第15話 出会い
ピーピーピーピーッ!
いつもは一定のリズムを刻んでいるモニターの音が、鋭く鳴り響いている。
気づけば俺は床に伏せていた。
どうなってるんだ? さっきまでベッドに横たわりながら夜空を見ていたはずだ...
そのはずなのに、凸凹とした硬い床の上で伏せている...
意味が分からず混乱している俺は、モニターの音も相まって死んだと思っていた。
「死んだ......?」
が、すぐに違和感に気付く。
あたりを見渡しても、お迎えはなく天使の輪っかも無い。
それに、感じるのだ…......鼓動を......
それも力強く、いつもの痛み・違和感もない。
なぜか調子もよく、自力で立てる気がして立ってみると、そこには強烈な光景が広がるのだった。
頭の上にベッドがあり、足元には蛍光灯があるのだ。
感動のあまり頭がおかしくなったとしか思えない。
「彗星ッ......」
ふと我に返り窓から外を見ると、今までの常識では考えられない光景が脳裏に入り込んでくるのだった。
夜空があった場所を見ると大地が見え、視線を下に移動させると、真っ暗でなんでも飲み込んでしまいそうな夜空と、さっきまで希望の象徴であった彗星が、まだゆっくりと光の尾を伸ばしていた。
大地はキラキラと輝いて見え、何キロも先では火が上がっている。
人々は宙に舞い、無抵抗で夜空に吸い込まれていく者、じたばたと手足を動かしながら落ちていく者、鉄塔にしがみつく者など様々だった。
しかし、何事もないかのように大地に立つ者もいた。
「――――。」
後に政府が発表したデータによると、世界総人口の約3分の2が行方不明になったそうだ。
唖然としながら外を見つめる俺に誰かが声をかける。
「たえ君!」
いつもの看護師さんだ。
腕と膝、それに頭から出血しており、俺よりも重症に見える。
「大丈夫ッ!? 気分は? 腕! 腕から血が...」
そう言われて右腕を見ると、血が出ていた。
「だっ大丈夫です......」
たった一言発すると、お姉さんは俺の胸に手を当てる。
「ごめんねっ............心拍問題なし......」
「今日はなんだか調子がいいんだ」
「そっ、そうね...歩けそう?」
心臓の調子が良くても、歩くのは無理そうだ。
そのことを伝えようとするも、うまく言葉が出ない。
そんな俺を見かねて
「私がおんぶするね」
とほほ笑むのだった。
背負ってもらいながら廊下の天井を移動する。
その間に、突然上下が逆転したこと、それで大騒ぎだったこと、患者がことごとく完治していること、この階に来るまで時間がかかった理由、俺がこの階最後で全員無事だということなどを聞かされた。
「着いたよ」
そういって俺を降ろす。
そこには俺以外の人もいて、10人ほどが手当てをされていた。
エレベーターが止まってしまっていて、下の階に移動できないらしく、1か所に患者をまとめたほうが面倒をまとめて見れるのだろう。
「腕、止血しないと」
そう言いながら、テキパキと消毒を始める。
「ぼく、隣の部屋だった子だね」
隣のおじいさんに話しかけられる。
「こんにちは...」
「挨拶できてらいねえ」
続けて話しかけようとしてくるが、
「アキオさん、この子疲れてるからゆっくりさせてあげて~」
と看護師さんが間に入ってくれた。
「もう大丈夫! あとは助けを待つだけだから、寝ててもいいよ」
手当が終わったと思ったら、次は彼女自身の手当てを始めた。
自身の手当てを後回しにしていたのだ。
消毒をして、包帯をぐるぐると巻きながら、彼女は言う。
「あそこにいる男の子、たえ君と同い年でシオン君って言うんだ。あの子話すのが好きな子だから、気が向いたら話してみなよ」
俺から話しかけることはないなと思っていると、あちらから話しかけてきた。
「俺のこと話してる?」
「バレちゃったみたい...まあ、話してみなよ」
彼女はそう言うと俺をおぶって、彼の元まで連れていく。
「よっこいしょっ、これも何かの縁だよっ、ほら!」
俺を降ろすと、彼女はアキオサンの元へ話相手になりに戻っていった。
「俺シオン、君の名前は?」
「たえ...」
「いい名前だね」
いい名前? こんな名前が? コイツ苦手かも...
戸惑っている俺を置いて彼は続ける。
「クールって言うんだぜ!」
「クール...」
「たえのこと1度も見たことなかったけど、最近入院したの?」
「モノゴコロ? ついた時から...」
質問には最低限の返答をすることにした俺は、一言ずつ答えた。
「なんで入院してるの?」
「病気だから」
「何の病気?」
「しっ......言いたくない」
「そっかあ」
こんな感じで質問攻めが続いたが、上からドゴンッという重低音が鳴り響き終わりを迎えたのだった。




