第2話 お昼休みにて
購買でパンを買い終えた俺たちは、そのまま校庭へ向かった。
中庭のベンチはすでに埋まっていたので、木陰に腰を下ろす。
風が柔らかくて、芝生の匂いがほんのりする。
「やっぱ外だよな。教室の中だと眠くなるし」
シオンがカレーパンの袋を破りながら言う。
「どこで食っても眠いけどな」
「たえの場合はね」
軽口を交わしながら、俺もパンをかじる。
空を見上げると、青がやけに濃い。
その青の中に、シオンの声が混ざっていく。
「ねえ、聞いたか?」
「なにを?」
「消費税、来年には25%にあげるってさ」
「……まじか」
「ほんとに非人道的だよな、やっぱ政治家もAIになり変わってんじゃ...」
「さすがにそれは無いだろ」
そう言いつつも、否定はしきれない。
人間と区別のつかないAIなんてのは、10年以上前に世に出ているためだ。
頭の中で噂の信憑性を検証していると、
「じゃあさ、次の噂。近いうちにビックバンが起こるかもって話だ」
「さすがにそれは無いだろ」
うん。さすがにそれは無いだろ
「俺ら死ぬの?」
「死ぬだろ、ビックバンだぞ」
「しょうもな」
「AIどもがこそこそ計画してるとか?」
「なんで疑問形なんだよ」
「...なんでって、ねぇ」
シオンがこっちを見る。
そう、こいつは若干中二病気質なのであった。
最近は噂話に影響されているらしい。
このことをシオンに聞こうとすると、ガシャーンと鋭い音がした。
「きゃあああ、ちょっと何してるのピ...ちゃん!」
遠くで誰かが叫んだ。
振り向くと、二階の窓ガラスが粉々に砕け、
その下に一人の女子が立っていた。
周りにいた生徒たちが一斉に距離をとる。
周囲の生徒たちがざわめく。
けれど、当の本人は何も言わない。
割れた窓を一瞥すると、手についた破片をぱっと払い落とし、何事もなかったようにポケットに手を突っ込んだ。
「あれ、吸血鬼じゃね?4年の...」
「あー、あれが噂の」
「あいつ常に情緒不安定らしいぞ」
そんな声が飛び交う中、問題児はゆっくり校舎の影を歩いていく。
先生が駆け寄ってくるのも無視して。
「あいつうちの子じゃないか...?」
シオンには心当たりがあるらしい。
「うちで何度か見たことがある。まあ、話したことないから詳しくは知らないけど…」
知らんのかい。
ぼーっと騒ぎを見ていると、問題児と目が合ってしまった。
その顔には笑っているような、怒っているような、悲しんでいるような危うい光がある。
姿が角の向こうに消える。
風が少し強く吹いて、芝生の上に小さなガラスの破片が転がった。
陽に照らされて、きらきら光っている。
俺はそれを見つめながら、
「……なんなんだ、いったい…」
とつぶやきなきながら、残りのカレーパンをほおばる。
シオンは空を見上げて大きく息をついた。
「……昼休み、あとちょいか」
「もう午後か、早いな」
チャイムが鳴る。
いつもの昼休みの終わりの音だ。
問題児の残したガラス片がまだ光っている。
何かが始まりそうで、
でも結局、何も起きないまま午後が始まった。
最後まで読んでいただきありがとうございます.
最近は涼しくなってきて生活しやすいですね!
大変励みになるので感想などがあれば教えてください! ではまた~




