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 プレゼント


 どうしよう…。ラッピングを綺麗にやり過ぎたか?

 まっまあ。100均のラッピングだし?

 そんなに重い感じにならないよな。それに、中身はブレンディのインスタントだし?

 いつも、ご馳走になっているだけだし?

 2-K組は 僕の1-C組の真下ましただし?

  階段の横だし?

行くか?

行っちゃうか?


 おそらく、この時の僕は 相当、切羽せっぱ詰った顔をしていたのだろう。隣の席の砂川さんが、心配した様子で、僕に話しかけてきた。


「芹沢君? どうしたの? 具合悪いの?」

「えっ?  何で? 大丈夫だよ! アハハ…。ハハハ…」

「立ち入った事だけど、聞いてもいいかな?」


  何だよ、僕の事は放っといてくれないかな…。


「あっゴメン、今はちょっと。本当に何でもないから…」

「そうか、そうだよね。私は保険委員だからさ、具合が悪いときは言ってね」

「うん、ありがとう。具合が悪いときはそうするね」


 僕がそう言うと、砂川さんは席を離れた。 よし行こう!


 僕は席を立ち、2階の笠原先輩のクラスへ向かった。緊張するな…。いるかな笠原先輩…。

 僕は階段を下り、K組の前に来た。


「よう! 太陽!」

 ビクッ! 突然話しかけられ、驚いてしまった!


「はっ? 拓郎? 何で?」

 彼は石川いしかわ拓郎たくろう。僕の小学校の時の同級生だ。


「そっか太陽は知らないか。僕さ、入学式の日に急性きゅうせい虫垂炎ちゅうすいえんになって倒れちゃってさ。ほら、窓から見えるだろ?  あの病院に運ばれたんだよ。それがなかったら、新入生代表で式辞をやったんだぜ。ちなみに僕はA組だから、2階なんだよ」

「拓郎って特進クラスかよ! すげーな! てか、惜しかったな! あとちょっとで、欠席にならなかったな! アハハ! 拓郎らしいや!」

「確かにな、それを言われると辛い。ところでなにしてんだ?」

「ああッと…。ちょっと、お世話になっている先輩に、お裾分っす」

「へー。その先輩は女子だな?」

「べ、別に…」

「マジで女子か? 探り入れただけだったのに!」

「げっ! 拓郎、やめてくれ!」

「アハハ! 頑張れよー!」

 拓郎はそう言って、階段を下りて行った。


 すると、またもや僕は話しかけられる。

「えっと、芹沢君だよね? 李依りえに用事?」

 ん? この人は確か爽やかカップルの彼女の方。確か、笠原先輩の友達の一葉さんだっけ?


「はい。芹沢です。あの…。笠原先輩はいらっしゃいますか?」

「李依は 委員会の集まりに行っているよ。何か伝えておこうか?」

「いえ、 大丈夫です。ありがとうございました」


 僕は恥ずかしさから、その場から逃げた。急いで階段を駆け上がり、教室に戻る。

 うひゃー、恥ずかしかった…。

 一葉さんって人、威圧感って言うかスゲーな!

 あの人の彼氏、よく平常心でいられるな。僕が席に着くと、今度は他のクラスの男子が話しかけてきた。


「おい芹沢。お前さっき、こなた姫と話していたよな。何を話していたんだよ!」

「はあ? 誰だそれ?」

 てか、こいつは誰だ?


