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混沌の十二日  作者: 藤原時照


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二日目(3)

 この日、僕は一歩も家を出なかった。

 ずっと昨夜のことを考えていた。

 お婆さんに触れることで、僕は現世と幽世の秘密を知った。

 あの場ではかなり多くの情報が流れ込んできたが、ほとんど忘れてしまった。

 その忘れてしまったことが、現世に持ち込んではいけない情報、ということは憶えている。

 いま憶えていることは――

 この世が混沌に浮かぶ泡だということ。

 幽世(かくりよ)現世(うつしよ)と混沌の間にあるということ。

 望むもの、あるいは恐れるものが具現化する、ということ。

 寝入り端に金縛りにあったり心霊現象を体験したりする人は、半分だけ幽世に入った状態で、ふと考えてしまったことが具現化したに過ぎない。

 要するに、自分の妄想に取り込まれたのだ。

 僕はその具現化に気をつけるべきだろう。

 幽世でうっかり妙なことを考えてしまえば、それが具現化するかもしれない。

 自分で心霊現象を引き起こし、それに取り込まれてしまうかもしれない。

 だが、それを利用する道もあるのではないか。

 僕には繰り返し見る夢がある。

 幽世でそういった夢に迷い込んだとしたら――

 

 たとえば一者の夢、

 一者は、僕がものごころついた頃には夢に現れていた。それは畏れを感じる存在。前にいるだけで、その威圧で潰されそうになる。僕はただ伏して耐えるだけ。一者の前では、自分のいくつもの前世/いくつもの生と死を体験することがある。僕は、一者のゲームアバターのひとつなのかもしれない、と思っている。以前、僕は一者の夢から、何かを現世に持ち出そうとした。そして失敗した。あれ以来、一者の夢は見なくなった。でも、あそこには、現世と幽世の秘密のすべてがあると思う。現世とは、一者が見ている夢なのかもしれない、そう思うこともある。

  

 たとえば神域の夢、

 僕はいくつもの神社の夢を見る。神社は僕の成長とともに大きくなっていく。たぶん、それらは僕の神社。神になる夢は、ままならない状況にあり、欲求不満であることを意味する、なんて説もあるけれど、この夢は違う気がする。

 

 たとえば食べる者の夢、

 僕の夢の中には、人の魂魄を食べる存在が現れる。僕はただ逃げるだけ。食べられた人は、生ける屍になるか、悪魔憑きのようになる。人の恐れる姿を採るらしく、子どもの頃は某特撮シリーズの怪獣の姿をしていた。大人になってからは、人間の姿が多い。

 

 たとえば宙を飛ぶ夢、

 飛ぶ夢は、束縛から解放されたいなど、欲求不満の状態を意味するらしい。でも、僕の夢では、目覚めているときには使えない器官を使い、気のような何かをめぐらすという風に、飛ぶ方法がきちんと確立されている。ただし、夢の中でも、夢の種類によって、飛べる高さが違う。地面すれすれしか飛べないケース、人の身長より少しだけ高く飛べるケース、空高く飛べるケース。飛べる高さは欲求不満レベルに関連しているの?

 

 たとえば見知らぬ場所の夢、

 何カ所か繰り返し夢に見る場所がある。どこかに実在するのではないか、と思った時期もあった。でも、いまでは、あれらの場所は現世にはなく、自分が創造した場所だと思っている。あれらの場所は、死んでから移り住む場所で、現世で体験したことが盛り込まれて行く、という気がする。生きる意味とは、死後に自分が住む世界を創ることかもしれない。

 

 幽世で自分の夢に迷い込む可能性を考え、僕はよく見る夢をリストアップした。

 入ってみたい世界もあれば、入ったら終わりだと確信できる世界もある。

 考えていたら、人に知られたらどう思われるのだろう、と心配になった。

 誰かと一緒に迷い込むような羽目には陥りたくない。

 そのあと、僕は幽世で起こり得ることを考えた。

 そして、気づくと日が暮れていた。

 昼はカップ麺で済ました。

 夜も面倒になって適当になった。

 パスタを茹で、レトルトのミートソースをかける。

 ただそれだけの食事。

 食事以外にしたことと言えば、キヨに催促されて、チョコの欠片を渡したくらい。

 そして、僕はまた同じ作業に入る。

 ときどき頭皮にキヨを感じた。

 でも、僕は作業を続けた。


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