や話し合いもできる。一応、料理や酒、飲み物も注文すれば出てくる」
そう説明して茜は中に入った。俺も続いて中に入る。
中は薄暗くて、木で出来た長テーブルと長いすが数個並んでいた。奥の方には少しでかい台所の様な所があり、左側には受付フロントみたいなのがあった。
この広間にいる人はざっと見ても10人とちょっとしかいない。これでギルド全員なのだろうか?
というか、何だ?この視線?軽蔑するような、邪魔だと感じさせる嫌な視線だ。
こういうのは無視無視。あまりそうやって考えちゃうと自分を保てなくなっちゃうからね。
「マドリョワさ〜ん!」
茜がいつの間にか受付フロントみたいな所・・・おそらくあそこがギルドカウンターだろう。ギルドカウンターにいた。
茜はそこにいた女の人と話している。
「あら、茜ちゃん。相変わらず元気ね」
「はい、ありがとうございます」
「元気な娘は私も好きだわ。ところで、今回は依頼を見に来たの?」
「いえ、新しい仲間を連れてきました」
「新しい仲間ですってっ!!それは本当!」
「は、はい、そうです。私の後ろにいるのがそいつです」
さてさて、俺の出番ですか。
スッと、前に出て茜の隣に並ぶ。
「光陰 大牙です。色々な事情のため、止むを得なく、ここのギルドに入ることになりました。よろしくお願いします」
まっ、主に隣にいる金髪のせいだがな。
おっと、睨むな睨むな。事実じゃないか。
俺が言い終わるとマドリョワさんだっけ?が、ぶわっと目から涙が溢れだした。
「う、ううぅぅぅ~、あ、ありがとうございますぅ~」
マドリョワさんは急に俺の手を掴んで、泣いた。
な、何で急に泣いたんだ?俺が何かしたのか?
「ど、どうしたんですか?」
「す、すみません。ここのギルドは人数が少なく、しかも、最近、入ってくるのがいなかったので・・・つい、嬉しくて~」
なるほど。確かに人数が少ないことはわかっていた。人数が少ないと色々と不便だしな。それに最近、入ってくる人がいなっかったから困っていたんだろう。そこに俺が入るというものだから感動したということか。
はぁ~、よかった。俺が何かしたのかと思ってしまった。
「ほら、マドリョワさん。落ち着いて、しっかりしないと。」
「グスッ・・・はい、そうですね。・・・ふぅ、それではあなたをここのギルドに登録させていただきます。このカードを手に持ってください」
先程、泣いていたのが嘘のようにマドリョワさんははしっかりとしている。
差し出されたのはただの白紙のカード。俺はそれを手に取る。そして、持つこと数秒、文字や線が浮かび上がってきた。
「それはギルドカードです。自分の魔力を流すことで、自分自身の情報がわかります」
カードには名前、年齢、使用武器、魔術名が書かれていた。
「使用武器というのはこれからあなたが戦闘時に扱える武器です。武器は魔力から生成されて、あなたに適した武器を翼を通して作られます」
「つまりこういうことだ。フッ!」
茜が手を前に突き出した。すると、翼から光の粒子が集まり、手の中で剣の形になった。
「魔力を練ると、そこに書かれている武器を出せる」
「なるほど」
「つづいて魔術名です。魔術名とは魔力を使うことで魔術を放てます。魔術には2種類ありまして、攻撃魔術と防御魔術があります。まず、攻撃魔術ですが欠点があります」
「欠点?」
「攻撃魔術は単体では使えないのだ。いや、使えるのだが基本的には弱い。」
マドリョワさんが言っていた欠点の意味を茜が説明してくれた。
それって、攻撃魔術意味あるのか?
