第19話 シオンの憂鬱
2070年5月16日
窓の外を見ると、夕日が大地の端へと身を隠し始めていた。
「もう夕方か…」
さっき起きたばっかりなのに、今日という1日はもう終わりかけている。
頭とのどが痛いな。
それに体が重い。
とりあえず何か食うか。
ぼんやりとした思考のまま、冷蔵庫を開ける。
が、中はスッカラカンだった。
冷蔵庫を閉じ、食べ物は下校中の2人にお願いすることにした。
‟今起きた。食べ物冷蔵庫にないから買ってきて~ ゼリーとかフルーツを所望する。お金は後で払います。ヨロシク”
よし、こんな感じでいいだろ。
3人のグループチャットに送信っと。
そして、俺は体温を測ることにした。
ピピッ
37.5℃か、今日金曜日だし土日安静にしておけば治るか。
ベットに戻り、2人の帰りをぼんやりと待つ。
携帯を見ながら返信を待つが返信どころか、既読すらもつかない。
いつもなら、15分もすれば返信が帰ってくるのだが、何分待っても帰ってこない。
「何やってんだ...あの2人...」
いやな予感が頭をよぎって、不安な気持ちになった俺は、1階で2人の帰りを待つことにした。
風邪ひいて悪寒がするだけだよな? と思いながら1階に降りると、
「ちょっちょっと、シオン君!? 寝てないとだめじゃない」
驚いた様子のさえさんに声をかけられた。
「もう大丈夫ですよ」
「あなた、40℃あったのよ? そんな無理しちゃダメッ!」
「いやっ、マジで大丈夫です、さっき体温測ったら平熱だったんで」
36℃も37℃も変わらんでしょ。
「そんなわけッ…...」
額に手を当てると、言葉を詰まらせた。
「......ほんとね、すごい回復力…...でもほかの人に移さないように、マスクぐらいしなさい」
そう言って彼女は部屋からマスクを持ってきて、俺に手渡した。
「気分が悪くなったら、無理しちゃダメ。 わかった?」
「は~い」
俺の返事を聞いて、彼女は診察室に戻っていった。
そして、1階の共有スペースにて帰りを待つ。
すっかり日が落ちきったころ、先日見かけた問題児が目の前を通過した。
きれいな桜色の髪を揺らして、トコトコ歩く姿はとても学内で噂の吸血鬼とは思えなかった。
「ピコ...」
思い出したかのように、うっかり彼女の名前を口に出してしまった。
するとピコは、こちらを見て顔を赤くし、走って行ってしまった。
その姿は、窓ガラスを砕いた少女と同一人物とは思えないものだった。
意外と恥ずかしがりやなのか? それとも人違いか? まあ、あの不思議ちゃんのことは後でアレスに聞いてみるか。
それにしても、遅い。
チャットを見るが未だ既読はついていなかった。
既読すらつかないのは、さすがにおかしい。
不安と心配によってさらに鈍くなった思考が、‟探しに行く”という選択をとろうとした時だった。
ドシャァッ
病院の入口の方から、聞き慣れない音がした。
まさかと思い、音のする方に視線を向けると、血だらけになった2人が肩を組みながら、冷たい床に倒れこんでいた。
微かに聞こえる呼吸音と、血の匂いが夢ではなく現実であるという事実を突きつけるのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
先日、短編も書いてみたので、ぜひ読んでみてください~




