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第2話『なぜこうなったかというと~』

第2話です。今回はちゃんと旧ニチアサの時間に間に合わせられて安堵してます。

「リア様、これは……」

 

 30分ほど経っただろうか。私は回復したブルーノと共に村へ戻ってきた。

 正直、不安が大きかった。レッドが向かったとはいえ、私達が脱出した時点で火を放たれていたのはこの目で見ている。ゴブリンは軍勢で攻めてきていたし、外壁を崩され侵入されていてもおかしくはない。村人達は無事かしら……。

 そんな不安と共に戻ってきたわけだけど……目の前に広がる村の様子は私の想定とは違う様相を呈していた。


 焼け落ちた家屋。崩れた柵。折れた梁。破壊の痕は確かに残っていた。

 だが、その瓦礫の中で、村人たちはすでに動いていた。

 

「石材は広場の方だ! そっちは木材を!」

「怪我人は教会に運べ! 無理するな!」

 

 家々を焼いていた炎は全て消えていた。村人達は怪我人を運んだり、家屋の修理を始めている。

 飛び交っているのは怒号ではない。必死さと、確かな前向きさを含んだ声だ。思いの外満ちている活気に、私は驚いていた。


「姫様!! 皆、姫様が戻られたぞ!!」

「よくぞご無事で!!」

「騎士殿!? その血は……」

「心配は無用だ。傷はもう塞がっている」

 

 私達に気づいた村人が数人、駆け寄ってきた。

 私は慌てて表情を作る。驚き呆けている顔なんて、王女が民に見せるものじゃないわ。


「心配をかけました。勇者様のお陰で、私は無傷です」

「おお、それはなによりです」

「それで、勇者様は今どこに?」

「今は広場の方にいらっしゃいます」

「よろしければ案内します。ご覧の通り、資材運びで混み合っていますので」

「ええ、よろしく」


 私は村人に案内されるまま、村の広場へと向かった。



「本当に、なんとお礼を言えばいいか……!」

「あの~、そろそろ頭を上げて欲しいのですが……」

「何度感謝してもし足りません! 勇者様が来られなければ、今頃この村は火の海でした。貴方様はこの村の恩人、救世主でございます!」

「いえ、ですから……」

 

 運び込まれた怪我人が寝かされた広場の片隅では、村長が深々と頭を下げていた。その視線の先で、当惑した様子でいる真っ赤な鎧の戦士。テンセイレッドだった。

 今は兜を脱いで顔を晒している。


「村長、ずっとあの様子なの?」

「はい。勇者様がゴブリン達を殲滅し、広がりつつあった炎を一瞬で鎮めてからずっと、村の総意として感謝を伝え続けています」

「なにせ勇者様が戦っておられた時代を生きた人だからな。本人に会ったことはないらしいけど、あの人にとっちゃ再会にも等しいんだろう」


 話しながら歩いていると、どうやら向こうからこっちに気づいたらしい。


「では、知り合いに呼ばれているのでこの辺りで!」


 私を理由に逃げたわね、無礼者。まあ、助けてもらったしチャラにしておくけど。

 テンセイレッドは私達の方へ駆け寄ると、安堵の表情で微笑んだ。


「2人とも、無事みたいだな」

「助けていただき、ありがとうございました。私とブルーノの命に加えて村の人達まで……本当に、いくら感謝してもし足りないくらいです」

「ヒー……じゃなくて、勇者として当然だぜ!」

「無礼者!」


 突然の大声に、思わず肩が跳ねる。

 声の主はブルーノだった。怒りの形相で私の前に出た彼は、レッドを睨みながら続ける。


「この御方を何方と心得る! リュコス王国第二王女、セントリア・アルジェント・リュコス様であらせられるぞ!」

「え!? 王女ぉ!?」

「貴様、リア様に対して馴れ馴れしく話しかけるなど……勇者と言えど許されんぞ!!」

「ブルーノ、落ち着きなさい」

「確かに貴様は命の恩人。しかしそれはそれ、礼を失する者にこの俺が容赦すると思うな!」


 剣に手をかけ、今にも抜刀しかねない勢いだ。まさか勇者様相手でもこうなるなんて……とにかく止めないと。


「そこへ直れ!リア様への非礼を詫びぬのであれば、この場で貴様を──」

「ブルーノ」


 語気を強めて名前を呼ぶ。

 今度はブルーノの肩がビクッと跳ね、ゆっくりと私の方へ振り向いた。

 

