兄貴と猫
「お嬢ちゃ〜ん、あんなのがお兄さんとかどうしてるのね。もうあんなのは化け物じゃん」
こういう絡み酒あたし苦手なんだよね。
特に兄貴を侮辱されるのは無性に腹が立つ。
「あたしの兄貴を侮辱しないでくれない? 姿云々は兄貴の能力なんだから別に良いでしょ。兄貴はかっこいいんだからアンタになんて言われようが関係ないわよ」
「あっ、そう? なら言わせてもらうけど、あんな害虫外に歩かせるなよ空気が穢れて気色悪いだろ、あ〜臭い臭い。吐き気もあの害虫のせいだなこりゃ」
「んだと、もういっぺん言ってみろ!!」
流石のあたしでもこれ以上は看過できない。
つーか腹立ちすぎて我慢できっかよ
「言わせておけば良い気になりやがって、テメェは見た目に気遣ってるだけのただのゴミだろ! 鏡みろや鏡……つーかさ、能力なんて人それぞれなんだからアンタみたいに突っかかるやつがいるから異形能力が評判を下げるんじゃねえのかよアァ!?」
あたしたちの会話を聞いていたってのに兄貴は許そうとしてる。
「気にするな猫寝、あの人の意見も正しいんだ」
「でもあたし許せないっすよこんなの!!」
兄貴は誰になんて言われようともあたしのヒーローなんだ。
ここまで言われる筋合いはねえ。
「うちの妹がご迷惑をかけてすみません。お詫びと言ってはなんですが、どうぞこちらを」
「お前みたいな害虫からの贈り物なんているかよボケ」
「おい、もういっぺん言ってみろ脳天かち割るぞ!!」
「やってみろお前みたいな雑魚能力に負けるとでも思ってんのか?」
「表でろや!!」
背中を撫でるような寒気を感じたあたしが兄貴の方を見ると……流石に怒ってました。
「猫寝、気にするなと言っただろ。これ以上も他人に迷惑をかける気か?」
「分かりました。兄貴がいいなら、あたしは…………」
「逃げんのか腰抜けが!!」
「逃げるとは失敬ですね。猫寝が喧嘩をしたら貴方が死んでしまうから止めたんですよ」
「そんなのやってみねえと……」
「やらなくても分かりますよ。裏社会にいるのなら"鼠狩り"の二つ名を聞いたことぐらいありますよね」
「あっ、あるに決まったんだろ。組に迷惑をかけた連中が軒並み頭だけもぎ取られて殺された様からつけられてんだからよ」
「猫寝がその鼠狩りだ」
「…………そんなら、アンタはまさか……"黒走蟲"か!」
「この見た目で理解されないというのも難儀なものですね」
男はようやく自分の立場を理解したのか歯を慣らし震え始めた。
「兄貴、もう殺っちっていいっすか?」
「ダメだ。カタギには手を出すなと親父からも言われているだろ」
「でもよこいつの胸ポケットの腕章を見るにカタギじゃないっすよ。殺っちゃいましょうよ。兄貴をあんだけコケにしたんすよこいつ……はらわた煮えくりかえってんすよこっちはよ!」
「偽造の可能性もある。慎重にことを運ぶべきだ」
「偽造だなんて、そんな馬鹿なことしますかね」
「する奴はするんだ。した時点でどうなるかは理解できているだろうにな」
「兄貴のその楽しそうなところ好きっすよあたし」
「…………いっ、嫌だ死にたくない!!」
こいつこの後に及んで謝りもせずに逃げる気かよ。
「逃がすかよ!!」
這いつくばらせるなり、こいつは命乞いをする一方で話にならない。
「兄貴〜、本当にダメっすか?」
「親父から連絡だ、少し待て」
親父からの電話ってことはただ事じゃないって考えるのが妥当かな。
「猫寝、親父から許可が降りた」
「了解。そんじゃ苦しまねえように一撃で捥いでやるっすから感謝しながら逝け」
「……やっ、やめ」
「はい掃除完了っと。兄貴に謝りもしなかったことは許さねえからな。兄貴〜見てくれたましたか? 今日も猫寝は兄貴を害するやつを消しましたよ。撫でてくださいよ〜」
「はいはい、仕方ないな猫寝は」
「ゴロゴロゴロゴロ」
兄貴のこの手つき本当に気持ちいい。
「イッキゅぅくぅぅぅ」
「外でなんて声を出してるんだ!!」
「……だって兄貴の手つき、気持ちいいんすもん」
「誤解されるような言い方をするなと言ってるんだ!」
「良いじゃないっすか、あたしと兄貴の仲っすよ」
「だとしてもだ」
「ちぇ〜、兄貴のバカ」
「帰ってから覚えておけよ猫寝」
帰ってから……もしかして!!
「覚えてますからなア・二・キ♡」
これはあたしと兄貴の普通とは違う日常の話っす。
おしまい
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
ちなみにフルネームは猫寝またたびと黒蟲家蔵です
殺されたお客さんは袋島立袋です