「お前! 席が隣だからって調子にのってんじゃねぇぞ! こなた姫は俺たちのアイドルなんだからな! 覚えておけよ!」

「だから誰だよ! こなたなんて、知らねぇよ!」


「私だけど?」砂川さんが、キョトンとした面持ちで、立っている。

 話しかけてきた男子は 猛ダッシュで逃げてしまった…。


「は?  砂川さん?」

「はい! 砂川です!」

「あれ? 砂川さんって…。もしかして、佐之助さのすけの近所にいた砂川さん? てか、こな?」


 僕の質問に、砂川さんは ヤレヤレ…。のポーズをとる。


「やーっと、思い出したの?  佐之助もそうだけど、男子って何でそうなんだろうねぇ…」

「ゴメン。気が付かなかった。てか、こな? ロシアに行ったんじゃなかったの?」

「今年の2月には日本に戻ってきたよ。まったく…。もう、入学して1ヶ月近く経つのに、今ごろ気が付くとか無いよね…」


 早速、絡んできた…。しかたがないか。


「それよりさ! さっき、見たんだけど、一葉お姉様と何を話していたの? ねぇねぇ」

 ()()は突然、馴れ馴れしくなり、僕の胸元を掴んできた。


「べ、別に…」


 今度は 僕のネクタイを締め直している()()。やめてくれ、みんな見ているんだけど…。


「ふーん…。そう言えば、一葉お姉様の彼氏って、見たことあるでしょ? あれ、誰だかわかる? 桐弥君なんだよ」

 ネクタイを締め直すと、今度は 僕のジャケットのボタンつけだした。


「マジかぁ! あれって、桐弥君なの?  ヤッベー! バリバリイケメンじゃん!」

「うちの高校で一番の美男美女カップルだよねー」

「おお! 確かに!」


 ふと、気がつくと、周りから睨まれているのですが、何でだろ? もしかして、()()って人気があるのか?


「あの、こなって人気があるのかな?  僕、何だか睨まれているんだけど?」

「私が? ナイナイ! 逆だよ! サニーは女子から人気だよ」

「またまたー。それこそ無いでしょ?」


 すると、今度はクラスの女子から話しかけられる。今日はよく話しかけられるな…。

「ねぇ、芹沢君」


 えっと。この女子、名前…なんだっけ?


「何?」

「あの、芹沢君とすなって、前からの知り合い?」

「知り合いっていうか。小学生の頃に、()()のお兄さんとかに、遊んでもらったけど。あと、あの美男美女カップルの桐弥君にも遊んでもらったかな。 なぁ、こな。桐弥君って僕の事覚えているかな?」

「アハハ! 大丈夫だよ! お兄ちゃんも覚えていたよ。この前の大会の時に、桐弥君にも言ったら、マジかぁ! って言っていたって」

「へぇー。嬉しいな」


「あの、芹沢君?  私と話していたんだよ?」

「あっゴメン。なんだろう?」

「あのさ、私もHi-STANDARDが好きなんだけど。私はベースなんだけど、一緒に組んでもらえないかなと思って…」

「そうだったんだ…。ありがとう。でも、部員じゃないと、器材は使えないよ」

「ちょっ!? 私も軽音楽部だけど?」

「え? そうだったの? だって、いつも僕は4時半まで入れないから、誰が部員か知らなかったよ。ごめんね」

「ま、まあ。確かにそうだけど…」


「ねぇ、芹沢君」

 また違う女子が話しかけてきた。 この女子も名前が、わからねぇ…。


「なに?」

「何でサニーなの?」

「え? 何が?」

「え?  だって、砂が芹沢君の事を サニーって」


「え? こな? 呼んだ?」

「ゴメン…。覚えてない…」こなはうまく誤魔化してくれた。偉いぞ()()


「芹沢君」

 聞き覚えのある声? 教室の入り口を見ると、笠原先輩。


「あっ、 笠原先輩!」僕はそう言って、廊下に出た。

「さっき、来てくれたんだって? 何か用かな?」


「別に、放課後でも良かったのですが、今日は僕、部活が無い日なので、そんな日までお邪魔しちゃ悪いかな? なんて思いまして。これ、いつものお礼です。使って下さい。いつも頂いてばかりなので」

 そう言って、僕は笠原先輩に、ラッピングされたブレンディを渡した。


「気を使わせてすまないね。 気にしないで、いつでも来なさい。コーヒーくらいだすから」

「本当ですか? 今日も行っちゃってもいいですか?」

「別にかまわないけど…。その…。芹沢君は 女子に人気があるようだね。私はこのクラスの女子に睨にらまれているから、そろそろ帰るよ。これは頂いていくよ、ありがとう」

 そう言って、笠原先輩は この教室を後にした。


「笠原先輩、何を言っているんだろ」


「そろそろ気付きなさいって」

 僕の後ろで、()()が言った。


 

 は? 何を?





