第20話 待つ側
キャァァァァァッ!
耳をつんざくような叫び声が、病院内に響き渡り、嫌な予感の的中を俺に突き付けた。
「さえさんッ…緊急ッ!」
「どうしたのッ!?」
いつもはおっとりしているさえさんが、緊迫した表情で診察室から飛び出した。
俺たちの元に駆け寄ると、帰ってきた2人の状態を確認する。
「血まみれじゃない......たえ君の出血がひどい、このままじゃ......」
「嘘だろ...」
確かに、たえの反応がない。
呼吸をしている様子はなく、脈もほぼ無い。
「診察室まで運んでッ!」
風邪の影響で、フラフラの状態だったが、気合で診察室まで担いだ。
「た゛え゛は ...」
金髪の少女は、苦しそうにぼそぼそと言っている。
意識がないのに、彼女がここまで運んだんだろう。
「大丈夫だ......何とかなる......」
自分に言い聞かせて、何か自分にできることがないか考える。
「シオン大丈夫? きっとあの2人は大丈夫だよ」
頭真っ白な俺を励ますように話しかけてきたのは、さっき悲鳴を上げた張本人だった。
「私びっくりして腰抜けちゃったよ~」
「あ、ああ......」
「だッ大丈夫だから...」
何も考えられない。
考えたくない。
自分の影が小刻みに震えているのが目に入る。
2人とも死なないでほしい。
助かってほしい。
......
「大丈夫っ...大丈夫だから...」
ハッとした。
彼女は、朦朧としている俺に身を寄せ、肩に手を置き必死に元気づけようとしていた。
「きっと何とかなるよっ」
彼女の頭に乗った大きなリボンが、ぷるぷると震えている。
「なんでそこまで……」
「だって、友達じゃん」
半泣き状態の彼女のおかげで、少しだけ安心することができた。
「こういう時って、となりに誰かいるだけで不安を分け合えるんだよ」
大きなリボンがチャームポイントの彼女の名前は‟グミ”。
派手な格好をしていて、JKギャルの見た目とは裏腹に良識の持ち主だ。
「泣かなくても……」
平常心を取り戻したのも、束の間だった。
「ポップちゃん呼んでッ!」
診察室の中から、焦った様子の声が聞こえた。
「私が呼ぶわ」
そう言って、グミは携帯を取り出して、電話し始めた。
それから、30分くらいたっただろうか。
病院の入り口が勢いよく開き、ロリポップが姿を現した。
そして、息を切らしながら診察室へ直行していった。
しばらく時間がたち、日付が変わった。
そして、あっという間に外は明るくなり始める。
ガラガラッと扉が開き、医者が出てきた。
「できることは全部したわ。 あとは目が覚めるのを待つだけ」
そう言う彼女は、能力をかなり使ったらしく、顔色がよくない。
「2階の病室まで運べる?」
診察室に入ると、彼女の助手も貧血なのか、真っ青な状態で力尽きたように椅子に座っていた。