「……はい」

「控えなさい。彼は恩人よ」

「承知しております。ですが恩人である事と無礼である事は別です」

「だからって、村人の前で剣を抜く気?」

「村人の前だからこそ、無礼を許せば王家の威信に関わります!」

「『利口な番犬は無闇に吠えない』……忘れたの?」

「ッ……!」


 ブルーノが言葉を失う。流石に頭が冷えたみたいね。

 

「威信は剣で示すものではないわ。王家に仕える身であるなら、相手を威嚇するような態度は慎みなさい。貴方の態度で私の品格が問われる事を忘れなないで」

「過ぎた真似でした。申し訳ありません」

「謝るなら私より先に勇者様に。村の人達も驚いてるわよ」


 ブルーノの大声に足を止めていた村人達へと、私は静かに頭を下げる。村人達は気まずそうに各々の作業へと戻って行った。


「……王女殿下とは知らずとんだ無礼を働いた事、大変申し訳ございませんでした」

「「え……?」」


 私とブルーノの声が重なる。

 それは驚くほど綺麗なお辞儀だった。儀礼というよりも、洗練された所作のような最敬礼。私も、そしてブルーノも思わず目を奪われる。


「改めて名乗らせて頂きます。わたくし、赤城龍也と申します。セントリア様が王家のご令嬢とは存じ上げず、軽率な言動をした事、深くお詫び申し上げます」


 そして勇者は姿勢を正す。先程までの暑苦しい調子は消え、妙にきっちりした口調になって。

 いえ、待って。それより今なんて言った?


「アカギタツヤ……? 聞いた事もない家名だな。リア様、ご存知で?」

「いえ、初耳ね。少なくとも私が知る王侯貴族の名前ではないわね。貴方、いったいどこの生まれなの?」


 私とブルーノは顔を見合わせる。お互いすっかり疑問符だらけだ。

 困惑する私達に、彼は更に続けた。


「私はこの度、天聖王に導かれてこの世界に降り立った次第です」

「天聖王!? かつて勇者を導いたという、あの!?」

「それにこの世界だと!?」

「はい。私はこの世界とは異なる世界からやって来ました」


 そして、彼は語り出す。私達と出会う直前、何があったのかを……。


 ◇

 

『勇者よ、目覚めるのだ』

「うぅん……」


 石畳に刻まれた魔法陣の上で、赤髪の青年が横たわっている。青年は寝ぼけているようで、語りかける声への反応が鈍い。

 

『勇者よ、目を覚ませ』

「ゆ……なにぃ……?」


 声の主が語気を強める。青年はまだ目を覚まさない。目覚まし時計のアラームを鬱陶しがるように寝返りを打つ。

 

『目を覚ませ、危機が迫っているのだ!』

「おわああああ!?」


 3度目の呼びかけ。声の主が声を張り上げた。青年は慌てて飛び起きる。


「え? なに? ここどこ!?」


 青年は周囲を見回す。彼の眼前には、四方を岩肌に囲まれた薄暗い空間が広がる。この場を照らしているのは、壁に立てかけられた松明の光のみ。青年は混乱した。


「俺、さっきまで公園にいたはず……」

『目覚めたか勇者よ』

「え?」


 声のした方を振り向く。そこに立っていたのは人型のシルエット。しかし、それは明らかに人ではなかった。

 逆三角形の光る目と、輝く胸部のクリスタル。ゴツゴツと角張った体表に、丸太のような太さの四肢。それらはまるで──

 

「うわあああ!? ロボだああああ!!」

『ろ、ロボ? なんだそれは』

「しかもいかにもガワっぽい戦隊ロボ!! しかもどの戦隊のロボでもないぞ!? 初めて見るデザインだ!!」

『いや、君は何を言ってるんだ?』

「しかも喋ってる! なにこれ夢? ……うん、普通に痛い。夢じゃなああああい!?」


 突如として興奮しだすと、青年は自分の頬をつねり、そして暗闇が広がる天井へ向かって絶叫した。

 声の主は困惑しながらも、青年へと声をかける。

 

