表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
混沌の十二日  作者: 藤原時照


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/46

六日目(3)

 いくつもの方向からパトカーのサイレンが聞こえる。

 この近くにパトカーが何台も集まって来ている。

――向こうの現場から、警察は引き上げただろうか。

 こっちの現場にこれだけパトカーが集まって来る。

 ということは、えいちゃんの方の現場を引き上げて来たのでは?

 そう僕は考えた。

――なるべく早く幽世に行こう。

 今回襲われた家族に対する罪悪感に苛まれながら、僕はそう決心した。

 ただ、問題がある。

 キヨだ。

 危ないところへは、自分一人だけで行きたい。

 でも、その間、キヨは一人になる。

――こんなときは託児所?

 現実はいろいろ都合よく改変されている。

 誰かの手によって。

 現実は改変され、ずっと前からキヨがいたことになっている。

 わが子として。

 ならば、僕が仕事に行っている間はどうなっている?

 託児所に預けていたことになっているのではないか?

 僕はスマホの連絡先を調べた。

 すると――

 自分の会社に託児部門ができていた。

――いつの間に……。

 会社に子どもを預ける部門があるなんて。

 あの会社が福利厚生に金をかけていることに驚いた。

 それはさておき、そこは休みの日でも使えるのだろうか。

 僕は会社の託児部門に関する書類を探した。

 たぶん、契約書類などを入れているファイルにでも入っているはず。

 そう思って探すことしばし。

 果たして、書類は見つかった。

 原則は出勤日のみだが、非常時は休日でも預けられるシステムになっている。

 夜勤や休日出勤の人もいるから、託児所が完全に閉まることはないらしい。

 僕は会社に電話をかけようとした。

 しかし、思いとどまった。

 そのまえに、本人に確認しておかなければならない。

「やー」

 それがキヨの返事だった。

「でもね、」

「やー」

 結局、僕は負けた。

 僕がキヨに勝てるわけがないのだ。

 この日、僕たちは、夕食を早めにとった。

 明日の朝、強烈な空腹感に見舞われないよう十分な量を。

 今回の目的は古本屋。

 余裕があれば、神社に行くことも試してみる。

 ネネを人の姿にするために。

 今日は19mmのコースを行く。

 だが、カメラは持って行かない。

 僕らしくないかもしれないが、いまの僕には、幽世関連の写真を撮ることが後ろめたく思える。

 えいちゃんと圭吾君のことは、僕にどうこうできた問題ではない。

 だけど、幽世で写真を撮るのは、彼らの不幸の根本にあるものを楽しんでいるようで罪悪感を覚える。

 それはどうしようもないこと。

 でも後ろめたく思ってしまう。

 

 幽世に入って、僕たちはまっすぐ古本屋に向かった。

 たぶん、本を探すには時間がかかる。

 その間、キヨが退屈しないか心配だ。

 でも、今日はネネもいる。

 いざとなったら、ネネに子守りをお願いしようと思う。

 ネネは子猫の姿だが、たくさんの子どもを育てた経験者。

 頼りになる、と思う。

 たぶん。

 そんな風に考えていたら、キヨが降りると言い出した。

 降ろしてやると、キヨはネネと連れ立って奥に入っていった。

 何となく心配ではあったが、二人を信じてみよう。

 そう思った。

 そして、僕はまず一冊の本を取った。

 僕に取れと言っているような感じに出っ張っていたから。

 それは古代史の本だった。

 そこには日本人に関する考察が書かれていた。

 

《『弥生人』という定義は甚だ不愉快だ。所謂弥生人骨とは、九州北部と中国地方で発掘された、特異な方法で埋葬されていた人骨のことだ。なぜこれが日本人のルーツになるのだ。狭い地域、少ないサンプルからどうして一般化できるのだ。ほかの地域の弥生遺跡から発掘された人骨は、縄文人の特徴を持っており、埋葬方法も異なる。また、弥生時代のあとに来る古墳時代の人骨は、『弥生人』の特徴を有していない。普通に考えれば、『弥生人骨』というものは、日本民族のものではなく、朝鮮半島からの侵略者の死体を罪人として処理したものだ。そう考えるべきではないのか。》

 

 僕はその本を本棚に戻した。すると、別の本が、いま読んだ本と同じように前に飛び出した。

――なるほど。いま、僕は教育されているのか。

 つぎの本のタイトルは『渡来人』だった。

 

《傀儡という一族が日本にたどり着いたのは戦国時代だと考えられている。彼らのルーツは朝鮮半島からやってきた『シラベ』という一族だ。『シラベ』は、女は売春、男は見世物小屋で生計を立てていた。

 傀儡による見世物小屋では、人形を見世物にするだけではなく、人工的に奇形を作って見世物としていた。誘拐した幼児の手足を切り落とし、身体を箱に入れて育てる。すると、頭は大人に成長するが、身体は小さいままになる。中国の纏足と同じ技術だ。

 江戸時代から昭和初期に至るまで、言うことをきかない子供に『子捕り(こーとり)が来るよ』と言って脅かしていたのは、彼らの所業に起因するものである。彼らの住んだ土地は穢れが蓄積され、異界の中でも最も好ましくない領域に繋がりやすくなっている。贄師も同様に朝鮮半島から来た者たちだ。韓国では、古い土木建築物付近から、贄として埋められた人骨が発掘されるのは珍しくない。その贄を使う儀式を司る者を贄師という。その贄師たちは、かなり古い時代に日本にも流れて来ていた。その結果、異界の好ましくない領域に繋がる穴が、この国のあちこちに開けられてしまっている。傀儡師と贄師両者の活動が重なっている場所は極めて危険であり、対処が必要だ。》


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