第10話 風邪
半月が過ぎた。
今は5月中旬、平均気温は24度まで上がり、夏の気配をまとい始めていた。
起床して、30分ほどボケーっとしながらテレビを見ていると、テレビに映っている天気予報士のお姉さんとお笑い芸人風の男性が地球温暖化の現状を語っていた。
「なんと! 50年前から平均気温が1℃以上上がってしまっているんです!」
「南極の氷も年々溶けてきててねぇ、50年前と比べたら50㎝も上昇してて~」
どこか他人事。
そう思う俺自身も、50年前なんてそもそも生まれてないし、どうせ50年後も海面がたったの50㎝上昇するだけ。
そんな自分の人生に1ミリも関係ない事象よりも、来週に迫っている中間テストのほうがまだ重要だと考えていた。
まあ、そのことですらどうでもいいのだが。
ピピピピピッ...
設定していた最後のアラームが鳴る。
この目覚ましが鳴っても起きれなかった場合、遅刻確定なやつだ。
「さすがに着替えるか...」
重い体を何とか動かして、ハンガーにかかった白のワイシャツに腕を通す。
ネクタイを手に取り、洗面所の鏡の前で結ぶといつも通りの自分の姿が映っていた。
「はぁ~、ねむ...」
まだ半分眠ったままの顔に、バシャバシャと水をかけた。
横にかかっているタオルで顔を拭き、歯ブラシを手に取って歯磨き粉を絞り出す。
味はミントだ。
口に含んだ瞬間にミントの香りが広がる。
口をすすいで鏡を見ると、ようやく眠気から開放された顔になっていた。
起床後のいつものルーティーンをこなすと、通学鞄を持ち自分の部屋を出る。
「12時間後には授業も終わって自由の身だ」
なんて自分を励ましながら、階段を使って1階まで下りる。
いつもはそこにシオンの姿があるのだが、今日に限ってはそこに姿はなかった。
テスト勉強のために早めに出たのか? まだ遅刻するような時間でもないし、部屋まで確認しに行ってやるか。
もし寝坊していたら、この前の仕返しができるしな。
もう1度4階まで戻り、自分の部屋の隣のドアの前でノックをする。
「お~い、起きてる~?」
返事はないが、ピコピコとアラーム音が鳴っているため部屋にいるのは確かだ。
「シオン、入るぞ」
ドアを開けた瞬間、驚きの光景が目に入った。
ベットから少し離れたところで、シオンが地べたに伏していたのだった。
「しっ、死んでる...」
一瞬背筋が凍って頭がフリーズしたが、実際には死んでおらず気絶していただけだった。
肩を揺さぶるとシオンは意識を取り戻し、フラフラと立ち上がったが、すぐに力が抜けたようにベットに座り込んだ。
熱を測った結果、体温計の表示は40℃。
「今日は休みな」
そう言ったときには、もう彼は意識を失っていた。
思わぬハプニングがあったため、学校には遅刻した。
久しぶりの1人きりの校内はとても静かに感じ、シオン以外に友達どころか話す相手すらいないことを思い出した。
思い返すと中学3年目にして、あいつ以外に話した記憶がない。
つまり、シオンのいない俺は浮いててボッチ、浮きボッチだ。
そんな現状でも別に嫌とも思わないし、改善しようとも思わない。
今から友達を作ったとしても、今年度で卒業だし...
結局一言も話さず・発せずで6時間目が終わり、お迎えの時間が来るのだった。
「お迎えご苦労様で~す」
迎えに来た彼女を茶化しつつ、今朝の出来事を伝えた。
「熱出してぶっ倒れた!? なんで私にチャットしないのよ」
心配そうな顔をして彼女は言う。
「テストも近いから無理してたのよ...きっと...」
「じゃあ、みかんゼリーでも買って帰ってやるか」
と言うと、彼女はバッグの中をゴソゴソと何かを探し始めた。
「ない...財布忘れてきちゃった...」
それを聞いて、ポケットに入っている財布の中身を確認した。
常日頃から最低限しか財布にお金を入れないことが災いして、すっからかんだった。
その様子を確認して、彼女は
「財布を取りに行ってくるから待ってなさいよ」
と言い残し、学校へすっ飛んでいった。
おとなしく待ってるか。
近くの日陰に移動して、彼女の戻りを待っていると、コツコツと足音がした。
その足音に違和感を覚え姿を確認すると、彼女ではなく赤の他人であり、腰に手を伸ばす。
「やっと見つけたぞ、この病人がぁ!」
野生のAIとエンカウントするのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます.
最近急に寒くなりましたね.
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