第1話 日常
あの日、ヒトが重力に嫌われた日、病室の天井に立ち空に落ちていく人たちを見て、美しいと思ってしまっていた。
「...ぉぃ、授業中だぞ」
隣に座っているやつが肩をゆすりながら話しかけてくる。
「あと5...時間」
と言うと、ため息交じりに
「ふざけたこと言ってないでまじめに受けろ、おちゃっぱ」
「その呼び方はやめろ、なんでお前は元気なんだよ」
体を起こしながら不機嫌に言う。
「7時間も寝れば十分でしょ。それにテストも近いしね」
あきれたような顔で言ってくる。
昨日一緒に12時までゲームをしていたのに何で眠くないんだ?AIみたいにガジェットでも積んでんのか?なんて考えていると、
「そこ、しゃべらなーい」
と、ゆるーく注意されてしまった。
授業として寝ている方が静かなので都合が良いようだ。
隣のやつが何か言いたそうだが、テストなんてどうでもいい、睡眠を貫いた。
そんなこんなで午前授業の終わりを告げる鐘の音が鳴り始め、購買に行こうと席を立つと、当たり前のように隣の席のやつがついてくる。
「たえ、今日は購買にしない?」
「もちろん」
購買の前は、いつものように長蛇の列だった。
昼休みのチャイムが鳴ってからまだ一分も経ってないのに、みんなまるで戦場にでも行くような顔をしている。
「……またカレーパン争奪戦か」
俺がつぶやくと、
「そりゃあ当然でしょ。限定20個だよ? おちゃっぱがのんびりしてる間に売り切れるよ」
と隣のやつは軽く笑いながら列の先頭の方を見た。
「……だからその呼び方やめろって」
言いながらも、眠気で思考が鈍ってる俺はそのまま並ぶしかなかった。
“おちゃっぱ”ってあだ名は、自身の名前が原因だ。
俺の名前はたえ、Taeだ。
この名前をよくTeaと間違えられるため、よく茶化される。
「ほら、起きろ。前進んでる」
「ん……」
半分寝ながら前に進む。
すると、やつがあきれ顔で言った。
「おい、たえ。今日は夜のゲームは無しだ」
「……なんで?」
「勉強会。テスト前、さすがにこのままだと赤点だろ?」
「……ええ、じゃあ寝る」
「ダメだ。起こす」
「……お前も俺から幸せタイムを取り上げるのか...」
そのやり取りに、こいつは少しむっとしたように唇を尖らせた。
だがすぐに、からかうように笑う。
「いいのか?赤点なんかとったらあいつが学校に乗り込んでくるぞ?」
……ずるい。
俺の弱点をわかってやがる。
「……わかった。その代わり基礎体力訓練は勘弁だからな」
「しゃーなしだわ」
そう言って、紫色の頭のこいつは列の先で最後のカレーパンを二つ掴んだ。
そのうちのひとつを、当たり前のように俺の手に押しつけながら、にっと笑う。
「こいつは俺のおごりだ」
「サンキュー、シオン」
昼休みのざわめきの中、眠気が、少しだけ遠のいた気がした。
はじめまして,佐々木です.
最後まで読んでいただきありがとうございます.
小説を書くのが初めてになるので,温かい目で見ていただけると嬉しいです.




