悪魔に魅入られた少年
新人です。お手柔らかにお願いします。
「オラ!どうだ!」
「クッソ!マジか!」
「みっくん頑張って!」
豪華な夕食を終え、少年たちはゲームをしているようだった。
先ほどの空気とは打って変わって、少年は明るく友人と遊び耽っている。
少女たちはそれぞれ応援する者、漫画を手に取り気を紛らわす者。
幼馴染ということもあり、みな兄弟のような距離感で遊んでいる。
「……みっくん、また負けちゃったね。」
「あそこで復帰阻止はやばいだろ…。凶悪すぎるエンペラーワニール」
「お前のモンキーキングも成長したな。」
ガシッと手を取り合う。
「みっくん!兄貴!あたしアイス食べたい!パ◯コ!コーヒーね!」
「あ、私も!ハーゲンダッ◯!ミルクのやつ!」
「仕方ねえなお前ら。よし、ミツキ、負けたお前が奢れ。」
「えぇー!まぁ、良いけど、コウキ袋持ってよ。」
「俺も行くのかよ。仕方ねえな」
「みっくん太っ腹〜!」
「お兄ちゃんサイコー!」
マイが笑顔を見せていて、ミツキは嬉しくなる。ついでにポテチやファ◯チキなど買ってこようかなとか思ってしまう。この兄、実のところシスコン気味である。
「よし、行くか。」
財布を持って玄関に行くと、剣道大会の銀のトロフィーと竹刀が飾ってある。
「結局、現実じゃあお前には勝てねえんだもんな。ままならねえぜ」
「俺だってお前に抜かれないようにどんだけ必死で練習してるか…」
「そんな必死な奴が俺と一緒に朝練サボるかっての。」
「はははっ。それもそうか。」
「ミツキ、竹刀なんだが、持って行くか?」
「なんで?」
「世の中こんなことになってトチ狂ってるヤツがいないとも限らない。そもそも避難所に家を失った全員が身を寄せれるわけがない。強盗だっているかもしれない。」
「確かにそうだね。でも、職質とか大丈夫かな?」
「お前は、多分大丈夫だろ。チビだし。」
「お前なぁ、170はあるんだよ。お前は190で顔も怖いし有り得るかもね。」
「んだよ、とりあえず持ってくぞ。」
「わかった」
コンビニに着くと少年たちはアイス売り場に行く。
「さて、なんだっけな?ハー◯ンダッツのバニラと、ガリガ◯君だっけか?」
「ミルク味とパピ◯のコーヒー味ね。コウキは何が良い?」
「俺も良いのか!そうだな。ガリ◯リ君のコンポタで!」
「変なの食うなぁ。俺はあず◯バーにしようかな?」
「ばあちゃんかよ」
しっかりポテチに炭酸、ファミチキも買ってコンビニを出る2人、駄弁りながら帰路に着く。
「しっかし、不味いなぁ。」
「コウキって不味いって言いながらいつもそれ食べてるよね。」
「あぁ、なんか癖になんだよ。」
「マジでその気持ちわっかんねぇ…」
「お前もあず◯バー食ってんじゃねえか。硬くて食えたもんじゃねえよ。」
「アイスは齧るもんじゃなくて舐めるもんなのだ。」えっへん
「なんのマウントだよ…」
ヒュッ
ブチブチ
風切音。
突然、コウキの手が軽くなり、躓く。
「ん?あれ?袋が切れてる。」
唖然
「コ、コウキ、、足が。」
「ん、足…?……っ!?ああ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛!!!!」
「なんだ、どういうことだ!?」
「ミ、ミツキ。ハァッハァッ、どうなっでる゛!」
「僕も何が何だか!」
「とり゛あえ゛ず竹刀だせぇ!!!」
「分かった!」
目の前にいたのは、ウマともラクダとも取れない生き物の骨に乗り、ターバンを被った美しい男性と、尊大な態度で人の手でできた椅子に座る、ローブを羽織り大きな剣を持つ壮年の男性であった。
「私はパイモンという。其方はミツキ、という名前で間違いないか。」
「俺様ァベレスだ。テメェはコウキだな?」
「な、何が目的だ!!!ここはどこだ!」
「クソ、血が流れすぎてる。死んじまう。死にたくねぇ。」
コンビニの帰路にいたはずだが、いつの間にか赤黒い生物的な建物の内側にいた。
「私たちはソロモンの第9位、第12位の、人間の言葉で言うところの悪魔だ。」
「なぁ、パイモン様。俺様たち間違えたんじゃねえかァ?こんな腰抜けどもが俺ら悪魔が見ていたニンゲンだって?」
「あぁ、ベレス。この者たちはあまりにも臆病が過ぎる。鎧を着て戦うあの剣士たちとは思えない。」
「でも、剣持ってるしなァ。
おい、テメェら。ミツキとコウキかァ?ちげえなら殺す。違わなくても死以上の苦しみが待ってる。どうなんだァ?」
悪魔たちは問う。
少年は答える。
「お、俺は赤坂ミツキだ!こいつは瀧田コウキだ!!クソ野郎!」
「はっ!おい、クソ野郎だってよ、パイモン様」
「ふははは、間違い無いな。」
「く、クソはクソだ!お前ら何が目的だ!!」
「本題に入ろう。其方たちを探していた。ラッパの鳴った直後にその方たちに印をつけ、そして見つけた。私たち悪魔は其の方らを愛している。人間の言葉で言えばファンだ。魂が強い。私たちの力を手に入れ、神を打ち殺し、真なる神として降臨しろ。」
「俺様たちゃァ神の子だがな、此度の父の選択を正しいとは思ってない。…老いたんだ。随分となァ。そこで世界で一番魂が強く、俺らに愛される価値のあるテメェらを見つけたってェわけだ。」
随分と寂しい顔をする悪魔たちだ。
「なんなんだ、お前ら!そもそもコウキは脚を飛ばされてるんだ!」…イダ
「俺らに神になれだって?何を考えてる!神の片割れは今まさに失血死しそうになってるんだぞ!」…シイ
「俺様の力が手に入ればそんなもんはどうとでもなるんだ。」
「私の軍団に癒しの悪魔がいる。壊れた足などいくらでも直してやろう。持ってくるが良い。」
「なん、なんだそれ…」…レイダ
「お、お前ら!自分勝手すぎるんだよ!」…ツクシイ
「くそ、くそ、血が止まらない。おい、コウキ、喋れるか?」キレイだ
「あぁ、ハァッハァッ、意識が遠のいてきた。助けてくれ、ミツキ」
「あぁ、今すぐに助けてやる。でも、クソっ!悪魔なんて!」
少年は悩んだ。悩み嘆き、溶けたアイスのことなど微塵も考えずコウキの足を押さえていた。
これからどうすれば。
しかし、
実のところ。
少年はコウキの怪我のことなど微塵も考えてはいなかった。
お目汚し失礼いたしました。
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