始まりの出会い
この世界には、ユグドラシルという世界樹を中心に9つの世界が繋がっている。
その中にある人間界に住む青年とその青年の住む屋敷の人たちの物語である。
窓のカーテンから差し込む日の光。小鳥がさえずる音。
その音と光で彼は朝だと認識する。
「・・・・もう朝か。。。。」
「さてと、、、修繕見積書は見直したし武器生産も順調そうだな、あとは、新規雇用の件もあるなぁ」
「失礼します。スコターディ様、エルピーダです。」
ノックとともに女性の声がする。
「うん。全然入って良いよ。」
彼の了承を得ると彼女は扉を開けて中に入った。
「というかね、、、、その名前と様で呼ぶの止めてくれないかな。。。。?」
苦笑いする俺に彼女は笑いかける。
「入るときだけなので気にしないで?タナト。」
悪戯に笑うその顔は、キラキラと輝いている。
「ん。その可愛い顔いつもしててほしいなぁ。。」
「。。。。?!。。。。も、もう恥ずかしいこと言うわね。。。。」
ほんとのことを言っただけなのに殴られた。。。グーで。。
赤面した顔も可愛いんだけどこれを言うとまた殴られそうだからやめとこ。。。。
「イテテ。。。そうそう。はい。修繕見積もりと武器生産の書類。」
「あ、ありがと。。朝食の支度ができているから早く食べにいってらっしゃい。あの娘たちまってるわよ?」
「うん。すぐ行くよ。この新規雇用だけだから。」
「あ、その書類はもう捨てて良いわよ。ジャックさんが面白い娘見つけたからと言ってこっちに寄越してるから」
「そっかそっか。ジャックまたいつ帰ってくるのかなぁ。。。また稽古してもらいたいなぁ。」
「ジャックなら二ヵ月後に一回帰ってくるらしいわ。まぁ、二・三日だけだけどね。」
「本当に?!いやぁ二・三日でも嬉しいな!。。。。でも、、、、。」
「あの方の考えを私たちは受け取ったのよ。あの方の願いなのだから私たちはそれを見守らないと。」
「わかってるさ。。。それより朝食を食べに行こう!」
そういい俺たちは食堂へ向かった。
ジャックはある目的のために奴隷や差別などで孤児などになっていた俺たちを保護してここにすまわせてくれている。
俺たちにとって命の恩人だ。
でも、ジャックは恩人と思うなって言ってる。
俺は目的のためならなんでもする。お前たちをここに住まわせているのも目的のためだから恨んでくれてもかまわない。
といっていた。
目的の理由も教えてくれた。俺達は目的のためにしても家や家族をくれたことに感謝してる。
俺達は彼の目的のためなら。。。。
「おはようございます♪タナト様♪マリア様♪」
食堂の目の前には待っていたかのように女の子が3人集まっていた。
「うん。おはよう。だからね?様は要らないよ?」
みんな様付けするの止めてくれないかなぁ
「まだ朝食食べてないの?タナトが好きだからって朝食食べるの待たないの!」
「そういうマリア様も朝いつもタナト様の部屋に行くじゃないですか。知ってますよ?マリア様がタナト様の部屋に入るとき。。ムグッ。。。。!」
マリアは慌てて女の子の口を塞いだ。
「何のことかしらねぇ?(先を言ったらどうなるか。。。。わかってるでしょうね?ニコニコ)」
「え?部屋に入るとき何かしてるの?」
「なんでもないですハハハハハ(もう言いません。ごめんなさい!)」
「そうそうなんでもないのよ!(よしよし良い娘ね♪)」
「?まぁいいか。じゃあ朝食を食べよう♪今日のメニューは何にしようかなぁ♪今日は焼き魚にしよう♪」
「じゃあ私も♪」
「私も焼き魚にしよ♪」
「わ、私も。。。。焼き魚で」
「あなた今週ずっと焼き魚じゃない。違うの食べなさいよ。」
「今週は焼き魚の日だからね♪焼き魚定食おねがいしま〜す。」
焼き魚の配膳係の女の子の一人に声をかけた。
「あ、はい!どうぞ♪(大盛り)(やった♪タナトさんと手が触れた♪)」
「ありがとう♪じゃあいつもの席で待ってるね♪」
「はいはい。じゃあ私は煮込みうどんを。」
「はぁい。。どうぞぉ。。(あぁ、今日からメニュー変わるかと思ったのになぁ。。。。)」
隣にいた配膳係は狙いを間違えたようで残念そうな顔で配膳していく。
「。。。。あなた後でお茶とデザートを席に5人分用意してくれない?」
「え?。。。あ、はい!マリア様ありがとうございます!」
「フフッ♪」
マリアが戻ってくるとタナトの周りに3人組以外の女の子もいっぱい集まっていた。
「ここだよ〜」
タナトがポンポンと自分の隣の席を叩いたのでそこに座った。
「いつも通りだけど多いわね。。。。」
「みんなで食べると美味しいから良いんじゃない?ね?」
とタナトが言うとみんなが一斉に「はい!」と元気よく返事をした。
(本当にこの統率力は軍以上ね。。。。)
「手を合わせて。いただきます。」