『あの……話を聞いてくれないか?』

「あっ……すみません。取り乱しました」

『う、うむ……まぁ混乱するのも無理もない。いきなり連れてきてしまったからな』


 声の主は青年の足元に広がる魔法陣の手前までやってくると、咳払いして語り出した。


『名乗らせてもらおう。私は天聖王。この世界の守護者だ』

「テンセイオー……?」

『うん?何やら抑揚が違うように聞こえたが……』

「い、いえ……続けてください」


 青年は慌てたように手をわたわたと動かす。どうやら天聖王の名前から、別の何かを連想していたようだ。

 

『故あって、君を異世界から召喚した。ここは君の住んでいた世界ではない』

「ほうほう、異世界……え!? 異世界召喚!?」

『そうだ。勇者よ、君にこの世界を救って欲しいのだ』

「えぇ……!?」


 天聖王の言葉に、一拍遅れて驚く青年。その顔は困惑一色に染まっていた。


『何故自分が、と言いたげな顔だな』

「まあ、はい……。俺みたいな普通の会社員がどうして、とは思ってますが……」

『本来であれば全てを説明するべき所だが……クッ……』


 一瞬、天聖王の姿が揺らいだ。


「大丈夫ですか!?」

『私に残された時間は短い……。今も僅かに残った力を振り絞り、君に語りかけている状態だ』

「わざわざ、そこまで……?」

『今の私に言えることは、君が選ばれし者であるという事だけだ。詳しい事はこの世界の者達に聞くがいい』

「俺が……選ばれし者……」


 青年は天聖王の言葉を反芻する。理解の及ばない状況の中で、その言葉の意味を測りかねている様子だ。

 

『だが、平和な世界で暮らす君に世界の命運を背負わせるのは、私としても心苦しい。そこでだ』


 天聖王は青年の足元を指さす。魔法陣は未だ青白い光を放っており、効力が残っている事を示しているようだ。


『君に選択肢を与える。このままその魔法陣の中に留まるのであれば、君を元の世界へ送り返そう。だが、そこから踏み出せばこの世界を救うまで戻る事はできない。勇者になるか否か、選ぶのは君自身だ』

「勇者……」


 青年は足元の魔法陣を見つめながら呟く。

 その間にも、天聖王の体は再び揺らいだ。あまり長くは悩めない事を青年は察する。


「一つだけ聞いてもいいですか?」

『ああ……一つだけだぞ』


 青年の眼差しが天聖王を真っ直ぐ捉える。

 彼の意思に応じるべく、天聖王も青年をしっかりと見据えた。


「天聖王……さん?」

『呼びやすいように呼ぶといい』

「では、天聖王。貴方が求めているのは《《どんな勇者》》ですか?」

『ッ……!!』


 天聖王の表情は変わらない。文字通りの鉄面被だ。

 だが、その表情は目を見開き、息を呑んだように見えた。


『随分と、懐かしい言葉だ……』

「へ?」

『そうだな……。何でも独りで解決しようとするような者であってはならない。強大な敵に、数多の困難に対して、より多くの仲間と力を合わせて立ち向かう。今の私は、そのような勇者を求めている』

「なるほど……」


 青年は顎に手を添え考え込む。

 ──と思いきや、次の瞬間には顔を上げ……


「それはつまり……戦隊になれ、って事ですね!」


 まるで少年のように目を輝かせながら、そう口走った。

 戦隊。聞きなれない言葉に、天聖王は首を傾げる。


『先程も口にしていたが、戦隊とはなんだ?』

「俺の世界のヒーローで、俺にとって一番の憧れです!」

『それは英雄なのか?』

「はい!最高の英雄達です!」


 青年は両手を握りしめ、熱く語り始める。

 

「老若男女の隔てなく、生まれを問わず、(しゅ)を超えて。掲げた(しるし)は違えども、己が立場に縛られず……ただ、仲間と共に力を合わせ、不可能を超えていく。そんな英雄達です!」

