十二日目(2)
「おとうさん、行くよ。早く早く」
「ちょっと落ち着きなさい」
今日はゴールデンウィーク最終日。
家族三人で記念写真を撮ろうということになった。
撮影場所は、清美が南町田のグランベリーパークをリクエストした。
寧々もそれで良いと言うから、僕たちはこれから車で出かける。
僕がドアのロックを外すと、清美はすぐに助手席に乗り込んだ。
助手席には清美用のチャイルドシートが常時セットされている。
「キヨちゃん、たまにはおかあさんと場所代わらない?」
「やー。ここがあたしの指定席」
「おとうさん、もうキヨちゃんは小学校の一年生なんだから、チャイルドシート要らないんじゃない?」
「そうだね。そろそろはずすか」
「やー。あたしのレカ〇とっちゃやだ」
小学生になっても子どもがチャイルドシートを嫌わないというのは、かなり珍しいのではないだろうか。
ひょっとしたら、好き嫌いの話ではなく、チャイルドシートは助手席が自分のものだと主張する、席とり用のアイテムなのかもしれないが。
「高速へゴー」
清美は高速をリクエストするが、南町田へ行くのに高速は使わない。
「南町田に行くなら高速は使わないよ」
「えー、じゃあ、バイパス」
「保土ヶ谷バイパス?ちょっと遠回りかな」
「いいじゃん」
「キヨちゃん、わがままー」
「ぶー」
寧々が僕の側につくと、清美は自分の主張を引っ込めた。
こうして、僕たちは南から246を使って目的地に到着した。
ゴールデンウィークは昨日で終わり。
道路は空いていたし、グランベリーパークも混んではいない。
駐車場も待たずに入ることができた。
グランベリーパークに入ると、僕の心は不思議な感覚に満たされた。
それは、大事なものを失ったような胸苦しさを伴うものだった。
以前ここに来たのは、確か清美が二歳の頃だ。
――もう四年、いや、そろそろ五年か。
感慨にふけりかけたが、僕はあることに気づいてしまった。
グランベリーパークは、まだオープンして二~三年のはず。
清美が二歳の頃は、まだ工事中だ。
でも、僕は憶えている。
食べ物の味。
ドリンクの味。
キヨと二人の思い出。
キヨ?
二人?
僕は清美をキヨと呼んだことはない。
それに、僕たち家族はいつも三人で出かけていた。
清美と二人だけで出かけたことはない。
『おとしゃん、かたぐうま』
記憶の中のキヨが僕に語り掛ける。
キヨ?
清美?
視界が揺らいだ。
「おとうさん、どうしたの」
清美が心配そうに僕を見ている。
「疲れたときは糖分よ」
寧々が店に入ろうと促す。
「あそこのドリンク飲みたい」
清美はテイクアウトが良いらしい。
僕はセルフタイマーをセットした。
リモコンアプリを使うと手に持ったスマホが写って見苦しい。
セルフタイマーの方が良い。
ここは少し人の密度が低いエリア。
混んでいるところで三脚を出すのは気が引けたからここに来た。
ここでス〇ーピーの像と一緒に家族写真を撮る。
もちろん、レンズはお気に入りの19mmF2・8。
僕はシャッターボタンを押して、二人の元へと走った。
なんだか現実味がない。
幸せ過ぎて現実味がない。
まるで作り物のよう。
でも、それでいい。
僕はその幸せを噛みしめよう。
最後までお読みいただき、大変うれしく思います。
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