「「「頂きます!」」」
みんな元気よく言うとわいわい朝食を食べ始めた。
「みんな今日も元気だなぁ♪」
「そうね。元気なのは良いことね。あ、忘れてたわ。新規雇用のこと。」
「ん?どんなこと?」
「あと一時間位で新規雇用の娘来るのよ。」
「え。そうなの?早く食べないとなぁ。。。。。あれ?」
タナトの箸が急に止まった。
「どうしたの?」
「焼き魚がない。」
焼き魚があったところを見るとそこには骨も残っていない。
「。。。。モグモグ。」
ん?足元から食べ物を食べてる音がする。。。。
「お前か!俺の焼き魚ちゃん食べたのは!!」
勢い良く椅子を引くとそこには白髪の女の子が焼き魚の骨だけを口から出してるところだった。
「うん。お腹空いてた。。。。」
「この娘!」
「知ってるの?」
「新規雇用の娘よ。何で一時間早く来てるの?連絡はどうしたの?何でタナトの椅子の前に居るのかしら。。。。?」
「ジャックがここまで連れてきてくれた。歩いてたらここにきた。」
「ジャックが来てるの?!」
「うん。ジャックがタナトに飯はゆっくり食べな。お前の部屋に居るから。だって。」
「そうなんだ。。。来てるんだ。。。じゃあ、ゆっくり食べようか。」
タナトはその少女を持ち上げて膝にのせた。
「「「良いなぁ!」」」
周りの女の子達が一斉に大声を上げた。
「そう言えば君の名前は?」
「あたしは、嬢ちゃん。」「え。。。。」
「名前がないのよその娘。」
「そうなんだ。てっきりジョウ・チャンなのかと。」
「なわけないでしょ。。。」
「はい、箸。使い方わかる?」
タナトに箸を渡されたが少女は使い方がわからず箸を握ってオカズを刺した。
彼は少女から箸を取り
「使い方知らないのなら、はい。あ〜ん。」
食べさせてあげた。
「「「良いなぁ良いなぁ。。。。」」」
(この娘達すごい泣きそうな目で2人のことみてる。。。)
「美味しい?」
「うん。美味しい。」
タナトは少女が優しく微笑んで雛鳥のように口を開けるのでゆっくり食べさせていった。
「デザートお持ちしました♪。。。。え。」
先ほどマリアがデザート頼んでおいた娘が少女を見て止まっている。。。。
「この娘。新規雇用の娘なのよ。お腹空いてたみたいで。」
「は、はぁ。。。(うらやましいなぁ。)」
「私のデザートはあの娘にあげてちょうだい?」
「あ、わかりました。どうぞ。デザートです。」
「ありがと♪デザートだって食べる?」
「うん。」
「はい。スプーン。これは大丈夫だよね?」
「うん。大丈夫。」
少女は返事をするとデザートのプリンを食べ始めた。
「(マリアいつもデザート頼んでくれるのとデザートありがと♪)」
「(知ってたの?)」
「(多分そうじゃないかなぁって思っただけ♪)」
そうこうしてる内に少女と周りの全員は朝食を食べ終えていた。
「じゃあ、俺とマリアと「嬢ちゃん」はジャックのところに行くとしようか。」
俺達はみんなに手を振ってジャックの居る俺の部屋に向かった。
「タナトです。入るよ。ジャック。」
「おぅ。」
扉を開けるとそこにはジャックがいた。二年に一度会えるかわからないから久しぶりだった二年も居ないのは新規雇用の人探しをしているからだ。しかし、1つの世界を二年くらいで回っているのでなかなかすごい。
「てかさ。自分の部屋にノックして入るなよ。」
「社交辞令社交辞令♪この娘のことだけど。」
「あぁ。名前はタナトお前が決めてくれ。お前が今日から父であり、恋人だからな。」
「え。。。えぇ?!」
「恋人とはどういうことですか!?」
「お、食い付いてきたなマリア♪しかも父の方はスルーか♪」
「からかわないでください!大事なことです!」
「すまんすまん♪まぁ、恋人や妻は何人でも作っていいからな?タナト。このヴァンヘルムは一夫多妻でもあり、一妻多夫でもある。そういうことだ。」
「そういうことってわけがわからないんだけど。。。」
「まぁ恋人って言うのは言い方が変か。面倒を見てくれってことだ。」
「はぁ。。。。」
「それで良いな?嬢ちゃん。タナトは好きか?」
「うん。大好き。」
「そうかそうか。じゃあ俺は今から仕事だ。ミッドガルドで護衛の仕事とかあってな。またくるよ。」
「わかりました。一つ質問いい?」
「おぅ。」
「目的は何処まで進んだ?もうそろそろ俺達が必要になるかな?」
「そうだな、後一年半くらいだな。一年半後に必要になる。頼んだぞ?」
そう言い窓から彼は出ていった。淋しそうな顔をしながら。
「後一年半。。。。そうだ君の名前は何が言いかな?」
少女は首を傾げていた。
「じゃあ、そよ風のギリシャ語の「アウラ」でどうかな?」
「あたしはアウラ。。。そよ風。。。好き」
彼女は気に入ってくれたみたいだ。
「これからよろしくアウラ。」
「よろしくタナト。」