『……そうか』


 曇りなき顔で青年は語る。熱意をもって。決意を胸に。

 神は静かに傾聴する。動かぬ貌の目の奥に、微かな揺らぎを浮かばせて。


「正直、勇者が俺である必要を見いだせなければ、断るつもりでした。運動神経とか頭の良さとか、もっと優れている人はいくらでもいますから」

『ああ……それは当然の判断だろう』

「でも……」

 

 青年が足を踏み出す。彼の片足が魔法陣を出た。


「その採用基準なら、俺は喜んで勇者の役割を引き受けます!」

『本当にいいのか?』

「だって本物の戦隊になれるかもしれないんだ! こんなチャンス、一生かけても二度と無い!」


 青年が更に一歩踏み出す。彼の体は完全に魔法陣を出た。


「だから俺は勇者に……いや、“勇者戦隊”に俺はなる!!」


 魔法陣が光を失い、光の粒が散っていく。

 青年は今、平穏に背を向け、運命の一歩を異界の地に刻んだ。


『それが君の覚悟か。よかろう、そこに祀られている装具を……いかん、限界か……』


 天聖王の身体が先程よりも大きく揺らいだ。

 

「装具……これか?」


 青年の前には古びた赤い防具が一式、祠に祀られている。鎧の手前には、鎧と同じ装飾が施された腕輪が置かれていた。

 

『腕輪を嵌めろ……使い方は……それで……』


 天聖王の体が、足元から崩れるように消え始める。どうやら限界が来たようだ。


「天聖王……分かりました。俺、頑張ります!」

『任せたぞ。……そういえば、君の名を、まだ……』

「龍也です! 赤城龍也!」

『アカギタツヤ……いい名だ』


 天聖王の姿が消えると、辺りは一段と暗さを増した。


「異世界、か……。冷静になると、なんか凄いことに巻き込まれちゃったな……」


 手に取った腕輪を見つめ、深呼吸する。


「まあ、まずは何にせよ、言われた通りに……」

 

 腕輪を左手首に嵌める。すると腕輪は微光を放ち、祠に収められていた鎧が光の粒子となって腕輪に吸い込まれていった。


「お? おぉ!?」


 直後、腕輪が強い輝きを放ち、表面の汚れが弾け飛ぶ。更に彼の脳裏には、鎧の使用方法が映像となって流れ込んだ。


「鎧の装着に身体強化、武器は剣が一振りと変形する魔法の杖……使える魔法は五大元素……なるほど、そういう感じか」


 情報を整理しながら、浮かんできた動作に合わせて体を動かす。やがて龍也は、決めポーズを考え始めていた。


「こっちの方がいいかな? これもいいな……。これか? こうか?」

 

 その時、腕輪が赤く点滅し始めた。同時に、脳裏に機能の説明が浮かぶ。


「うおっ!? これは……警報(アラート)機能!? 近くに敵がいるのか!?」


 腕輪の光は龍也を導くように、洞窟の奥を照らし出す。


「この先に行けばいいんだな? ……よし!!」


 腕輪が示す道筋を、龍也は走り出す。

 そしてその先で……彼は助けを求める声を聞いた。


 ◇


「……以上が、私がこの世界に来た際の出来事です」

「なるほど。嘘ではなさそうね」

「リア様、信じるのですか?」


 怪訝そうな顔でブルーノが言う。

 

「祠の中は貴方も見たでしょ。彼の鎧は本物よ。それに結界は解除されてなかったし、祠の周囲に穴が空いてたりもしてないのは確認したわ」

「それは……はい……」

「そうなると……勇者様」

「はい、なんでしょう」

「天聖王は貴方に『詳しい事情はこの世界の者に聞け』と言われているのですよね?」

「ええ、はい」

「なら決まりね。貴方には私に同行してもらいます」


 私の言葉に、勇者は目をしばたかせた。


「……よろしいので?」

「元より我々の目的は、貴方が身につけている『勇者の鎧』の確保です。そこに天聖王が遣わした担い手までついてくるのであれば、想定以上の成果と言えます」

「なるほど。まさに神の思し召し、というわけですね」

「ええ。まさか、断る理由はありませんよね?」

「滅相もございません。むしろこちらからお願いしようと思っていたところです」


 そう言って勇者はペコペコと頭を下げた。

 やっぱり、さっきまでとは別人のように腰が低い。もしかして、私みたいに猫かぶってるのかしら?


