第11話 1対1
今は学校からの帰宅中、目の前には様子のおかしい男が立っている。
顔色は悪く、色白でいかにもな男だ。
「あの、どちら様ですか? 人違いでは?」
腰に手を伸ばしたままフリーズしている俺は、とぼけてみる。
「覚えてねえのか?」
どうやら以前に会ったことがあるらしいが、この男には見覚えがない。
「もう忘れちまったのかよ...」
そう言いながらゆっくりこちらに歩いてくるが、本当に身に覚えがない。
コイツの一言目から察するに、俺のことを探していたらしい。
ターゲットが俺自身となると、ごまかしは通用しないだろう。
やれるか? 俺1人で。
じりじりと後退しながら戦闘態勢をとると、目の前の男はギリギリと腕を鳴らして迫ってくる。
やがて腕の関節が逆方向に折れ、金属の光が見えた瞬間に反応ギリギリの速さで斬りかかってきた。
なんとかその攻撃を両手で防ぐと、そのままの体勢で男は話し始める。
「どうだ? このガジェット。 思い出したか? あの時は2人だったが、紫のガキはどこ行った」
この発言を聞いてようやく理解した。
コイツは半月前に襲ってきたやつだと。
でもなぜ生きてる?
見た目も声も全然違う。
あの時のことはあまり記憶にないが、こいつを斬りつけて破壊したのは確かだ。
「ありえない...お前はいったい...」
「やっと思い出してくれたみたいだなぁ! あの時の屈辱をおまえにもプレゼントしてやるからなぁ!」
力で押され吹き飛ばされてしまった。
「ぐぅッッ」
無理だ...
あの時は2人で何とかなったものの、1人ではとても勝てない。
やつに背を向けて逃走を試みるも、ボコッ...という音とともに追いつかれてしまった。
追いつかれた際に追撃を喰らってしまい、さらに力で吹っ飛ばされる。
勝てないうえに逃げられない。
こうなったら少しでも時間を稼ぐしかない...
「おかしいなぁ......今の力具合だったら確実に壁にたたきつけて殺せたはずなのに...」
首を傾げながらゆっくりと近づいてくる。
何とか油断を誘えば、1撃入れられるか?
足にぐっと力を入れて思いっきり踏み込む。
「おいおい、何度逃げようたって俺からは逃げられねえぞっ!」
追いつかれそうになったところを振り返り、繰り出された1撃を弾く。
「なっーー!?」
「望み通り戦ってやるよ」
ガガガガガガッ
相手のスキをついて連撃を繰り出すも、すべて対応されてしまう。
ガガガガガガガガガッ
両手で握りしめたアルミ製の定規と、相手の刃がぶつかり合って火花が散る。
一時は互角な状態が続いたが、人間には体力の限界がある。
ガガガッッ
こちらの連撃を止められてしまい、ギリギリと音を立てて鍔迫り合いになる。
「ぐ...ぐぅ......」
気がつけば力を出し切り、弱々しくうめき声をあげていた。
次の瞬間、思いっきり振り払われて体ごと後ろに吹っ飛び宙に舞う。
瞬きの間に刃が首をめがけて突きに来るが、何とか弾いて着地した。
「なかなかしぶといなぁ、このゴキブリ野郎がよおッ!」
「はぁ......はぁ......」
息も切れきれで、心臓がドクン...ドクンッ...と自分でもうるさく感じるほどに脈を打っている。
しかし、今の攻撃で希望が見えた。
俺は2刀でやつは1刀。
手数で上回れば行けるのではないか?
しかもズボンのポケットには都合よくエナジーリペアNo4。
いける! やるしかない。
やらなければ、時間を稼がねば待っているのは死だ。
良い感じにあったまってきて、やつの頭もホカホカだ。
タブレット状のエナジーリペアを口に投げ込み、覚悟を決めるとそれに応じるように心臓もBPMをあげる。
「お前を...破壊するッ!」
地面を思いっきり踏み込んで、防御を捨てて攻撃全振りで突っ込む。
「お前みたいな醜いゴキブリ野郎がッ...」
ガガガガガガガガガッ
「俺に歯向かうんじゃねぇッ!」
ガガガガッ
敵の大振りになった攻撃を宙を翻して躱し、首を狙って右手を振り下ろす。
必中の一撃。
に見えたが、なぜかその攻撃は不発に終わり、油断したすきに一撃もらってしまう。
その一撃は防げたものの、距離をとられてしまった。
「おっと、あぶねえあぶねえ、俺としたことか前と同じようにやられるとこだったぜぇ.....」
おかしい...確かに必中のように見えた。
当たったと思った。
次の瞬間、鼻の奥から鉄の匂いがし、赤い流体が地面にポタリと落ちる。
「やっと聞いてきたか?」
ニヤニヤと続ける。
「俺のガジェットを紹介してやるよぉ...この殺人ブレードな、なんで2刀じゃないと思う?」
「金がないからだろ...」
「てめえらのせいでなぁッ! まあ、半分あたりだ。」
鼻血が止まらない、それどころか視界が歪む...
「もう半分の正解......こいつだ」
続いて足もガクガク震えだし、立つのもやっとになってしまった。
「殺人剤。確実にてめえらゴキブリを殺すためにこいつに大金はたいたんだぜぇ...こんな見てくれの悪いボディになっちまったが、てめえらを確実に駆除できるなら仕方ねぇ。まあ、効いてくるのに時間がかかっちまうがなぁ」
どうやら、時間を稼いだつもりが稼がれていたようだ...
逃げーーーー
キィィィィン......という音が鳴り響き、気づけば地べたに伏せていた。
「これは前のお礼だぜ、醜いゴキブリが」
そう、これが命のやり取り。
負ければ終わりだ。
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