14. 拒めぬ脆さ
それからというもの、リリアーナは夜になると自室を抜け出し、テオのいる倉庫の隅の部屋へと向かうようになった。監視の目が厳しい中、彼女はこっそりと廊下を抜け、テオの部屋の扉を静かに開けた。そして、彼の狭いベッドに潜り込み、当然のように隣に横になった。
最初、テオは驚いて身を固くした。
「ちょっ…!?おい、またかよ…」
彼の抗議の声を上げても、リリアーナは黙って彼の手を握り、目を閉じた。彼女の腫れた頬は癒えつつあったが、その表情にはどこか安心を求めるような脆さがあった。テオはそんなリリアーナを見ると、拒む言葉を飲み込んでしまった。
「…勝手にしろよ」
彼は小さく呟き、仕方なく彼女を受け入れた。リリアーナの体温がすぐ隣に感じられ、彼女の静かな寝息が部屋に響く。テオはそれを聞きながら、複雑な気持ちを抱えた。彼女を憎む気持ちは薄れつつあったが、こうして寄り添われることに慣れない戸惑いがあった。それでも、彼女が自分を頼るように隣にいることが、どこか悪い気はしなかった。
夜毎、リリアーナはテオのベッドに潜り込み、彼の隣で寝るようになった。テオはそれを拒めず、ただ彼女の手の温もりを感じながら眠りに落ちた。2人の間には言葉は少なく、しかし確かな繋がりが生まれつつあった。リリアーナにとって、テオの隣は孤独を紛らわす小さな安らぎの場所となり、テオにとっても、彼女の存在が少しずつ特別なものへと変わっていった。