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混沌の十二日  作者: 藤原時照


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十日目(2)

 そこは前回と違う場所だった。

 でも、僕はこの場所を知っている。僕の夢に出る神社の一つだ。ここは、神社の境内に、地下洞窟につづく道がある。

 その洞窟は高千穂の天安河原あまのやすかわらのような雰囲気だ。ただし、天安河原と違って、奥に社があるわけではないし、参拝者が積み上げた石が大量に並んでいるわけでもない。

 代わりに、地下洞窟の中には何かができかけている。

 そこは神聖な場所であるけれど、何かが足りない場所。

 たぶん、まだ創りかけの聖域。

 一者の夢や幽世でお婆さんに触れることから得た知識には、ある種の秘密が含まれていた。

 だから、いまの僕には、創りかけであることの意味が理解できる。

 この場所は、僕の現世での経験をもとに形づくられている。

 僕とともに成長する場所だ。

 そして、僕と縁のある人たちが引き寄せられ、細部ができあがる。

 その後、さらに縁が縁を呼び、人びとが引き寄せられて生活を始めることになる。

 世界はそうやって成長していく。

 この神社ができあがる時は、僕の現世での勤めが終了した時。まだ何かが足りないのは、僕が死ぬまでに、まだ時間があるということを意味する。

――それにしても、今日はどうしてこの神社に来たのだろう。

 いますぐ完成させて、さっさと現世から離れろということなのだろうか。

 そういうことなら、僕は拒否したい。

 現世でのキヨやネネとの生活はこれからなのだ。

 もう少し楽しんでから……。

――少なくとも、今日は楽しんでやる。家族写真だ。

 僕は撮影モードに入った。

 しかし――

 キヨは肩車、ネネは頭の上。

 これでは自撮りしかできない。

 そのうえ、中望遠の自撮りだと顔しか写らない。

 というか、このレンズは最短撮影距離が遠めなので、自撮りだとフォーカスが合いにくい。

――今日のところはこのくらいにしておいてやろう。

 僕は心の中で負け惜しみを言い、カメラをリュックに片付けようと思った。

 だが、それは時期尚早――

 突然ネネが僕の頭から飛び降りた。

「おとしゃん、おいる」

 そして、キヨが下ろせと言い出した。

 僕が腰を下ろし、頭を下げると、キヨはいつものように飛び降りた。

 その間に、ネネは洞窟の奥に走り、消えてしまった。

 僕はカメラの録画ボタンを押す。

 いま付いているレンズは45mm。

 単焦点なので、画角の調整などはできない。

 これはただの記録画像だ。

 ただし、F1・8なので、暗いところでもある程度は撮れる。

 キヨはネネが消えたところまで走る。

 そこには、ついさっきまで存在しなかった社ができていた。

 キヨが社の階段を上ると、両開きになっている扉が開いた。

「おとしゃん、ひゃーく」

「はいはい」

 僕が小走りに近づくと、キヨは僕の手を引っ張って社の中に入る。

 扉をくぐると風景が変わった。

 僕の手を引いて見知らぬ世界をゆくキヨはまさしく神使。

 彼女は僕を導く。

 そこは小さな社の中ではなく、大きな神社の社殿の中だった。

 気づくと靴と靴下がなくなり、素足になっている。

 前には巫女たちが横一列に並んでいたが、僕が彼女たちに近づくと、両側に分かれて道ができた。

 中央を進めということだろう。

 キヨは僕の手を引き、その道を進んだ。

 すると、また景色が変わった。

 社殿の奥に向かっていたはずだが、いまは社殿の奥から外へと続く扉を見ている。

 いま居る社殿はさきほどの社殿とはちがって少しこぢんまりとした感じだ。

 キヨは僕の手を引いて先に進む。

 キヨが近づくと、自動扉のように扉は外側に開いた。

――今度は山の中腹にある神社か。

 その景色から、僕は、自分がいまどこにいるのかを理解した。

 この神社は諏訪大社のような雰囲気がある、針葉樹林の中にある神社だ。

 最初は小さな社殿が一つだけだったが、僕の成長とともに建物が増えていった。

 いまはかなり大きな神社に成長している。

 そして、キヨは僕の手を引いて扉をくぐる。

 扉をくぐると、また景色が変わる。

 そこは海辺の神社だった。

 先日訪れた二つの神域を合わせ、今回で僕は自分の関わる領域すべてを回ったことになる。

 すべての領域をまわり、何かが繋がった感じがした。

 そして――

 気づくと僕は一者の前にいた。


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