「私は、この世界については右も左も分からない身。お手間を取らせてしまい大変恐縮なのですが、色々とご教示頂ければ幸いです」

「なら、これで話は成立ね」


 私は勇者へと手を差し出す。勇者は迷わず私の手を取った。


「よろしくお願いしますわ、勇者様」

「こちらこそ、セントリア王女」

「リアでいいわ。長いでしょう?」

「では、リア王女」


 握手を交わす。お互い、信頼関係を築く第一歩は踏み出せた……と思いたいわね。


「ブルーノ、貴方もよ」

「……よろしく頼む」


 ブルーノは渋々と言った様子で会釈した。

 先程からずっと腕を組んだままね。彼が恩人である事は認めた上で、露骨に敵意を向けている。

 

 ……私を守るための行動なのは分かってる。それなら私は主として、彼の矛を収める術を持たなくちゃいけない。

 けれど今の私には、その一言が見つからない。


 こんな時、リモーネが居てくれたら……。


 っと、いけないわ。このままだと顔に出ちゃいそう。シャキッとしなさい、セントリア。こんな時こそ優雅たれ、よ。


「ところで勇者様、貴方のことは何と呼べば?」

「アカギでもタツヤでも、好きに呼んでください。ちなみに、私としてはレッドと呼ばれたい所です!」

「レッド……? そういえば、テンセイレッドと名乗られていましたね」

「はい! 私にとってはとてもとても重要な名前ですので、是非とも呼んでいただきたく……」


 急に早口になったわね!?

 こっちの方が素なのかしら……。異常な熱量を感じるわ。


「その、“レッド”とは、称号のようなものなの?」

「はい! 私の世界において、赤は英雄の証にして子どもたちの憧れの色でして──」


 止まらない。あと何言ってるのか半分も分からない。

 これ、もしかして藪蛇だった?

 

 私はそっと視線を横に流す。ねぇ、どうすればいいの、という視線をブルーノに送る。

 ブルーノは眉間に皺を寄せながら、ため息を一つ吐いた。

 

「リア様、聖職者も医者も手が足りていないようです。今は雑談より、村人達を手伝うべき時かと」

「そ、そうね! レッド、貴方もそう思うでしょう?」

「──ええ、その通りだと思います。すみません、熱が入ってしまって」


 そう言ってレッドは、申し訳なさそうに頭を搔く。

 出会った時もそうだったけど、彼は人を助ける事を何より優先する性格らしい。悪人でない事だけは確かね。


「では日が落ちる頃に、広場の石像前で落ち合いましょう」

「分かりました。また後ほど」


 そう言ってレッドは兜を被り直すと、瓦礫を撤去している人達の方へと去っていった。

 その背中を見送り、私は怪我人が寝かされているテントへと足を向ける。


「リア様、あのような男を本当に信じるのですか?」


 ブルーノが声をひそめて問いかけてきた。

 

「相手と信頼を築くには、まず信じる事からよ。それに、私達はまだ彼を知らない。信用ならない相手なのかすら、判断するには早い段階よ」

「考えあっての判断である、と」

「そういうこと。だからブルーノ、彼を疑う役割は貴方に任せるわ」

「……分かりました」


 それだけ言うと、ブルーノは何も言わなくなった。

 これで良かったのかしら。後でまたレッドに突っかからないといいんだけど……。


「姫様! よかった、来てくださったのですね!」

「ええ、お手伝いします。手が足りてないテントはどちら?」

「あちらの第三テントをお願いします!」


 悩んでいる暇は無さそうね。目の前に助けを求める民がいる。なら優先すべきは、民の不安を除く事だ。

 テントに寝かされた怪我人の隣に腰を下ろし、私は治癒魔法を発動する。

 剣を持たない私には、このくらいしか出来ないから……。



 

(あれが勇者だと? 認めるものか……!)


 民を癒す主の背に立つ騎士の内心を、まだ誰も知らない。

序盤の青は赤と対立しがちor赤にクソデカ感情向けがち。


感想頂けますと励みになります。次回もお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
さすが社会人だ、目上の人への振る舞いがちゃんと出来てる。 なおオタク特有のアレはどうあっても隠しきれない模様w
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