第8話 病院
時計を見ると17:15の表示をしている。
もうずいぶんと夕暮れ空になって、真っ赤な空にぼんやりと眺めていると、群れになって空を飛んでいる鳥を見つけ、自由に飛んでいてうらやましいと感じてしまう。
一人になった瞬間、先日の出来事を思い出し、己の弱さを突き付けられナイーブな気持ちになってしまう。
何とか気を紛らわせようとして、ゲーム機に電源をつけるが、こういう時に限ってゲームが退屈に感じる。
右腕に巻き付いている包帯を見て、お礼を言いに行こうと1階に向かうことにした。
今俺がいるのは4階で、1階に向かうには階段を使うかエレベーターを使うかの2択になるのだが、何となく、何となく気分で階段を使うことにした。
スタスタと音を立てながら階段を下りる。
ため息をこぼしながら、ゆっくりと階段を下りていくと、3階がにぎわっているのが分かった。
もう夕方だから学校が終わり、帰ってきているのだろう。
この建物は学生マンションやシェアハウスなどと勘違いする人もいるが、いちよう1階は病院になっていて、2階は入院患者のための病床になっている。
この建物は6階建てで、3~6階は俺のような身寄りのない者の部屋になっているのだ。
また、部屋の大きさもちょうどよく、老人ホームをイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれない。
入居者がいなくなって潰れかけの老人ホームを社長が買い取って、今の形に改装したからだ。
そのため、住み心地も悪くなく、住み着いてもう9年にもなる。
2階を通りすがる。
相変わらず2階には誰もおらず、驚くくらい静かだ。
ここの1階の病院には凄腕のドクターがいるため、その者の手にかかれば入院するようなケガや病気であってもあっという間に完治してしまうのだ。
そのため、入院患者数は常に0であり、テスト期間前などに勉強会が開かれたりする、昼過ぎでピークが過ぎたフードコートのような空間になっているのだ。
まあ、今の時代人間の数自体が少なく、患者の絶対数が少ないのもあるかもしれない。
そうして1階にたどり着いた。
そこには一人の女性が暇そうにソファでくつろいでた。
「なんで待合室のソファでくつろいでるんですか......さえさん」
そう話しかけられた茶髪のお姉さんは、ニコニコしながらこちらに振り向き問い返す。
「あらぁ、たえ君じゃない学校帰り?」
「いえ、昼過ぎに起きたんで今日はサボりました」
「サボりは良くないわね~」
「以後気を付けます......それで...このケガ...ありがとうございます」
そう言って包帯ぐるぐる巻きの右腕を差し出すと、ニコニコしながら
「ああ、これね、私じゃなくてポップちゃんが直したのよ。だからお礼はポップちゃんに言ってあげなさい?」
「ロリが直したんですね。ところで、そのロリは今日来ます?」
「それがあの子、テスト前みたいで今週は来れないみたい」
お礼は当分先になりそうだ。
「そうなんですね、では次あったときにお礼を言っておきます。あと、患者さん来るかもしれないんで、診察室にいてください」
というと
「もう17:30よ、誰も来ないわよ~」
と言いながら診察室に戻っていった。
ここの病院は、彼女と彼女の見習い2人で運営されている。
そのため、彼女Saeはあの診察室に住み込みで働いているため年中無休なのだ。
また、彼女の見習いLollipopも今は学生だが、卒業後はこの病院で手伝いをするらしい。
やることもなくなってしまい、待合室兼フリースペースでボーとしていると
「ただいま~」
2人が帰ってきた。
一人はご機嫌で、もう一人は怒られた後のワンコのようにしょんぼりしている。
おそらく、先ほどの自分のように誓わされたのだろう。
「おかえり......なんかあった?」
いちよう何があったか聞いてみる。
「たえ、すまない。三位一体の契約を交わしてしまった......だから、俺らの行動の自由はもう......無い......」
ん?放課後一緒に帰るだけの話ではなかったか?と思ってると
「ちょッ、話した内容はたえとおなじだからねっ!」
と訂正が入った。
「このっ中二病!私が守ってあげるんだから、ありがたく思いなさい!」
と言いつつ2人は各々の部屋へと戻っていった。
三位一体の誓いか、なんてシオンのセンスに感心しつつ俺も自分の部屋へ戻った。
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