第12話 蝶の舞
はあぁ、失敗した...
金色に輝く長髪をなびかせ、空を駆ける。
財布を忘れるなんて…いつ机の中に入れたっけなぁ...
普段はこんなミス、しないはずなのに。
シオンの風邪が、私にもうつったんだわ。
バカは風邪ひかないって言うけど、そんなことはないらしい。
いや、あいつ成績は意外と悪くなかったっけ...
人を待たせているというイレギュラーが発生し、かなりのスピードを出していた。
「ヘッち...」
そのため、体感温度は気温ー10℃って感じで肌寒いってレベルではなく、普通に寒い。
たえと別れてから30分弱といったところで、彼と別れた場所に到着した。
しかし、そこに彼はいなかった。
最初から、おとなしく待っているとは思っていなかったが、ボコッと抉れた地面と、そっと置かれている彼の通学カバンを見て一瞬で理解した。
「戦ってる......」
襲われたんだ、きっと...
あいつから仕掛けるなんてありえないし...
どうしよう...どうしよう......どうすればっ......
最悪な状況が頭をよぎるも、冷静に地面の抉れ後や戦闘跡をたどっていく。
そして、たどり着いた先には、うめき声をあげながら横になっている彼と、それを嬲っている男の姿があった。
考えるよりも先に体が動き、気づけば持っていた通学カバンが、敵をめがけて一直線に飛んでいく。
「ぐぅッ!?」
と発しながら、カバンもろとも吹っ飛んでいった。
「たえッ! 大丈夫!?」
そう呼びかけるが、彼にはもう意識がない。
頭の数か所から出血があり、体も痣だらけで血まみれ、骨も何か所か折れている。
「これ借りるから」
彼の握りしめていたスチール製30㎝定規と、近くに落ちていたもう1本を拾い上げ、グッと握りしめる。
「あんた......ぶっ壊してやるから覚悟しなさいっ」
沸々と湧き上がる殺意を向けると、相手もそれに応えるように
「不意打ちとは、卑怯なことをするなぁ............殺すッ!」
と殺意を向けられる。
そんなことはお構いなしに、先手必勝。
握りしめていた片方の定規を風に乗せて、放つ。
ヒュンッという音の直後にガキィンッと音がして、弾かれたそれは宙で回転している。
「テメェのこうッーーー!?」
「おっそ...」
気づかれる前に懐に潜り込み、1撃。
相手は後方に吹っ飛んでいく。
「なッ!」
宙で回転していた定規も、相手を追尾し襲い掛かる。
キィィィィン...
またも防がれるが、関係ない。
「どこ見てんのよ」
「後ろッーー!?」
後ろに回り込んで1撃。
今度は防ぎようがなく、背中をザックリと切り裂いた。
「ギィィィイッ」
青い液体が飛び散り、制服が青色に染まる。
「クソがッ! なんなんだテメェはッ!」
「そんなの自分で考えたら? のろま...」
「テメェのッ…テメェの能力さえ分かればッ!」
そんなの答える必要はない。
それに、たえだって意識がないし、出血がひどい。
早く手当てをしないと…
「時間がないから、次でスクラップにしてあげる」
2本の定規を重ね合わせて、目の前にいる敵を貫くイメージ。
反応できないほど速く、防御できないほど強く貫くイメージ。
「スクラップぅ......? テメェをミンチにしてやるよぉぉぉおっ!」
青色の液体をボタボタ垂らしながら、襲い掛かってくるがさっきよりも遅い。
血が流れれば、それだけパフォーマンスが低下する。
「そんなおっそい攻撃、私に当たるわけないでしょ」
びゅおッッ
強く速いその1撃は、目の前の敵が反応するより早く貫くのだった。




