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混沌の十二日  作者: 藤原時照


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六日目(5)

「どっち行ったか分かる?」

 曲がり角にきて、僕はキヨとネネに聞いてみた。

「ん」

 キヨが指差し、ネネも「みゃあ」と鳴いた。

 僕はキヨが示した方向に向かった。

 ほんの少し歩いたら、えいちゃんは居た。

 そこは彼の家の玄関。

 だが、彼は中に入れないようだ。

 えいちゃんの足もとを見ると、影に矢が刺さっていた。

――影縫いの術?

 自分たちの足もとを見る限り、この幽世では影がない。

 それは初日に気づいた。

 影があったのは古本屋だけだ。

 でも、えいちゃんには影がある。

 えいちゃんと古本屋の共通点は?

 どうして影があるのか。

 そこに何か秘密があるような気がする。

 でも、いまはそれを考えている暇はない。

 いまは法具を試す好機なのだ。

 僕はえいちゃんの左腕にかんざしを触れふれさせた。

 すると、腕から黒い煙のようなものが出て消えた。

 そして、えいちゃんの左腕がぶらんと垂れ下がる。

――効いているみたいだ。

 僕は、もとから持っていた法具を同じように右腕で試した。

 すると、こちらも同じ結果になった。

――えいちゃん、解放してあげる。

 僕は両方の法具を交互に使って、えいちゃんの頭から足までを優しく叩いた。

 影に刺さった矢が、食べる者を動けなくしていた。

 食べる者が抜ければ、支えるものはなくなる。

 支えるものがなくなったえいちゃんの身体はぐらりと倒れた。

 だが、地面にぶつかる前に消えた。

 最後に、こちらを見て微笑んでくれたような気がした。

 えいちゃんの居た場所に、僕は手を合わせた。

 このとき、僕の頭をキヨの肘が挟んでいたから、僕の頭の上で、キヨも手を合わせていたと思う。

 親子だから心が伝わる。

 僕はそう解釈した。

――これも持って行くか。

 僕は、破魔矢にも法具としての効果があると思い、回収することにした。

――こうやって干渉できるなら、僕に任せなくたって良いんじゃないかな。

 破魔矢を射た誰かにそう言いたかったが、口に出すのは思いとどまった。


 このあと、僕は幽世にある例の道祖神を囲むように三つの法具を地面に刺して来た。

 でも、何の反応もなかった。

 現世で刺すべきか、とも考えたが、これで良いと思う。

 現世で刺しても誰かが引き抜く可能性があるし、これが正解なのだと思いたい。


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