俺が疑問に思っているとすぐにマドリョワさんが補足した。
「あっ、ところがですね、攻撃魔術は武器を強化してくれるのです。例えば、火の魔術でしたら武器に火の属性が付加されます。他にも色々あり、ただ攻撃力があがったり、相手の魔術を無効にするなど十人十色にあります」
ただの武器も攻撃魔術を使えば強くなるのか。
「次に防御魔術ですが、必ず1人防御魔術は持っていまして、自分の戦闘経験によってあがります。防御魔術は全員同じ魔術名で、シールド、といいます。
それでは、すみませんが、ギルドカードをこちらに一時返させてください」
俺はギルドカードをわたした。そしたらマドリョワさんは困った顔になった。
「魔術名が不明?さらに、武器が刀に拳銃に翼?一体どういうこと?」
それを聞くと茜が目を輝かせながら驚いていた。
「武器が3つもだと!普通は1つだけなのに・・・流石だな、大牙!」
「ちょ、ちょっと待て!多分、それはこのケースに入っている物だと思う」
俺はケースから刀と拳銃を2人に見せる。
そしたら少し納得してくれたが、
「う~ん、武器が複数使えるのは分かりましたが、残りの翼が武器なのがわかりませんし、魔術名が不明など今まで見たことないですし・・・」
「翼が武器なのってそんなに変なのか?」
マドリョワさんが唸って考えている間に茜に聞いてみた。
「あぁ、翼というものは魔力を外に出すものだ。ようはポンプだと考えればいい。移動手段としては使えるが、武器には使えないと思うぞ」
「けど、実際にカードに書かれているしなぁ」
翼は武器としては使えないのに何で俺のギルドカードには書かれているんだ?それに魔術名が不明というのも気になるし。
俺も考え始めたところでマドリョワさんが結論を出してくれた。
「仕方ありません。この件に関しては追々、考えることにしましょう。後からわかるかもしれませんから。
それではギルドに登録します。少々お待ちくださいませ」
マドリョワさんはカウンターの下からファイルを取り出した。そしたら、サラサラと書き、俺にギルドカードを渡してくれた。
「これであなたもここのギルドの一員です。また、ギルドカードは自分の証明書みたいなものですので、大切にしてください」
「やったな大牙!これでお前も正式なギルドのメンバーだ!」
そんなに喜ぶことか?ただカードに触れて、ファイルに自分の情報を書いただけだぞ。
けど、そんな無粋なことは言わない。こんなに満面な笑顔で喜んでいるんだ。言わない方が得策だろう。
「それで、これからどうするんだ?」
「あっ、そうだな・・・1つ依頼に行ってみないか?」
「いいのか?入ったばかりなのに行っても?」
「大丈夫だ。簡単な依頼にするから。マドリョワさん、依頼のファイルを」
「はいはい、全く忙しない娘ね。どうぞ、お好きなのを選んでください」
マドリョワさんは1冊のファイルを出してくれた。それを茜はパラパラとめくって見ている。
というか茜、そういう意味じゃないんだ。ほとんど戦闘経験がないノコノコ入ってきた新人が、依頼を図々しくやってもいいのかと言っているんだ。
あぁ、またあの視線・・・さっきまで意識してなかったのに~。
「よし、これにしよう!」
って、はやっ!数ページしかめくってないぞ。
「お、おい、そんな簡単に決めていいのか?」
「大丈夫だ。ゴブリン10匹倒すなど簡単だ」
「まぁ、ゴブリンなら・・・でも10匹か・・・」
ゴブリンは一般人が武器を持って倒せる位だ。けど、集団で来られたらやっかいだ。だから依頼してきたんだろう。
・・・じゃなくて!視線!この視線重いんだよ!
挨拶位したほうがいいよな?俺は図々しいガキではなく、礼儀正しい青年というアピールをしなければ!
「茜、やっぱり依頼は・・・「手続きお願いします。」・・・!?」
こいつにはこの視線が感じないのだろうか・・・
もう仕方ない・・・手続きも済んでしまったし、行くしかないか。
「それでは大牙、行くとするか」
「そうだな・・・行く・・・「失礼、そこの殿方」・・・か?」
俺は後ろから声をかけられた。