 * *





 放課後…。


 僕は化学部の部室に向かう。


 トントン…。


 いつもの事ながら、ノックをしてから入る。一応、10秒後だ。それは笠原先輩からの申し付けで、返事がない場合は ゆっくりと、十を数えてから入りたまえ。と言われている。


 今日も返事がない。


 よし10秒!


「失礼しまーす」

 部室に入ると、ヘッドフォンを付けた笠原先輩。小説を読んでいる。

 笠原先輩って、何だか文学少女って感じで、絵になるな。

 でも読んでいるのは おそらくBL本だ。先日、てさげカバンから、はみ出ていたのを 見てしまった。


「やあ、いらっしゃい」

 笠原先輩は いつもそう言ってくれる。この一言に、僕は癒される。


「芹沢君。コーヒーを飲むかい?」

「ありがとうございます! いただきます!」


 笠原先輩はいつもそう。気だるそうに、動く。少しの風で、飛んでしまいそうな、華奢きゃしやな身体が、一層、気だるさを出している。

 あーもー! 笠原先輩をいつも守ってあげたい! そう思ってしまう僕は 少し変態なのかな…。


「はい。どうぞ」

  コトン。と可愛い音をたてて、ビーカーに注がれたコーヒーは置かれた。


「そうそう。お昼休みに、芹沢君から頂いた品。おそらく、何かの間違いで、私のもとへ来たようだ。なので、芹沢君に返却しようと思う…」

 突然、意味不明な事を言う笠原先輩。


「えっと? 間違いですか?」


 すると、笠原先輩は「クックックッ…」と、含み笑いをし。僕が渡した袋から、中身を取り出した。

 その間違われた中身とは、下着のセットだった。


「ひゃーーー! 何でぇーーー!」


「ぷぷぷ!  ひゃーって…君は面白いね…。ぷぷ…えっと、妹のかな? シマムラの値札が付いてあるよ? 残念ながら、この下着は私には大きすぎるようだ」


「そう言えば、朝からLINE通知が来ていたな…。もしかして、律ちゃん? 日向?」


 僕は、おそるおそる、携帯電話を見る。 すると、律ちゃんと、日向から何度も通知が来ていた。


「どうしたのかな? 家族からの連絡かな? ふふふ…」


 相変わらず、楽しそうな笠原先輩。

「その連絡事項、私にも見せてもらっても、いいかな?  私は君にセクハラを…ぷぷ…されたからね…ぷぷぷ…私には…見る権利があるよね…ぷぷぷ…」

「はい…。まさに姉と妹からです。 中身は妹の物のようです。昨夜、僕が中身を確認せずにラッピングをしました。同じような紙袋だったので…」


 そして、笠原先輩は 僕の話など、気にもしていない様子で、妹からのLINEを見て笑っている。


「日向さんは 妹ちゃんかな? 面白い妹ちゃんだね。 最後がオワタ チーン…。って。アハハ!」


 楽しそうですね…笠原先輩…。僕が意気消沈していると、笠原先輩は言う。


「さぁ今日はもう帰らないかい?  一緒に帰ろう。というか私と一緒でもいいかな?」


 笠原先輩からの一言に対し、僕は嬉しさのあまり、立ち上がった!


「本当ですか! 僕と一緒に帰ってくれるんですか? やったー!」

「ど、どうしたんだい? いきなり?」

「そんなの当たり前じゃ無いですか!  大好きな先輩と一緒に帰れるなんて! こんなに嬉しいことは無いですよ!」

「なっ?」

 笠原先輩が、驚いている?


「な?  あー! すすすすみません! その! 大好きって! 違くて! 違くないけど!  いつも一人だから! その! 二人が…」

「ふぅ…大丈夫だよ。芹沢君、ラッピングもやり直したから、開けてないことにしなさい。 さぁ。帰ろうか?」

「はい! ありがとうございます!」



 まったく…。

 君はいつも私をドキドキさせるね…。

 本当に、悪い子だ…。


 そんな事より日向ちゃん、Bか…。




 

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